この記事をまとめると
■EUがICE(内燃エンジン)車の全面販売禁止を撤回■2035年以降もICE車の販売を認めるという
■きっかけや今後の動きについて解説
ICE車の継続販売を声高に叫んだのはドイツ
2023年3月末にEU(欧州連合)が2035年以降にICE(内燃エンジン)車の全面販売禁止を撤回し、2035年以降もICE車の販売を認めるという報道が駆け巡った。ただし、合成燃料(バイオ燃料)の利用に限るとしているとのこと。
この報道を聞いて、「やっぱり」とか、「ほら見たことか」と思ったひとも多いことだろう。
報道によるとICE車の継続販売を声高に叫んだのがドイツだったというのも興味深い。欧州よりも政治的思惑でZEV普及に積極的な中国並みに、ドイツはおもにメルセデスベンツなどプレミアムブランドとなるものの、熱心に各ブランドがBEVをラインアップしている。そのドイツがまずICE車の継続販売を言い出したというのである。その背景にあるのはドイツ国内の雇用問題が大きかったとのこと。ICEからZEVへの全面切り換えを進めるなか、自動車関連業務に従事するひとの失業が顕著となってきたのである。ドイツ政府は産業構造転換による転職をスムースに進めるために、職業訓練校などでのリスキリング(学びなおし)を積極的に行ってきたようだが、それも間に合わなかったようだ。また、BEV関連部品の多くを中国からの輸入に頼らなければならないというのも影響したようである。
今後もEVに積極的にならざるを得ないだろう
それでもドイツの報道を見ていると、石油暖房の全面禁止など筆者はとても住みたいとは思えないほど、脱炭素社会の実現にまい進しており、その進め方はかなりヒステリックなもののようにも見える。急激な変化がさまざまなひずみを見せる一例が今回のICE車の継続販売なのかもしれない。
雇用対策にまで配慮しながらZEV普及を進めたドイツでも壁にぶちあたってしまっている。

日本もカーボンニュートラル社会の実現を国際公約しており、今後ZEVの普及というものが進んでいくだろう。ただし、おそらく購入補助金の充実程度で「あとは民間でよろしく」となるのがオチのように見える。少なくともドイツのような雇用対策などは期待しないほうがいいだろう。EUの思惑が潰れたからと言って、BEVがこの世からなくなることはない。世界的には富裕層についてはトレンドとしてBEVは注目されているし、新興国は大気汚染対策や原油輸入量の削減などを主眼にBEVに注目しているので、日本車はBEVを積極的にラインアップしなくていいということにはならない。新興国では中国の存在感が高く、中国メーカーがBEVの販売を積極化している。しかも、中国メーカーのBEVはその価格帯が日本車の同クラスHEV(ハイブリッド車)並みと言う地域もあり、現状で圧倒的な販売シェアを誇る東南アジア各国ですら、日本車の脅威になりつつあるようにも見える。

すでに一定の需要ができてしまったのだから、それに適切に対応できなければ、日本車のステイタスはいま以上に下がることになるのは必然、そして日本の自動車産業の衰退は日本経済にも大きな悪影響を及ぼすことになるだろう。