F1第18戦アメリカGPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

 オースティン(第18戦アメリカGP)の予選ではフェルナンド・アロンソが15位で、チームとしては8番手相当、そして決勝では中団最上位のチームとして5番手を争うだけの速さがあった。

 アストンマーティン・ホンダがサーキット・オブ・ジ・アメリカズでこれだけの競争力を発揮できた背景には、いくつかの理由がある。

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 まずひとつは、低速コーナーの多さがAMR26に合っていたという点だ。チーフトラックサイドオフィサーのマイク・クラックはこう説明する。

「我々のマシンは、特に低速域で優れた性能を発揮している。(2週間前の)シンガポールはそうではなかったが、今回は低速コーナーでいい走りを見せることができた」

 高速コーナーではやや苦戦を強いられるAMR26だが、低速域ではマシンが適正なウインドウ(作動領域)に入る。これはマレーシア・セパンで代替開催されたバーレーンGPで好走を見せたのと同じような理由だ。

 そしてタイヤに厳しい路面が、タイヤに優しいAMR26のマシン特性にフィットしたというのも、セパンと同じだった。

「タイヤのデグラデーション(性能低下)も少なかった。タイヤのデグラデーションが小さければ、その分だけソフトなタイヤを使うことができるようになる。タイヤに厳しくないという強みがあるから、決勝でさらに競争力を発揮できた」(クラック)

 また、低速区間が多くパワーユニットの不利が出にくかったことも、アストンマーティン・ホンダにとって追い風になった。

 低速コーナーからの脱出時にドライバーのスロットルペダル操作に見合ったトルクが出ないという、シンガポールGPで課題となったターボラグ問題。それも、ICE(内燃機関エンジン)とMGU-K(運動エネルギー回生システム)の協調制御の見直しによって改善した。

 コーナーではエンジン回転が下がり、ターボチャージャー(TC)の回転も下がるため、過給圧の低下は避けられない。

それに対して、ICEを多く回してTCを回し、MGU-Kでブレーキをかけることでトルクを合わせ込む。ドライバーがナチュラルに感じられるように、どのメーカーも苦労しながら調整を重ねている部分だ。

【中団上位と互角に戦える事実】

 ホンダの折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネジャー兼チーフエンジニアは、次のように説明する。

「MGU-Kの制動を安定させてICEを高い負荷で運転させることが、ターボラグを防ぐために重要となってきます。そのために制御系ソフトウェアをアップデートしました。フリー走行でチューニング作業を進め、決勝ではすべて意図したとおりに機能したことも確認できました」

 エネルギーマネジメントやICEの燃焼セッティングなどもさらなる熟成を進め、現状のハードウェアから引き出せるだけの性能は絞り出したという。

「FP1の時点で『今週末は競争力がありそうだ』という見解になり、チームとも会話して『上を目指そう、結果を残そう』という姿勢になっていました。残念ながら接触の影響で本来のペースでは走れなかったので、『あれがなければ......』と悔やまれます」

 シンガポールGPでは、うまくいかないフラストレーションをすべてホンダにぶつけるような発言に終始したアロンソも、この週末はマシンパッケージの最適化に向き合う冷静な姿勢を見せた。チームはいい流れのまま決勝を迎えることができた。

 結果は残念なものになってしまったが、マシン特性に合ったサーキットできちんとパフォーマンスを引き出しきれば、中団上位を争うことができるという事実は確認できた。それはアストンマーティン・ホンダにとって、バーレーンGP(アロンソ8位)に次ぐ大きな収穫だ。競争力という点でも、アロンソの言うとおり今シーズンベストのレース週末だった。

 シンガポールの激震から再び結束を強めて迎えたオースティン。結果こそついてこなかったものの、今シーズンの残り数戦だけでなく2027年の飛躍に向けた大きなターニングポイントになるかもしれない。

「AMR26は低速コーナーが強いマシンで、(次戦の)メキシコシティにはそういうコーナーがいくつもある。その強みを最大限に生かして、コーナーでもストレートでも速さにつなげたい。もちろん、いつもより競争力が発揮できるレースもあれば、そうではないレースもあるだろう。だが、メキシコシティはいつも波乱が起きがちなので、前向きな気持ちで臨んでいくつもりだ」(クラック)

 レース後のアストンマーティン・ホンダに残ったのは、決して落胆だけではない。前向きなエネルギーもあった。それを未来にどう生かしていくかは、彼ら次第だ。

米家峰起●取材・文 text by Mineoki Yoneya

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