この記事をまとめると
■アメリカのビッグ3のひとつでもあるクライスラーのセダンモデルを紹介■セダンは現在のところミドルサイズセダンの300Cしかラインアップされていない
■過去にはコンパクトセダンやフルサイズセダンも存在いていた
クライスラーグループ内ではラグジュアリーブランド的立ち位置
GM、フォードとともにアメリカの自動車文化を支え続けてきたクライスラー。1925年にウォルター・クライスラーが既存メーカーを合併させて設立したクライスラーは、フィアットやプジョーなどとともにステランティスグループに属しています。
現在、北米市場でクライスラーブランドとして販売されている車両は、はミニバンのパシフィカ(Pacifica)、そしてセダンの300のみ。
今回はクライスラーで唯一ラインアップされているセダンの300と、これまでに発売してきた代表的セダンを紹介していきます。
現行車種
クライスラー300
ボディサイズ:全長5044mm、全幅1905mm、全高1486mm
車両価格:3万4295~4万6000ドル(約475万6500~637万9970円)
現在、クライスラーブランドで販売されている唯一のセダンとなる300。現行モデルは2011年に登場した2代目となります。

ただ、2代目に進化してはいるものの、プラットフォームは先代のものを流用。その先代は1995年に登場したW210型メルセデス・ベンツEクラスからサスペンションをはじめ多くのパーツを共用し開発されたことをご存じの方も多いことでしょう。また、2代目へフルモデルチェンジした際、先代モデルに用意されていたワゴンは廃止されており、セダンのみとなっています。
そもそも300は、1955年にデビューしたフルサイズ・クーペが源流。デビュー以来、車名の末尾に「300B」、「300C」などのアルファベットを追加し、年々更新したことでレターシリーズと呼ばれました。

北米市場で販売されている300は、エントリーモデルとなる「TOURING」をはじめ、「TOURING L」、スポーツモデルの「300S V6」、ハイパフォーマンス仕様「300S V8」と4つのグレードをラインアップ。

パワーユニットは3.6リッターV6エンジンを中心に、「300S V8」には最高出力363馬力を発揮する5.7リッター「HEMI 」ヘッド(半球形燃焼室ヘッド)V8エンジンを搭載しています。

※写真は300Cの6.4リッターV8「HEMI」エンジン
マイナーチェンジでフロントマスクに変更が加えられたものの、基本デザインには手が加えられないまま販売されてきた同車でしたが、2023年モデルを最後に生産終了することが発表されています。
2024年にはクライスラーブランドからセダンが消える
歴代クライスラーセダン
インペリアル(1926年~1993年)
北米市場においてキャデラックやリンカーンに対抗する高級車としてクライスラーが発表したのがインペリアル。余談となりますが、まったく同じ名前がついたバラの品種も存在します。

1930年にクライスラー初となるV8エンジン搭載車となったインペリアルは第二次大戦前から存在するモデルですが、同車が存在感を示すのは戦後登場した6代目以降。
とくに1955年に登場し、クライスラーブランドから独立したインペリアルは、ロングノーズと低い全高を備えたフォワードルックが目を引く美しいデザインが特徴でした。

しかし、オイルショックなどにより1975年、インペリアルはブランド消滅。それでも、1981年にインペリアルは突如復活を果たしましたが、残念なことにわずか2年で生産終了となってしまいます。その後、インペリアルはクライスラーブランドととして再び復活しましたが、最終的に1993年にブランドが消滅してしまいました。
同車についてはウルトラセブンに登場するポインター号のベース車種となったことで特撮ファンから一目置かれるモデルでもあります。
ニューヨーカー(1939~1996年)
先程紹介したインペリアルから派生し、クライスラーの上級モデルとして長年生産されたニューヨーカー。AT、パワーステアリングなどの快適装備がいち早く搭載されていました。また、クライスラー自慢の「HEMI」ヘッドV8エンジンなど、上級モデルにふさわしいパワーユニットも搭載されています。

フルサイズセダンとして人気を誇ったニューヨーカーでしたが、インペリアル同様、オイルショックの影響をモロに受け需要が激減。1979年に登場した7代目からボディサイズを縮小。6リッターオーバーだったエンジンの排気量も5.2リッター(上級車種には5.9リッター)V8エンジンへとダウンサイジングされています。
その後、8代目はさらにボディを縮小し、9代目からはミドルクラスのFFセダンへと変貌を遂げました。

10代目、11代目は再びボディが拡大されましたが人気は回復せず、1996年に生産終了となりました。

コンコルド(1993~2004年)
FF化されたニューヨーカーと同じプラットフォームを用いて製造されたフルサイズセダンのコンコルド。全長5mオーバー、ホイールベース2870mmと堂々たるボディを有していました。
1993年にデビューした初代はこれまでのアメ車らしくない先進的なフォルムを採用。FF車らしくショートノーズにキャビンを前進させたキャブフォワードスタイルを採用していたのが特徴です。FFレイアウトを採用したことで室内は広大だったことも特徴で、パワーユニットは3.3リッター&3.5リッターV6エンジンを用意。

登場した1990年代に北米市場で高い人気を誇ったホンダ・アコードやトヨタ・カムリなどのセダンに真っ向勝負を挑みました。ただ、ミドルクラスセダンのアコードやカムリに対し燃費で劣るなど販売的に苦戦。
1998年にフルモデルチェンジで2代目が登場するも販売は好転せず、2004年に生産終了となりました。
300M(1999~2004年)
先程紹介したコンコルド(2代目)の兄弟車として1999年に登場したフルサイズセダンの300M。コンコルド同様、キャブフォワードスタイルを採用した先進的なフォルムながら、レトロテイストも取り入れたエクステリアデザインを身につけています。

300Mという車名の由来は300と同様のレターシリーズと呼ばれたハイパフォーマンスモデルから。とはいえ、搭載されるパワーユニットは最高出力252馬力を発揮する3.5リッターV6エンジンのみでした。
フルサイズセダンのため、全長5015mm、全幅1910mmと大柄なボディサイズながら同車は日本でも販売。日本の道路インフラでは扱いづらく人気を得ることはできませんでしたが、一部のアメ車好きからはよくぞ販売してくれたと熱狂的に受け入られました。
北米市場で300Mはそれなりに人気を博しましたが、2004年にミドルクラスセダン300(300C)にバトンタッチする形で生産終了となりました。
300C(2004~2011年)
300Mの後を継ぐ形で登場したのが300C。レターシリーズと呼ばれた往年の300シリーズを現代的に解釈し直したモデルであり、迫力あるスタイリングと充実した装備により人気を博しました。

トップグレードには5.8リッターの「HEMI」ヘッドV8エンジンが搭載されるなど、当時のクライスラーのフラッグシップセダンに相応しいモデルとなっていました。
まとめ
かつて、GMやフォードとともにアメリカビッグ3と呼ばれたクライスラー。1980年代以降、紆余曲折を繰り広げ2009年に経営破綻するなどビジネス的に厳しい状態が続いてきました。
その原因となったのが同車の主力モデルだったフルサイズセダンをはじめとする大型車が売れなくなったこと。ステランティスに属している現在、唯一のセダンとなる300もフルサイズではなくミドルクラスのモデルです。
そんな300も2023年モデルで生産終了となることがすでに発表済み。日本での知名度も決して高くはありませんでしたが、残念ながらクライスラーの名がつくセダンは間もなく姿を消してしまいます。