この記事をまとめると
■日本市場における輸入車の販売ブランドランキングでVWが下位に沈んでいる■かつての排出ガス不正問題時から販売台数が減少していった
■看板車種のゴルフは好調だがそれ以外のラインアップがやや寂しい
同じドイツのメルセデスやBMWの後塵を拝す
2014年までは、輸入車市場ではVW(フォルクスワーゲン)が販売ナンバーワンのブランドだった。
ところが2015年は、メルセデスベンツが1位で、VWは2位に下がった。その切っ掛けは、2015年に北米で発覚したVWの排出ガス不正問題だ。
2015年の時点でVWのディーゼル車は日本で売られていなかったが、この問題が報道されると、国内登録台数は前年の52%に激減した。VWにはもともと品行方正でクリーンなブランドイメージがあり、それが著しく裏切られたからだ。
これ以来、VWの売れ行きは伸び悩む。2023年1~7月の輸入車販売ランキングは、1位がメルセデスベンツ、2位はBMWで、3位がVWだった。
VWの代表車種とされるゴルフは、2020年はメルセデスベンツAクラスを下まわった。2021年は日本仕様も新型の8代目にフルモデルチェンジしたが、納車が滞り、登録台数はBMW3シリーズやボルボ60シリーズを下まわった。2022年もメルセデスベンツCクラスに負けている。

ゴルフの売れ行きは好転したがそれ以外が……
直近の売れ行きはどうか。販売店に尋ねると以下のように返答された。「以前はゴルフヴァリアント(ワゴン)の納期が1年に達して、ハッチバックも長かった。そのために納期の短いTクロスが、ゴルフよりも多く販売されたこともあった。

このようにゴルフの売れ行きは好転してきた。直近となる2023年第2・四半期(4~6月)の登録台数は、メルセデスベンツCクラスを上まわり、輸入車販売の2位になった。1位はミニだが、そこにはコンパクトな3ドアからワイドボディのクロスオーバー、オープンモデルのコンバーチブルまですべてが含まれる。いわばミニブランドの総台数だ。ユーザーがクルマを選ぶ時の感覚でいえば、ゴルフが実質的な1位になる。

このようにゴルフ人気は回復したが、VWブランド全体の国内登録台数は、依然として1位ではない。前述のとおりメルセデスベンツとBMWに次ぐ3位だ。
この背景には車種の少なさもある。2023年第2・四半期の輸入車販売ランキングを見ると、上位20車の中に、メルセデスベンツであればCクラス、Gクラス、GLB、GLC、GLA、Aクラスと6車種が入った。その点でVWは、ゴルフは多いが、それ以外のTクロス、Tロック、ポロは順位が下がる。

このようにVWでは、ゴルフの売れ行きが回復したものの、それ以外は冴えない。とくにコンパクトなTクロスやポロは、日本の道路環境に適したサイズなのに、あまり売られていない。内装の作り、低回転域で加減速を繰り返した時の滑らかさ、エンジンノイズなどをもう少し洗練させる必要がある。VWは排出ガス不正問題でブランドが損なわれ、車両の質や商品力にも不満が生じているから、売れ行きも増えないのだ。かつての地味で真面目なクルマ作りを取り戻す必要がある。
