10月17日、有明コロシアム。男子SVリーグは、東京グレートベアーズ対北海道イエロースターズというカードで幕を開けた。

始球式には人気俳優の小芝風花さんが招かれ、試合そのものは東京グレートベアーズが北海道イエロースターズを逆転で下す展開で、会場は大盛況だった――。

 そして10月24日、SVリーグ王者である大阪ブルテオンも札幌で新たなシーズンの開幕を迎える。

 ブルテオンにとっては当然、連覇を視野に入れた戦いになる。アジア選手権でロサンゼルス五輪出場権獲得に貢献した選手が主力で、注目を浴びることは間違いない。「世界一のリベロ」と言われる山本智大、10年以上代表で戦ってきたミドルブロッカーの山内晶大、アジア選手権で進境著しかったミドルのエバデダン ラリーなど、多士済々だ。

 とりわけオポジットの西田有志(26歳)は、代表でもクラブでも看板スターと言える。際立った敏捷性と跳躍力を持つピューマを思わせるようなジャンプで、自身が強弓に化したかのように放つ左腕のスパイクは超人的。コート上で感情を爆発させる姿が会場と"接続"すると、熱狂を巻き起こす。

【男子バレー】西田有志「目標は1個だけじゃない」 SVリーグ...の画像はこちら >>
「バレーしかしていないですね」

 西田は明かすが、日々バレーと100%で向き合っているからこそ、"ここぞ"という舞台で力を発揮できる。

 昨シーズンも、開幕前からチャンピオンシップに照準を合わせていることを明言し、サントリーサンバーズ大阪とのファイナルでは、そのとおり爆発的な活躍を見せた。第2戦、第3戦ではそのサーブが一気に走り出し、6本のサービスエースも含め、暴風のようだった。得意のバックアタックも2試合で12得点を決め、堂々チャンピオンシップMVPを受賞した。

「1年前からピーキングを持ってきて、結果として勝つことができました」

 西田は淡々と言い放ったが、彼にとっては必然なのだろう。そのための準備を少しも怠らなかった。舞台に立った時点で、勝率だけは最大限に高まっているのだ。

 ロス五輪出場を懸けたアジア選手権も、西田は"必勝の法則"で挑んでいた。予選ラウンドのオマーン戦の第4セットに着地でひざを痛めたアクシデントはあったが、少しも揺らいでいなかった。決勝にピーキングを持ってきた。

【五輪出場権獲得も「必然」】

 決勝の前日、準決勝の韓国戦後、西田はひとつの"予告"をしたが、それは勝ち筋が見えていたからだ。

「明日は人を狙って打ちますよ!」

 彼は言ったが、そのとおりに決勝のイラン戦ではレシーバーを打ち崩すスパイクを連発し、最多得点を記録した。決勝はセットカウント3-0で勝利し、ロス五輪出場権を勝ち取った。有言実行の男の面目躍如だった。

「昨日、言ったとおりでしょ? 人を狙っていたんで、それどおりに決まってよかったです」

 西田は相好を崩した。レシーバーを狙い撃ちし、爆撃機が艦隊を沈めるような迫力があった。

「こうなるだろうな、と展開は想定できていました。VNL(ネーションズリーグ)でイランとはフルセットまで戦っていますが、日本開催というシチュエーションで、自分たちは"勝つチームができていた"と思います。自分自身、ピークを合わせ、そのために半年間やり続けていました。コンディション的に難しい展開もあったんですが、この1試合、最大集中ができたんで、なるべくしてなった感じですかね」

 日常があってこそのピーキングだった。感覚も鋭敏になっていた。たとえば、髙橋藍のフェイクセットに対する反応も抜群で、韓国戦、イラン戦と連発した。

「すべては"バレーを好きでうまくなりたい"って土台の上にあって。それがどれだけ強いかで、自分がうまくなるスピードも変わってくる。そう思って、日々を過ごしています」

 西田は言うが、あくまで日常が決戦で運を呼び込むのだろう。イラン戦では第3セットの23-22という勝負どころで、彼のサーブはネットにかかった。0コンマ何秒の間、ネットの上にいたボールはゆっくりと相手コートへ落ちた。

――どちらに落ちてもおかしくないボールがネットインしたシーンは、まさに日常が実った象徴的シーンだったのでは?

 西田は少し照れ臭そうに言った。

「人には『ついていたね』って言われるかもしれないですけど、自分は『なるべくしてなった結果だ』と思っているんです。常にどんなシチュエーションになるかをつなぎながら、もちろんミスもありましたけど、必然として結果がついてきたというか。ネットインは結果論で語られるかもしれないけど、"ついている努力"をしていると思うんで」

 プロの勝負の世界は、"切った張った"の要素があって、命を懸けたような攻防では運が左右する。それを呼び込むことができるか。その確率は、日常の積み重ねで決まるのだ。

 アジア選手権では、試合を重ねるにつれ、セッターの深津英臣(ウルフドッグス名古屋)とのコンビは尻上がりによくなっていった。西田は相手ブロック1枚、1.5枚で打てる機会も増えたが、それも日々、感覚を研ぎ澄ませた帰結だった。

「(深津との)ふたりのフィーリングを合致させるため、寄せてやっていくんですけど、一気にどんって寄る感じではなくて。なんの試合だったか忘れましたけど、"これやな"と合致し始めた瞬間はありました。たしかVNLの予選ラウンド、序盤の試合で。そこからは右肩上がりに、アジア選手権の決勝までよくなってきましたね」

 そう語る西田は、ひとつの仕事をやり遂げた男の顔をしていた。「昔気質の一流の男が好き」という彼だが、まさにその肖像に近づいたと言える。

男が惚れる男というのか。

「来年は自分の時間を使いたいと思います。そのために最短で(ロス五輪出場を)決めたので。じゃないと、僕は(代表に)戻ってきてない。自分に与えられたタスクをひとつクリアできたと思います。新たに目標を設定し、どういう形で向かっていくのか。SVリーグでのシーズン目標もありますが、自分の目標は1個だけじゃなく4、5、6個と多数あるので、それをクリアするため、また一日一日を大事にしたいですね」

 西田は"バレーを生きる"。その日々が、次の歓喜につながるはずだ。

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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