河村勇輝がサマーリーグで示したリーダーシップと悔し涙 2年ぶ...の画像はこちら >>

河村勇輝のNBA挑戦3シーズン目は、今年もサマーリーグから始まった。自身を知るヘッドコーチの突然の移籍、契約時にはいなかった同じタイプのライバルの存在。

決して自らが思い描いた結果にはならなかったが、それでも与えられた時間で自身の存在感を発揮したことは、チームメイトたちの証言が物語っている。

NBA、Gリーグなど、今後、どのような展開となるのかわからないが、コート上のリーダーとして着実な成長を遂げていることは間違いない。この夏、日本代表には2年ぶりに復帰することを表明。まずはワールドカップアジア予選Window4でのプレーに注目が集まる。

【ヘッドコーチ交代で芽生えたリーダーとしての強い意識】

 インディアナ・ペイサーズの一員として参加した今年のNBAサマーリーグにおいて、河村勇輝が発揮しようとしていたことの一つに「リーダーシップ」があった。

「このチームは(初戦の)2日前にヘッドコーチが代わったこともあり、自分がリーダーにならなければいけないと思いました。コート上でチームメイトに話しかけることを心掛けました」

 サマーリーグ初戦のクリーブランド・キャバリアーズ戦後の取材対応、最初の質問に対して、河村はこう答えた。

 ペイサーズは当初、アシスタントコーチのジョニー・カーペンターをサマーリーグのヘッドコーチ(HC)に据え、若手選手たちを指揮させる予定だった。だが、元メンフィス・グリズリーズのテイラー・ジェンキンスHCがミルウォーキー・バックスのHCに就任したことで、グリズリーズ時代にジェンキンスの下、選手育成とスカウトを担っていたカーペンターがコーチングスタッフに加わることに。そのため、来季からペイサーズのGリーグチームを率いるブライス・テイラーにHCが交代となった。

 グリズリーズ時代から河村をよく知る存在だったカーペンターが去ったことは、起用法の面で影響があったかもしれない。だが、それよりも河村は突然のアジャストを求められたチームにおいて、司令塔として、そして高校時代からプロの舞台で学び、ワールドカップやオリンピック、さらにGリーグやNBAも経験しているリーダーとしてチームをまとめていくことが、サマーリーグでの自分の仕事だと悟った。

「しっかりリードするということが(このサマーリーグの)主な目標です。

そして、勝つこと。チームの勝利に貢献したい」ときっぱり言った。

【悔し涙で振り返った自身の出来】

 河村が今年のサマーリーグでプレーするため、ペイサーズとサインしたのはNBAドラフト(6月23・24日)より「もっと前」のことだった。だが、ペイサーズがドラフト2巡目全体38位でシカゴ・ブルズに指名された地元インディアナ州のパデュー大出身、ブレイデン・スミスをトレードで獲得したことで状況が変わった。

「特にサマーリーグは、ドラフトされた選手がミニッツ(プレー時間)をもらうのは周知のこと。彼のプレースタイルを確認した時、かなりピュアなポイントガードですごく僕に近いスタイルだった。ただ(自分には)コントロールはできないので、なかなか難しいサマーリーグになるのかなと思いました」と河村。「ペイサーズともしっかり話はした」うえで、「僕がもらえるミニッツのなかで最大限貢献しよう」と気持ちを切り替えて挑んだサマーリーグだった。

 初戦は第3Qにリードを広げたチームに貢献し、再び接戦となった第4Q中盤以降にコートに立って、勝利で試合を締めた。

 2戦目のフィラデルフィア・セブンティシクサーズ戦は、さらに存在感を発揮した。第3Q中盤、自らがコートに立った直後にこの試合最大となる24点差をつけられたが、マッチアップする相手から立て続けにターンオーバーを誘発した。そして自らの3ポイントで10点差に追い上げたのだ。勢いづいたペイサーズは試合をオーバータイムに持ち込む健闘ぶりを見せた。

