この記事をまとめると
■EV時代の本格的な到来に向けてヤマハから「EV加速サウンド」の提案がなされた■ミキシングされた新たなEV加速サウンドが走行に呼応して車内に響く
■アクセル開度と車速モニターでときにはパワフルにときにはスムースにサウンド再生
EVだってやっぱり音を楽しみたい
EVのフォーミュラカーレース、フォーミュラEを間近で観戦した際、音については期待をしていなかったのですが、見事に裏切られました。ハイワッテージのモーターが全開で鳴らす独特な唸りや駆動システムが発生するノイズ、タイヤの摩擦音などなど、限界域のレーススピードならではの大迫力。これなら、従来のレースを見慣れているファンにもいずれは良さが伝わる、EVの唸りに心躍らされるシーンが必ずやってくると感じたものです。
もっとも、こちらは世界のトップレベルEVレースの話であって、普段そこらを走るEVとなると、モーターの音で心震わせるなどということは滅多にありません。EV時代が到来してもクルマ好きが心震わせるサウンドは望み薄かと思いきや、あのヤマハがやってくれました!
ヤマハといえば、すぐさまトヨタ向けエンジン開発やバイクを思い出すのはクルマ好き、乗りもの好きのデフォ。ですが、それはヤマハ発動機で、今回はピアノや楽器、オーディオデバイスを作っているヤマハのニュース。
ちなみに、レクサスLFAに搭載されたヤマハ発動機によるV10エンジンのサウンドチューニングにはヤマハの音響チームが合流したとされ、クルマとのコミットが薄いわけではないのです。むしろ、車載オーディオの開発や車内の音響空間を自動車メーカーと協業して開発するなど、クルマとの関わりは十分すぎるほどといえるでしょう。

そんなヤマハから「EVのスポーツドライビングに応える加速サウンド」の提案がなされました。既述のとおりEVといえば静かな車内で、ドライビングプレジャーを与えてくれるサウンドとは無縁の世界。ここに、ヤマハがこれまで培ってきた楽器作りや音楽制作、はたまた先進的な音響デバイスのノウハウが生かせるはず!
ということで、EVにも心躍らすような車載オーディオ向けサウンドを開発したとのことで、従来のエンジン音を受け継ぐサウンドをはじめ、「物理的制約から解放されたまったく新しいサウンド」なるものまでミックス。つまり、新たなEV加速サウンドをオーディオシステムに組み込むことで「クルマの走りに呼応したサウンドパフォーマンスが車内に響く」ことになるのです。
ヤマハが音楽制作で培ったノウハウを加速サウンドに注入
さすがにヤマハらしく、開発プロセスは音楽制作の知見がベースとなり、シンセサイザーが大いに活躍した模様。ご承知のとおり、シンセはあらゆる音をサンプリングして、さまざまな音の作りこみができる機材。加速シーンにあわせて、ひとつひとつの音を作りこみ、あたかも心揺さぶる曲を聴いているかのようなドライビング体験ができるとされています。

さらに、加速サウンドも楽器の音色と同じく倍音構成としているのもヤマハならではの表現かと。平たくいうと、EVの加速音が管楽器のようなクリアな響きから、弦楽器のように野太い低音まで幅広く表現できるということ。このあたり、デモ動画でもご覧になっていただくのが一番わかりやすいです。
そして、クルマ好きの興味をそそるのが「アクセルワークや速度と連動する動的制御」というポイント。これは、アクセル開度と車速をリアルタイムにモニターして、独自開発したアルゴリズムにより、ときにはパワフルに、ときにはスムースにサウンドを再生するというもの。走行状態にマッチしたサウンドということにほかならず、エンジンの回転数やギヤレシオといった要素まで導入されるとなると、ゲームのサウンドなんか目じゃないってことになりますね。

ところで、エンジンやギヤは動力機構であるのと同時に音源であることも確か。これもヤマハは抜かりなく「仮想的なエンジン回転数」を導き出し、回転数とギヤのバリエーションについて細かく音作りをしたといいます。これによって、加速音には自然な躍動感が加わり、よりリアルでエモーショナルな仕上がりに!
以前、ダッジ・チャージャー・デイトナのEVコンセプトモデルを紹介した際は、120デシベルもの爆音(ジェット機のエンジンに等しいボリューム)を発生させる音響システムに度肝を抜かれましたが、ヤマハのEV加速サウンドはより緻密な感じがバチバチ伝わってきます。技術的にはマッスルカー並みの爆音も可能でしょうが、やっぱりヤマハらしく透き通った胸のすくようなサウンドを願いたいもの。

こうしたイノベーションがどんどん活発になれば、EV時代のドライブはよりワクワクすること間違いありません。