箱根駅伝、有力校のトラックシーズン総括(中編)

【大学駅伝】「スピード軍団」中大が2年生コンビで加速、復調気...の画像はこちら >>

 春の関東インカレ、各記録会を経て、迎えた7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ(ホクレン/千歳、網走、北見、深川、士別)と関東学生網走夏季記録挑戦競技会(網走記録会)。箱根駅伝の優勝を争う各チームの選手たちはどんな走りを見せたのか。

以前に取り上げた青山学院大に続き、今回はそのほかの有力6大学を前編・中編・後編の全3回に分けてピックアップ。この中編では中央大と駒澤大の走りを振り返る。

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【期待の2年生が13分30秒切り】

 このトラックシーズン、中央大は非常に順調だった。

 7月4日のホクレン千歳大会では、5000mC組で簡子傑(1年)が組4位、13分42秒38で、自身の持っていた台湾記録を更新。同じ1年生の創価大・村上遵世(同組1位、13分39秒46)に負けて悔しそうな表情を見せていたが、2週間後のホクレン士別大会では5000ⅿA組で13分39秒61と、2レース連続で自己ベスト(PB)を更新した。

 7月8日のホクレン網走大会では、濵口大和(2年)が5000mA組に出場。ラスト100mから一気に加速し、組2位、13分26秒23のPBをマークした。

「昨季と今季の序盤は苦しくて、みんなが結果を出して、同じ2年生にも置いていかれて悔しい思いばかりしていました。駅伝メンバーに入れるかどうか怪しいラインにいるなか、このホクレンでメンバー争いにつなげていくことができたので、本当によかったと思います」

 ルーキーだった昨季は出雲駅伝で2区区間11位、箱根駅伝は10区を走る予定だったが、直前にエントリーメンバー変更となり、悔しさを噛み締めた。その後、アメリカで佐藤圭汰(ナイキ・スウッシュTC)が所属するチームの合宿に参加するなどして迎えた今季は、駅伝に並々ならぬ意欲を見せる。青山学院大など箱根駅伝出場校も複数参加した6月の男鹿駅伝では、1区区間賞を獲得し、チームの優勝に貢献した。そのよい流れをホクレンでも継続した。

「今回、"走れた"といっても、早稲田大の鈴木琉胤(2年)のほうが全然強いですし、チームでも絶対的な位置にいるわけではない。

まずは箱根の10人のメンバーに入ることを目標にして、それができたら9区、10区を走れたらと思っています」

【10000mでも27分台】

 その濵口と同じ2年生で、周囲をアッと言わせる走りを見せたのは三宅悠斗(2年)だ。ホクレン網走大会の10000mA組に出場し、ペースメーカーが8000mで抜けた後、前を行く國學院大の主将、野中恒亨(4年)に食らいつき、野中に続く組3位、27分44秒45のPBをマークした。

「ペーサーが離れた後、野中さんは上げられる余裕があったのですが、僕はついていけなかった。さすがといいますか、学生トップは違うなと力の差を痛感させられました」

 三宅は1年時、全日本大学駅伝で5区を走って区間3位と結果を出したが、箱根駅伝には出場できなかった。そんな三宅の意識を変えたのが、やはり、春に参加したアメリカ合宿だ。世界のトップレベルの選手と一緒に練習し、そのスピードや練習姿勢などを目の当たりにして「このままではダメだ」と意識が上がった。

 その後、ケガなく練習を積めたことで能力が開花した。5月のゴールデンゲームズinのべおかの5000mで13分28秒66のPBをマークし、関東インカレ1部10000mで5位入賞。6月の日本選手権では5000mに出場して13分41秒98で予選落ちしたが、それから1カ月で調整し、結果を出した。

「昨年は全日本しか出られなかったので、今年は3大駅伝に全部出て、すべて区間賞を獲り、すべての駅伝で優勝を決定づけられる走りをしたいです。監督からは『今年は早大を意識していかないといけない』と言われているので、早大に対して、自分たちも力があるぞ、強いぞというところを見せていかないといけません。今回は、それを少しは見せられたかなと思います。濵口とふたりでチームを引っ張って、駅伝で勝ちたいです」

 ホクレンでは、この2年生ふたり以外にも収穫があった。

 故障で4カ月ほど離れていた本間颯(4年)が千歳大会5000mA組に出場して13分59秒47とタイムは伸びなかったが、箱根駅伝3区で2年連続区間賞の実力者だけに、夏を前に実戦復帰を果たせたのは大きい。また、網走大会の10000mA組には並川颯太(3年) が出場し、途中から単独走になるなか28分36秒34の好タイムをマークした。

