この記事をまとめると
■再生タイヤの需要は年々高まっている■トラック用タイヤのうち2割弱がリトレッドタイヤだ
■リトレッドにはいくつか方法がある
リトレッド用タイヤは進化している
クルマやオートバイ、自転車にはタイヤが使われている。航空機も地上にいるときにはタイヤが機体を支えている。現在の空気入りタイヤは、ダンロップ創業者のジョイ・ダンロップが発明した。
自転車と比べ、オートバイやクルマは大きく重く高速で走行するため、タイヤに対する負担は大きく、グリップ性能はもとより、信頼性や耐久性といった品質が重要視される。価格も大事だが、仕事中にタイヤにトラブルが起これば損失は膨大なだけに、品質が一番大事なのだ。
とりわけトラックは、配送用でも長距離輸送でも年間の走行距離が桁違いに長く、荷物を積んで車両重量も重くなるため、タイヤにかかる負荷は格段に大きい。そのためタイヤの構造や強度は、乗用車とは比べ物にならないほど頑強に作られている。そうしたタイヤは通常の使用ならば、トレッド表面のゴムが摩耗しても構造としてのタイヤの機能や強度は十分に確保されている。そのため、トレッドゴムを貼り替えればまだまだ使うことができるのだ。表面を均一に削り落として、トレッド部分のゴムを貼り付ける、リトレッドして再生していく。
それが再生タイヤ、最近は更生タイヤと呼ばれているリトレッド(表面のトレッドゴムを貼り替えた)されたタイヤだ。再生タイヤの需要は年々高まっている。近年ではトラック用タイヤのうち2割弱がリトレッドタイヤとなっているのだ。
ちなみに航空機用のタイヤも再生タイヤが使われている。
そのため航空機用のタイヤは5~6回はリトレッドされて使い続けるのが一般的になっている。
リトレッドの方法にも種類がある!
ではなぜ、乗用車ではあまり普及しないのだろうか。乗用車タイヤは軽量な車体で乗り心地を重視しているため、タイヤの剛性も高めることが難しくサイズも幅広いことから、リトレッドは難しくなっているのが現実だ。
タイヤメーカーが実施しているリトレッドは、非常に厳格な基準でタイヤの品質管理が行われており、昔の再生タイヤの業者が勝手にリトレッドしたものとは比べものにならないほど信頼性が高い。
リトレッドされるタイヤは、作業前に損傷がないか点検はされているが、目に見えない亀裂や断裂、劣化がある可能性も。そのため、タイヤメーカーではリトレッドの回数を制限している。当初は1回だけしかリトレッドできなかったが、タイヤメーカーもノウハウを積み重ねてより高耐久のタイヤ構造を作り上げ、2回、3回とリトレッドできるタイヤも登場している。

リトレッドの方法もいくつかあって、トレッドパターンが刻まれた板状のゴム材を台タイヤ(リトレッドするために表面を均一に削り落としたタイヤ)に貼り付け、外側をゴム製のバッグで覆って加熱することで一体化させるのがプレキュア方式と呼ばれる方法だ。バッグに入れて加圧、加熱されたことでトレッドゴムはタイヤと一体化される。加熱後にバッグから取り出されリトレッドタイヤが完成する。
一方、平たいゴム材を台タイヤに貼り付けて金型に入れて加熱することで、トレッドパターンを成型しながら一体化させるリモールド方式もある。コストを考えれば金型が少なくて済むプレキュア方式のほうが有利であるから、今後もプレキュア方式が主流となっていくと思われる。
乗用車や自動運転の小型バスなどはエアレスタイヤが登場し、徐々に普及する動きを見せているが、車両重量が重く、走行距離も多いトラックではエアレスタイヤの導入は難しい。まったく新しい構造のタイヤが登場するまでは、現在のラジアル構造の空気入りタイヤが利用され続けることになりそうだ。