この記事をまとめると
■東京オートサロン2024のNATSブースでは学生の卒業制作を展示■ケンメリGT-Rの全長を詰めたチョロQのような「幻のちびメリ」に注目
■「幻のちびメリ」はスズキ・マイティボーイをベースに製作されている
マイティボーイをケンメリ風にカスタム
カスタマイズはそもそも自由で多様なワケで、発想の突き抜け具合でいったら、やはり怖いものナシのヤングには敵わない。加えてカスタマイズには定番とか様式美のようなスタイルもあるワケだが、そうした知識を集めて積み上げるのもスマホ・ネイティブ世代のティーンの方が巧くて素早いのはご存知の通り。
というワケで、もはやTASの常連にして強豪校、日本自動車大学校(NATS)が出展した生徒さんによるカスタムカーのなかでも、2024年、異彩を放っていた軽カスタムが、こちらの一台。
一瞬、チョロQじみたスケール感に目がバグるはず。何せベースはスズキの1983年式マイティボーイだが、外観はKPGC110ことケンメリのスカイラインGT-R、しかもケンメリレーシングに準じている……。マーボーベースの別車種仕立てカスタムというのはこれまでもあった。でも、1970年代特有の太いCピラーと、トラックとはいえ軽トラとは捉えられづらいマーボーを結びつけてリアルに成立させてしまったところに、このクルマの斬新さがある。
残念ながら、製作した生徒さんは引率バスの時間が来て帰路についていたが、展示コンセプトのボード説明には次のようにあった。
「戦わずして伝説を築いたケンメリレーシングのDaily Useを現実にし、そのケンメリを小さく再現すべくスズキマイティボーイをベースに、楽しくそして美しいカスタムを提案いたします」
確かにボディワークは圧巻で、塗装やグラフィックの仕上げはもちろん、4灯テールやCピラーのオーナメントにリヤスポイラー、前後メッキバンパーやグリルといったケンメリなディティールからして丁寧で美しい。

逆にワタナベ8スポークのゴールドホイールを履いたタイヤは、本物のダンロップタイヤを履かせているのに、わざわざスプレーで大きく「DUNLOP」とイエローレタリングが描かれるなど、細かい笑いもとりに行っている。
ちなみにマーボーは当然FFだが、12インチホイールはフロント4.5Jにリヤ5Jと、リヤ太の前後異径をわざわざチョイスしたのも微笑ましく、タイヤを2本づつ揃えられたらなお良しだったろう。黒コート塗装された荷台はそのまま活かされている。
内装の作り込みも凄い!
内装も相当に作り込まれていて、トラストの4連メーター追加と、バンザイレーシングB.R.E.オリジナルコンペステアリング、そしてウッドのシフトノブが目を引く。正面の2連メーターは純正ママイキで、速度計が120km/hなところは微笑ましい。
注目はシートで、純正シートをビニールレザーに総張り替えされている。しかも1列辺り3連で打たれた通気孔スタッドがゴールド仕上げ、かつ妙にダットサン純正風で、フロンテクーペ風とは言わせない迫力がある。カタチは全然バケットシートじゃないにもかかわらず、見る者の目をバグらせるディティールを心得た、ニクい仕上がりといえるだろう。

フロントに目を移そう。グリルからパイプがハミ出ちゃうのは懐かしのKPGC10のオイルクーラーホースだった気がするが、スズキの550㏄エンジンが前方排気だったことを思い出せば、輝く3本エキマニのシブさが際立つというもの。ボディ右下から2本のサイド出しに至る排気系はオリジナルだそうだ。

実車を拝むのは無論、必須だが、足を止めて眺めているオッサンたちの、なぜか満たされた笑みを一歩引いて観察するのも、なかなかオツな楽しみ方といえる。トドメに驚くべきは、この幻のちびメリと周囲のカスタムカーは学生の卒業制作なので、最終的には車検を取って公道を走れるようにしないと、単位にならないのだそう。

「当然、計画の段階から、その辺の輩(ヤカラ)のやるクルマ弄りじゃないんだから、車検公認が前提だぞ、という指導はしています。でもまぁ、学生は発想が自由なもので」と語る教官先生たちの、どこかほくほくした表情まで、滋味深い展示だった。
公道でもし見かけることがあるならば……まさにケンメリレーシングを超える幻かもしれない!