この記事をまとめると
■日本の「CHAdeMO」をベースとした充電規格が、中国にて「ChaoJi」として承認された■「テスラ方式」を他社でも使用可能にする動きがあるが、不具合が出るかどうかはやってみないとわからない
■日本と中国の共同による「ChaoJi」という規格に今後欧州メーカーがどう反応するかにも注目だ
中国でも「CHAdeMO」が使われることに!
新しい充電規格として、日本の「CHAdeMO(以下:チャデモ)」をベースとした仕様の「ChaoJi(以下:チャオジ)」が中国で正式に承認された。「チャオジ」は「チャデモ3.0」の規格となる。
急速充電については、日本発のチャデモが先行し、これにテスラが独自方式を持ち込み、欧米はCCS(コンバインド・チャージング・システム)を準備し、中国はチャデモを範とするGB/Tを採用した。
急速充電というと、充電口の形状の違いや、充電出力の性能などが話題になりがちだが、そもそもは、充電に際しての通信を含めた段取りの規定で、それぞれ異なるやり方をしている。
チャデモは充電中もEVと通信を行い、安全に充電を完了できる段取りを持つ。そのため、充電のためのコネクターを取り付ける接点に、充電のほかに通信専用の接点を持つ。テスラとGB/Tも、通信専用接点を持つ。

これに対し、CCSは充電用の接点を通信用と兼ねるため、充電前の交信を終えると充電中は通信を行わない。このため、不具合が出たり加熱したりといったことが起きている。だが、あまり報道されておらず、高出力での短時間充電ばかりが採り上げられ、優れた方式だと思われている傾向にあるのだ。
チャデモでも、通信がうまくいかずに充電できないといったことがあったが、充電器側の課題と、EV側にも充電中に通信する設定がない輸入車などで不具合として扱われてきた。しかし今日では、そうした懸念が薄れている。なおかつ、充電中も通信することで安全に高電圧での充電が行われている点は、当たり前であるがゆえに、あまり話題にのぼっていないのが現状だ。
増えつつあるテスラ方式にはまだまだ課題がある
テスラ方式は米国での承認を得て、テスラ以外の各社が適応を図る動きがある。しかしこれも、やってみないとわからない面がある。
なぜなら、これまではテスラ車専用の充電器として、EVと充電器の相性は最適だからこそ、充電ケーブルも太くなり過ぎずに高出力化が図られてきた。この先、不特定多数の自動車メーカーのEVが相手となると、通信のやり取りなど含め、不具合が出たり改善が求められたりする懸念はなくもない。つまり、やってみないとわからないのである。

欧州では、高出力化がひとつの流れとなっているが、そのためには充電中を含めた通信による安全確認が何より不可欠で、そこを、従来からの各種充電器と互換性を含めて実現しようというのが、チャオジの狙いだ。
ただ、欧米ではチャデモが日本発であることへの嫌悪感がそもそもあったといわれており、日本と中国の共同によるチャオジに、欧州がどういう姿勢を見せるかは不透明だ。ただし、いくつかのメーカーはチャオジに加盟している。中国市場を無視するわけにはいかないからだろう。チャデモにも、世界の自動車メーカーの多くが加盟し、日本市場での販売につなげている。
ところで、チャオジは、充電性能で50~900kWという幅を持つ。欧州の高性能急速充電器でも350kW水準だ。
これは、大容量バッテリーを車載する大型トラックの導入を行おうとしているメルセデス・ベンツやテスラのためのもの。600kWh以上のバッテリーを急速充電するには、900kWでも30分以上かかるだろう。それでも、荷物の積み下ろし時間など考えれば実用的といえる。つまり、チャオジの最大出力は、物流向けとも言える。

いずれにしても、過度な急速充電はバッテリーを劣化させやすい。乗用車にしても物流のトラックにしても、基礎充電と呼ぶ自宅や配送拠点での普通充電や高性能過ぎない充電で、時間をかけての充電を基本とした利用が原点になるのではないか。
それがバッテリーを長持ちさせ、資源の有効利用にもつながることになる。