この記事をまとめると
■スタッドレスタイヤには「プラットフォーム」と呼ばれるインジケーターがある■「プラットフォーム」に到達したスタッドレスタイヤは雪上&氷上性能が劣化する
■オールシーズンタイヤにも「プラットフォーム」は存在する
いままで使ってたスタッドレスに交換前に気をつけたいサイン
標高の高いところでは、ぼちぼち霜が上がったり降雪が見られたりという便りが届き、いよいよ冬本番が近くなってきたことを実感する時期になって来ました。みなさんのクルマの冬支度はもう済んでいますか?
雪が身近な地域の人ならもうスタッドレスタイヤへの履き替えは済んでいることでしょう。逆に雪がたまにしか降らない関東から西の都市部に住んでいる人たちは、まだ動き出していないか、あるいはスタッドレスタイヤの特売広告や特価品を探したりしていることでしょう。
一方で、けっこうな割合いの人はすでにスタッドレスタイヤを持っていて、雪の予報を耳にしたら替えようかとじっくり構えている人が大半かと思います。
さて、そんな人たちに問題です。「プラットフォーム」という単語を聞いたことがある、あるいは知っているという人はどれくらいいるでしょうか。この「プラットフォーム」、スタッドレスタイヤに頼る環境にある人にとって、知らずに過ごせない単語なんです。
ここではその「プラットフォーム」について解説していきましょう。
■プラットフォームってなに?
「プラットフォーム」というのは、スタッドレスタイヤの減り具合を示すインジケーター(目印)です。「プラットフォーム」を知らないという人でも「スリップサイン」は知っているでしょう。ご存じのように、「スリップサイン」はタイヤの摩耗限度を示すインジケーターです。

だいたいのタイヤではいちばん深いタテ溝の部分にこのスリップサインが設けられていて、タイヤの接地面が減っていってこのスリップサインと同じ高さになったら、そのタイヤは公道での使用ができなくなります。
ちなみにその限界値は道交法の保安基準で定められているので、メーカー問わずに共通の規格となっています。その数値はタイヤの溝が残り1.6mmとなっています。
そして、この「スリップサイン」と今回説明する「プラットフォーム」とは別のインジケーターなのです。
スタッドレスタイヤの主な機能は、雪やアイスバーンの上でもある程度のグリップ力を発揮することです。

「スリップサイン」はタイヤのトレッド面のすぐ脇のブロックが無くなる辺りに「△」マークで表示されていますが、「プラットフォーム」の方はもっとホイール寄りの部分に「⇧」マークで、ぐるっと4カ所に表示されています。そのマークを真っ直ぐ辿ると、トレッド面の深い溝の部分に台状のインジケーターがあります。それが「プラットフォーム」です。スリップサインとの違いは台の上面を見てください。細かい線が何本か入っているので、それを見ても識別が可能です。

■なぜスタッドレスタイヤの性能が発揮出来なくなるのか
スタッドレスタイヤの性能は、ベースとなるトレッド面の柔らかいゴムと、そこに刻まれた細かい溝による部分が大きいです。まずゴムの柔らかさで雪や氷の凸凹に馴染んで接地面を増やすことでグリップ力を高めます。そして、「サイプ」と呼ばれる細かく刻まれた溝によってタイヤのブロックが細かく分かれ、溝の隙間がタイヤをスリップさせる水分を吸い上げます。

そして、そのブロックがたわんだときのエッジ(角)が氷の面を捉えてグリップ力を発生させているのです。他にも、混入された保水粒子やクルミの殻などの引っ掻くような素材もそれぞれグリップ力の確保に貢献していますが、スタッドレスタイヤの基本的な性能はこの「サイプ」による部分が大きいのです。
この「サイプ」ですが、深く刻むほど吸水量がアップしますが、元から柔らかいゴムで出来ているため、あまり深く刻むとタイヤのコシがなくなり、駆動力を支えられなくなるので、設計上、ある程度の深さに留められています。
到達してもタイヤとしては普通に使うことはできるが……
■具体的に何ミリを過ぎるとNG?
そのスタッドレスタイヤとしての性能発揮の限度基準を示しているのが「プラットフォーム」です。「スリップサイン」とは異なり明確な数値で決められているわけではありませんが、太い溝の深さの半分くらいに設定されています。
目安の数値で言うとだいたい残り5mmに設定されているようですので、巷で紹介されていることの多い100円硬貨の1の部分で測るなど、やりやすい方法でこまめに確認しておくといいでしょう。

■「プラットフォーム」まで減ったタイヤは使えない?
法律上の使用の可・不可で言うなら、「プラットフォーム」まで減ったタイヤでも、まだ「スリップサイン」まで余裕があるので公道で使用することはできます。
ただし、「プラットフォームまでいったから次は夏用タイヤとして割り切って使用する」という考えは、あまりオススメできません。
そもそも「スタッドレスタイヤ」自体が夏用のタイヤに比べてグリップ性能は高くないので、降雪の心配がなくなった時点で交換するのがベストですが、普通に走っている分にはグリップ力の不安を感じることが少ないため、交換のタイミングを計りかねているケースも多いと思います。でも、グリップ力に関しては明らかに劣りますので、急ブレーキのときにヒヤッとする場面も出てくると思います。交通のリスクはなるべく遠ざけたいものです。

また、雨天の濡れた路面でも本来の性能を発揮出来ない可能性があります。スタッドレスタイヤはゴムが柔らかく変形量が大きいです。そのため、濡れた路面で重要な働きを担う排水用に刻まれた溝が変形で狭くなって、上手く水を逃がせなくなってしまいます。そうなるとタイヤと路面の間に水の膜が発生し、スリップを招いてしまうのです。
■「オールシーズンタイヤ」にも「プラットフォーム」はある?
「オールシーズンタイヤ」にも「プラットフォーム」はあります。
その名のとおりに1年中使い通せるタイヤとして人気が高まっている「オールシーズンタイヤ」も雪道での使用を想定して作られたタイヤなので、「スタッドレスタイヤ」と同じ構造が備わっています。

「スタッドレスタイヤ」と違うのは、「プラットフォーム」までタイヤが減っても、「スタッドレスタイヤ」のように不安になることはなく、ある程度夏用タイヤと同様に使えるという点でしょう。
ただし、ドライ&ウエット路面では夏用タイヤに劣り、凍結路面では「スタッドレスタイヤ」ほどのグリップが発揮出来ないため、極寒地域や豪雪地帯ではかなり慎重な運転が求められるでしょう。そして、夏用タイヤよりも減りが早いので、冬しか使わない「スタッドレスタイヤ」より、減りに対するチェック意識を持っていたほうがいいと思います。

性能を発揮出来る年数は3~4年と言われる「スタッドレスタイヤ」ですが、当然使用状況によって減り具合は異なりますので、この性能発揮限界の目安である「プラットフォーム」のチェックはまめに行うようにしたいですね。シーズンインのときはもちろんですが、シーズン終わりで交換する際にも減りの確認をおこなうようにしましょう。