この記事をまとめると
■1997年からのFIA GT選手権に参戦のために生産されたのがメルセデス・ベンツCLK-GTRだ



■ホモロゲーション取得のために25台の公道仕様が生産され、その価格は300万マルク超だった



■クーペ20台に続き、最後の5台はロードスターとして市販された



GT選手権の勝利のために生産されたGT1ロードカー

メルセデス・ベンツCLK-GTRは、FIAの主催によるGT選手権シリーズに参戦することを目的に、メルセデス・ベンツと当時のAMGが共同で開発したGT1カテゴリーのマシンだ。このシリーズは、1996年まで行われていたITC(国際ツーリングカー選手権)の後継として1997年からスタートしたもので、GT1マシンとしてのホモロゲーションを得るには最低25台の生産が必要とされた。



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カーボンモノコックのシャシーに、6リッター仕様のV型12気筒エンジンを組み合わせたCLK-GTRは、シリーズ中盤からその実力を発揮し始め、最終的にはこの年に6勝をあげてメイクス、ドライバーの両タイトルを獲得。



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そして、翌1998年シリーズの途中まではこのCLK-GTRで、それ以降はエボリューションモデルともいえるCLK-LMを投入。ちなみにこのCLK-LMでも公認用のロードモデルは製作されているが、実際の販売は行われていない。



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また、それに続いて1999年に登場したCLRは、ロードカーの製作を必要としないLMGTP、すなわちル・マン・プロトタイプと呼ばれる純粋なレース専用車である。



クーペ20台とロードスター5台が市販された

CLK-GTRに話を戻そう。メルセデス・ベンツは実際にロードバージョンのCLK-GTRを25台販売しているが、それには厳しい審査があったとされる。その詳細はもちろん明らかにはされていないが、300万マルク(当時のレートで約2億5000万円)を超えたとされるキャッシュを用意できたとしても、そのすべての人物にCLK-GTRを購入できる権利が与えられたわけではなかったという。転売に関しても同様にメルセデス・ベンツとカスタマーとの間の契約は厳しかった。



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そして、実際に購入が認められたカスタマーは、プロのレーシングドライバーによるドライビングレッスン、実際にCLK-GTRがクラッチペダルとパドルによるシフトチェンジを行わなければならなかったことなどを考えると、コックピット・ドリルの体験版ともいえるプログラムを受けることが義務付けられた。それはまた、このモンスターマシンの驚異的なパフォーマンスを安全な場所で経験しておくためのものでもあったのだろう。



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外観やエンジンのパフォーマンス(ミッドに搭載された6リッターユニットは600馬力を発揮したとされる)とは対照的に、CLK-GTRのキャビンは、いかにもメルセデス・ベンツのそれらしく、機能的に、そして快適なスペースとして完成されていた。



左右のドアは上方に向って開くバタフライドアで、サイドシルは構造上の問題からかなりの幅があるものの、乗降性はロードカーとしても何とか許容できるレベル。シートはフルバケットタイプでデリバリー前にカスタマーとシート合わせの作業が行われたため、そのホールド性はもちろんのこと、前後のアジャストなどはできない仕組みになっている。

エアバッグは運転席、助手席ともに標準装備となり、さらにABSやトラクションコントロールなどのデバイスも装備された。エアコンやオーディオなどの装備も当然のことながらきちんと備わっている。



そして、CLK-GTRの生産が20台を数えたとき、メルセデス・ベンツとAMG、そして実際に製作を担当していたHWA(ハンス・ベルナ―・アウフレヒト)は、残りの5台をオープン仕様のロードスターとして販売することを決定する。



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専用のリヤウイングやエアインテークの機能を備えたヘッドレスト、フロントのバンパースポイラーなど、独自のディテールを持つロードスターは、外観のみならず搭載エンジンに7リッターのV型12気筒を選択。さらにカスタマーのリクエストによっては、7.3リッター仕様のエンジンを搭載することも可能だった。



まさに時代が生み出したモンスターマシンともいえるメルセデス・ベンツCLK-GTR。その存在は永遠にスーパースポーツ・ファンの心に刻まれ続けるに違いない。

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