この記事をまとめると
■1980~90年代は輸入車には左ハンドルが多かったが、現在は右ハンドルが主流だ■かつての左ハンドル車の右ハンドルモデルはペダル配置などに違和感があるものが多かった
■日本で乗るには不便が多い左ハンドルだが、右利きであれば操作性に優れる場合もある
いまでは輸入車もほとんど右ハンドルしか選べない
かつて輸入車が”ガイシャ”と呼ばれていた時代、左ハンドルは高級外車の象徴であり、ステイタスでもあった。1980年代から90年代にかけて筆者が乗り継いだシボレー、BMW325i、マセラティ・ビターボ、メルセデス・ベンツEクラスはいずれも左ハンドルだった。というか、当時はほぼ左ハンドルしか選べなかったのである。
しかし、現在のスーパースポーツカーを除く輸入車のほとんどが、右ハンドル仕様で売られている。むしろ、右ハンドル、左ハンドルが選べる輸入車などないに等しく、ちょっと前まで右ハンドルに消極的だったフランス車やイタリア車も右ハンドルを基本とし、なんとアメリカ車のコルベットでさえ、C8と呼ばれる最新世代では、大型センターコンソールのスイッチ配置などを、日本仕様は見事に、史上初となる「右ハンドル化」されているのだ。たしかに日本では、駐車場の料金所、ドライブスルー、右折時、追い越し時など、左ハンドルだと困る場面もあり、右ハンドルのほうが使い勝手はいい。
思い起こせば、かつての輸入車の、左ハンドルを基本に開発された右ハンドル仕様は、ペダル配置が不自然だったり、たとえばポルシェ964時代では、ブレーキの配管=マスターシリンダーの位置などが左ハンドルと右ハンドルでは異なり、右ハンドル仕様のブレーキフィールに多少の違和感があったと記憶している。

操作性では、ウインカーレバーが国際基準の左側にある輸入車の右ハンドル仕様では、シフトとウインカー操作の両方を左手で行うことになり、煩わしく感じるに違いない。1980年代、地方の民間駐車場では「左ハンドルお断り」とされていたところまであったのだ(京都で経験)。これは、左ハンドルは怖い人が乗っていて、トラブルの原因になる……という理解しがたい理由だったようだ。
右利きなら左ハンドルにメリットがある!?
筆者は1990年代、キャデラックが開発中だったセビルの右ハンドル仕様をチェックしに、何度かアメリカを訪れた経験があるが、開発段階の車両ではスイッチ類の配置、ステアリングフィール、ブレーキフィールに、左ハンドル仕様との違いを感じないでもない……と開発陣に報告していた(走行性能に関しては市販車では解消)。

が、いまでは全世界市場では左ハンドル仕様がメインの輸入車でも、操作性や運転感覚において、しっかりと右ハンドル仕様に仕立てられているのが普通だ(センターコンソールまわりのスイッチの配置に左ハンドル仕様の名残があるクルマもあるにはあるが)。逆に、もはや左ハンドルの正規輸入車は圧倒的少数派になっている。
とはいえ、多くの左ハンドルの輸入車を所有してきた筆者の経験では、左ハンドルが100%不便かと言われれば、そうでもない場面もある、と感じている。
まずは、少数派ながらマニュアルミッション車だ。

駐車のしやすさも、左側通行の日本ではかえって左ハンドル車のほうがしやすいことも確か。つまり、ドライバーは車体の左側に乗っているわけで、駐車時、歩道側、路肩ギリギリに寄せやすくなることになる。
ナビの操作も左ハンドルのほうがしやすいかもしれない。マニュアルミッションの操作同様に、とくにタッチ操作、文字入力操作では、右利きの人ならやはり、スマートフォンの入力でも慣れた利き手のほうがやりやすく、入力ミスも少ないと考えられる。右ハンドルだと左手操作になり、操作、入力スピードが落ちるはずだ。

最後に、男子限定のとっておきの左ハンドルのメリットを紹介したい。それは、ここだけの話、ナンパがしやすいということ!? 右ハンドルで歩道を歩いている女の子に声をかけるとすれば、右ハンドルの運転席からだと距離が遠く、声も届きにくい。相手もこちらを認識しにくくなる。
ところが、左ハンドルでウインドウを開ければ、歩道を歩く女の子にかなり接近することになり、声をかけやすいというわけだ。もっとも、そんなナンパ行為は、昭和、平成時代の遊び人が残した左ハンドル車の遺産というべきメリットかもしれないが……。