 網走記録会でも、柴田大地(4年)が5000mに出場し、蒸し暑い、厳しいコンディションのなか、粘りの走りで1位(14分00秒46)となった。最後の箱根に向けては「5区ではなく、ほかの平地区間で走りたい」と意欲を見せた。

 以前からトラックのスピードに自信を持つ中大は、5000mで13分30秒を切る選手が6人もいる。箱根はトラックの持ちタイムだけでは測れない難しい駅伝だが、3大駅伝初戦の出雲はスピード勝負。そこで勝てば、一気に流れに乗るかもしれない。

【主力が一気に卒業した穴をどう埋めるか】

 中大や早大がトラックシーズンを引っ張るなか、沈黙を続けていたのが駒澤大だった。

 関東インカレでは、2部のハーフマラソンで新谷倖生(4年)が7位に入賞したが、トラックでは入賞者が3000m障害4位の岸本莞爾(1年)と7位の牟田颯太(2年)の2名のみに終わっていた。

 今回、ホクレン網走大会では、エースの桑田駿介(3年)が10000m27分台を目指してA組に出場したが、後半に失速して組8位、28分16秒24という結果に終わった。大学生では、國學院大の野中、髙石樹(2年)、中大の三宅に先着を許し、大八木弘明総監督も渋い表情だった。ロードでは無類の強さを発揮する選手だけに、駅伝シーズンの巻き返しに期待したいところだ。

 そんななか、ようやく選手の明るい声が聞けたのが7月12日の網走記録会だ。10000mの4組で安原海晴(4年)が28分42秒95、菅谷希弥(3年)が28分44秒65で、ともにPBをマークしてワンツーフィニッシュ、新谷も8位で29分09秒66にまとめた。最終5組は井本正凪(2年)が28分53秒09、谷中晴(3年)はぎっくり腰のアクシデントがあるなか、28分54秒57でまずまずの走りを見せた。

 ちなみに、6月のあおもりディスタンスチャレンジ2026の10000mで、新谷は29分04秒64、井本は28分40秒41、谷中は28分34秒14といずれもPBをマークしている。故障で戦列を離れていた主将の村上響(4年)も含めて、徐々にメンバーが揃いつつある。

 小柄な体格ながら、ピッチ走法で小気味よい走りを見せる2年の井本はこう話す。

「昨年はケガで夏前は走っていなかったので、今年が駒大の練習をちゃんとできるようになって1年目という感じです。駒大は昨年までの強いイメージが世間にあると思うのですが、そこにレベルを戻さないといけないので、自分がエースになるぐらいの気持ちで頑張っていきたいです。箱根は走れるならどの区間でもいいですけど、上りの適性があると言われているので、5区を狙いたいと思っています」

 藤田敦史監督も「楽しみな選手」と期待をかける。一方で、主力には少し厳しい視線が向けられている。

「中大や早大がトラックでかなりレベルの高い記録を出していますし、ホクレンでも國學院大のふたり(野中、髙石)が10000mで27分台を出しています。日本選手権も他大学から多くの選手が出ていましたが、うちはひとりもいなかった。

田澤(廉)、(鈴木)芽吹(ともにトヨタ自動車)、篠原(倖太朗/富士通)、(佐藤)圭汰といった(強力な)エースがいなくなったから仕方ないよね、という考えで駅伝を戦いたくないので、桑田と谷中には突き抜けた存在になってほしいです。ふたりを他大学のエースにぶつけて、あとはその脇を固める選手を何枚増やせるか。それができなければ、駅伝では戦えないです」

 全日本大学駅伝を制した昨季のチームからは、山川拓馬、佐藤、伊藤蒼唯(富士通)、帰山侑大(ヤクルト)が抜けた。頼れるエースたちが全員卒業してしまい、藤田監督がチームづくりに苦労しているのが見て取れる。

「チームづくりにおいて、圭汰たちが抜け、計算できる選手がいないというのは厳しいです。でも、嘆いていても仕方がありません。出雲はスピードがある1年生を軸にし、その間、上級生を走りこませて全日本に臨むつもりです。箱根は、夏から準備して、最低限シード権を守れるぐらいの地力をつけていかないといけない。だいぶ苦労すると思いますが、ようやく4年生が『やろうぜ』という意識になっていますし、下級生もそれに引っ張られてついてきている。この夏は仕切り直しです」

 仕切り直しの夏を越え、駅伝シーズンにどんな姿を見せるのかに注目したい。

前編を読む>>>箱根優勝を狙う早大がホクレンでも充実、創価大は期待の13分台ルーキーたちが躍動

佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

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