この記事をまとめると
■スーパー耐久第2戦「NAPAC富士SUPERTEC 24時間レース」が開催■夜間は減速時に真っ赤に光るマシンのブレーキローターが印象的だった
■エンドレスの稲本隆之さんにブレーキが赤くなる現象についてお話を伺った
700℃に達するレーシングマシンのブレーキローター
スーパー耐久の第2戦「NAPAC富士SUPERTEC 24時間レース」が5月25日~28日、静岡県の富士スピードウェイを舞台に開催。今年で6度目の開催となる2023年の大会もレース途中で赤旗中断となるなど、過酷なサバイバルレースが展開されていた。
それにしても、やはり日本で唯一の24時間レースはじつに面白い。
というわけで、ここでは自社チーム「ENDLESS SPORTS」としてスーパー耐久にトヨタGRヤリス、トヨタGR86を投入するほか、ブレーキメーカーとしてもキャリパー&ローター、パッドなど、さまざまなアイテムをリリースするエンドレスの稲本隆之氏にブレーキが赤くなる現象について話を聞いてみたところ、ブレーキは温度によってさまざまな表情を見せることがわかった。
そもそもレーシングマシンのブレーキは何度まで上がっているのか……についてだが、稲本氏によれば「クルマによって違いますが、スーパー耐久のマシンで言えば、富士スピードウェイのストレードエンドで600℃~700℃ぐらいまで上がることもあります」とのこと。さらに「ナイトセッションは暗いので、500℃に上がった段階でブレーキローターが焼けているところが可視化されていますが、だいたい700℃ぐらいまで上がれば、昼間でもブレーキローターが赤くなっているのが見えると思います。ブレーキローターが赤く見える間はまだ大丈夫なんですけど、それを超えると白くなり、その次はだんだん透明になってきて、ブレーキディスクの中身の溝、ベーンが見えてくることがある。もちろん、走っている状態なら大丈夫ですし、レースなら走行している間は冷えていくので大丈夫ですけど、ラリー競技では冷却ができないので。TCでストップした時にブレーキから出火する可能性もあります」と語る。
ちなみにブレーキアイテムが耐えられる温度についてだが、「ピークだけで言えば、800℃ぐらいまでは大丈夫ですが、ローターは鋳鉄なのでコンスタントに600℃を超えると厳しいです。650℃を超えると組成が変わってきて、もろくなってきますので、スーパー耐久の参戦車両はエアダクトを設けて冷却しています」と稲本氏。
24時間レースではブレーキアイテムを交換しているチームが多い
さらに低温の状態もブレーキにとっては厳しいコンディションのようで「温度が低すぎてもブレーキが利かない。とくにストレートエンドは一番、ブレーキが利かないといけないところなんですけれど、冷却されているので利きづらい。100℃未満でストレートエンドを迎えるのはちょっと怖いです。
まさにレーシングカーに欠かせないブレーキは温度によって効果が変わってくることから、そのコントロールが重要だが、24時間レースではブレーキアイテムを交換しているのだろうか?
これについても稲本氏は「クルマやコンディションによって違いますが、富士24時間レースでは10分間のメンテナンスタイムが設けられているので、ブレーキ部品を替えているチームが多いです。パッドだけを交換しているところもあれば、ローターとパッドをだけを交換するチーム、あとは作業効率を考えてキャリパー、ローター、パッドと一式で交換するマシンもありますし、フロントだけアッセンブリーで交換するチームもあったりします」と解説。
さらに「チームやクルマによっては“ブレーキ無交換”で走破することも可能です。実際、2022年の大会にENDLESSSPORTSはメルセデスAMG GT4に当社のブレーキシステムを採用したマシンでST-Qクラスに参戦していたのですが、ブレーキは無交換で走り切ることができました。ニュルブルクリンク24時間レースでは、今でもクルマによっては無交換で走破しています。過去にはポルシェのワークスチームとして活動するマンタイレーシングなども無交換でニュルブルクリンク24時間レースを勝っていました」と稲本氏は付け加える。
このようにブレーキひとつをクローズアップしても、24時間レースにはさまざまなストーリーが満載。だからこそ、一昼夜をかけて争う耐久レースは魅力満載なのである。

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