この記事をまとめると
■FIAの公認レースに出場するためには「ホモロゲーション」という型式認定が必要だった■販売台数などの条件があることから、勝てるクルマが少なくなってしまい衰退した
■最近ではラリーの一部を除き、レース専用車をメインとしたレースが主流となっている
昔よく耳にした「ホモロゲーション」とは
ホモロゲーションとは、FIAの公認レースに出場するために必要な、自動車の型式認定のこと。
市販車ベースのツーリングカーレースの場合、レギュレーションで改造可能な部分と改造不可な部分が決まっているので、メーカー側は「だったら限定車を販売して、その条件をクリアしてしまえばいい」と考えるわけだが、FIAもそうした抜け道を放置せず、一定期間内に生産された台数に条件を課すようルールを作った。それをクリアしたクルマが、いわゆるホモロゲーションモデル。
たとえば、かつてWRCで一時代を築いたグループBは200台以上(12カ月)。レースでもラリーでも人気を博したグループAは5000台以上(12カ月)という条件だった。
しかし、ベースのホモロゲーションモデルの改良・進化が過熱するに従い、勝てるクルマが限られ、参戦を見送るメーカーが増え、車種のバリエーションが減少……。

そこで近年は、反対にベース車からの改造範囲を大幅に広げ、参加メーカー、車種を増やす方向に路線を変更したため、ホモロゲーションモデルの出番がなくなってきたというわけだ。
いまではレース専用モデルから安価なマシンまで幅広く存在
代表的なのが日本のスーパーGT(500クラス)。駆動方式(FR限定)もエンジン形式(2000cc、4気筒直噴ターボに統一)も、ベース車とは無関係に改造できるし、空力パーツも大幅な変更が許されているので、ホモロゲーションモデルは不要といっていい。

一方、ラリーカーは未だにいくつか条件がある。四輪駆動ターボのRally2、二輪駆動のRally4・Rally5など主な車両は、ベース車両がシリーズ全体で2万5000台、直接のモデルは連続する12カ月間で2500台が生産されている4座席の量産車であることが条件になっている。
その反面、トヨタのGRヤリスをはじめ、ヒョンデやフォードなどが参戦しているRally1は、ハイブリッドシステムを導入する代わりに、パイプフレームの使用も認められていて、ベース車両の最低生産台数も規定にはない(マニュファクチャラーの不足への対策)。

レース界でも、コストを抑え、性能差を調整し、アマチュアやキャリアの少ないドライバーのための「GT3」というカテゴリーが設けられ、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの各地でGT3を使ったレースが盛んに開催されるようになっていた。
しかし、GT3のレースが隆盛になればなるほどマシンは高性能化していき、車両&参戦コストは高騰(GT3の車両価格は5000万円が目安だった)。ドライバーもプロ化が進んできてしまったために、GT3の下位カテゴリーとして、「GT4」を新設。

ベース車両の性能に差がある場合も、BoPによる性能均衡化が図られるため、どのメーカー、どの車種でも勝てるチャンスがある。自動車メーカーやその直系のワークスブランドが製造、販売するため、高い安全性も保証されているといった特徴がある。
主なGT4マシンを挙げてみると、「メルセデスAMG GT4」、「ポルシェ718ケイマンGT4 クラブスポーツ」、「BMW M4 GT4」、「トヨタ GTスープラ GT4」、「ニッサンZ GT4」、「マクラーレン570S GT4」、「アウディR8 LMS GT4」などがあり、車種は意外に多彩。

国内のスーパー耐久でも、FIA GT3 公認車両、及びGT3規格に準ずる車両が参戦できる「ST-Xクラス」と、GT4公認車両、及びGT4規格に準ずる車両が参戦できる「ST-Zクラス」が設けられ、GT4のST-Zクラスには、2023シーズンは6車種11台がエントリーしていた(GT3のST-Xクラスは、4車種7台)。