ただ、同点に追いついた第4Q終盤もオーバータイムも河村の出番はなく、ペイサーズは敗れた。最後のニューオーリンズ・ペリカンズ戦では、フィールドゴールこそ8本中2本成功(3Pシュートは3本中成功ゼロ)など5得点だったが、12アシスト、5リバウンドでチームの勝利に貢献した。

 5試合を戦い終えた河村は、1試合平均17.5分の出場で8.2得点、4.8アシスト。ただ、3Pシュートは13本放って1本しか決まらなかった。

「NBAでやっていけるレベルのパーセンテージではないのは間違いない。このサマーリーグに向けて、もちろんしっかり準備はしてきたし、自分のなかではやりきってここまで来たと思いますけど、それでも何かが足りなかったということ」

「やってきたことが何も出せなかった。自分の実力のなさをすごく痛感します」と、目に涙を浮かべた。

 そして、こう続けた。

「去年(サマーリーグでプレーし、のちにツーウェイ契約を勝ち取った)シカゴ・ブルズでは、僕とスタイルが似ているポイントガードがいなかった。ピュアなポイントガードの役割は僕が担っていて、ゲームを作ったり、ボールを持ってうまくリズムを作れる時間帯が多かった。今回はドラフトされた彼(スミス)とすごくスタイルが近いというのもあり、一緒に出ることも多くないので、短い時間でリズムを作ることができなかった」

 苦しんだサマーリーグだった。

 だが、このサマーリーグで最初に発した「リーダー」の任務はやり遂げた。

ベンチにいる時もコートにいる時もチームメイトに声をかけ続けた。そして司令塔としてチームをまとめた。ポジションを争うライバルでありながら、スミスの成功を望み、励まし、声援を送った。

【残した爪痕の先に】

 このサマーリーグで1試合平均20.8得点を記録したジェイレン・スローソンは、「常に全力で、泥臭いプレーも厭わず、周囲を巻き込んでプレーするのが好きな選手。勇輝のプレーを見ていると、やる気が湧いてくる」と話した。一方、2023-24シーズンにネブラスカ大で富永啓生とチームメイトだったリエンク・マストは、河村の気を抜かない守備と思いもよらないパフォーマンスを見せる攻撃に刺激を受けたひとりだ。「彼は本当にすばらしい。相手をコートの端から端まで追いかけてボールにプレッシャーをかける守備も好きだし、オフェンスで見せるプレーは、時に魔法のような凄みがある」と言い、「彼と一緒にプレーすることは楽しい」と笑顔を見せた。

 そしてスミスは、セブンティシクサーズ戦後にメディア対応した際、相手から連続でターンオーバーを誘発した河村のディフェンスを挙げ、その存在を称え、感謝した。

「ああいうプレーこそがチームの起爆剤となる。彼はコートに入れば、そうした仕事ができる選手だ。さらにすばらしいのは、彼が本当にいいチームメイトだということ。

出場時間はそれほど長くなかったかもしれないけれど、常にチームを支え続けていた。(同セブンティシクサーズ戦での)オーバータイムの間もずっと僕に声をかけてくれていた。プロ意識が高いだけでなく、チーム全体を心から大切に思っている、そんな選手がいてくれることは本当に大きい」

 ペイサーズは、現時点(8月3日時点)でツーウェイ契約の枠が埋まっており、スミスもまだ契約していない状態だ。フリーエージェント(FA)の河村も、自身の行き先についてまだ何の発表もしていない。

 ただ、一方で、「FIBAバスケットボールワールドカップ2027アジア地区予選Window4」のメンバー候補には名を連ね、2024年パリ五輪以来となる日本代表としてプレーすることが濃厚となった。

 今後の契約については不透明だが、まずは代表戦でサマーリーグで見せたリーダーシップ、そして思うような結果を残せなかった悔しさを晴らすプレーを見せてくれるのではないか。

 いずれにせよ、河村がサマーリーグでしっかり爪痕を残したことは確かである。

 スローソンは、言っていた。

「勇輝がどこに行くことになろうとも、連絡を取り合うつもりだ」と。

 サマーリーグ5試合のために、ともに練習を積み、戦ってきたチームメイトから得た人望もまた、河村の強みなのだ。

山脇明子●取材・文 text by Akiko Yamawaki

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