この記事をまとめると
■2~3月は自動車販売店で新社会人向けの「フレッシュマンフェア」が行われていた



■日本の多くの地域では通勤や通学の足としてクルマが使われることが多いのが理由だ



■バブル期はクルマが飛ぶように売れたが、以降は賃金が上がらない影響で新車が売れづらい



鉄板イベントだった「新社会人向けセール」も縮小しつつある

毎年2月、3月は事業年度締めでの「年度末」となり、新車販売の世界では年度末決算セールが展開されるのはみなさんもご承知のとおり。しかし、この時期は4月から新社会人を迎える人向けに通勤用、大学や専門学校などへ進学した人の通学用などとして、新車購入が活発に行われる時期でもある。



過去には某メーカーが「フレッシュマンフェア」などとして積極的にテレビコマーシャルを流したり、フレッシュマン(新社会人)向け特別仕様車を用意するなど、新車販売業界は事業年度末決算セールをメインに、新社会人などへの需要も積極的に取り込んでいたのである。



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最近このフレッシャーズ需要を狙った販売促進活動をあまり見かけなくなったので調べてみると、直近では確認できなかった。しかし、2021年あたりでは一部スズキ系ディーラーなどで、「フレッシュマンセール」などと銘打って展開していたのが確認できた。



大都市部などではあまりピンとこないかもしれないが、自動車通勤が当たり前という地域が日本では非常に多い。いまは「男女でどうのこうの……」ということは細心の注意が必要なのだが、あえて傾向を述べればフレッシュマンでもとくに女性のフレッシュマンでは、親御さんが、新車を買い与えるということは珍しくない。フレッシュマンというのは何も社会人に限定したものでもなく、地域によれば大学や短大、専門学校などへクルマを使って通学するというシチュエーションももちろん存在する。



就職したらクルマを買うのが当たり前……はもう時代遅れ! 新車販売現場から「フレッシュマンフェア」が消えたワケ
納車のイメージ



近年では特別仕様車というものはさすがに用意されないようだが、かわりに一定金額分のオプションを無料サービスするなどの購入特典が設定されているようである。



「とりあえずクルマを買う」みたいな時代ではなくなった

筆者の若いころ(バブル経済末期)には、男子は社会人になると可能な限り早く自分のクルマを購入していた。新卒社会人ぐらいの男子が集まれば「お前はどんなクルマを買うんだ」という話で盛り上がっていたものである。



当時の男子といえば、「フルローンで高額スポーツカーを購入し、食事はカップラーメンでしのぐ」といったイメージの人も多かったが、いまどきの「コスパ(コストパフォーマンス)」や「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する若者から見れば、到底理解されないこととなるのかもしれない。



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日産シルビア(S13)の走行写真



若者を取り巻く社会環境も変わってきているほか、安全支援装備の充実などもあり、新車の車両価格はバブル経済のころに比べればかなり高くなっている。これもみなさんご承知のとおり、日本ではバブル経済崩壊から今日までの30年間は給与水準がほぼ横ばいで推移しており、若い世代ほど負担が重く、将来への不安が多すぎて「社会人になったからクルマ買って乗りまわす」ということもなかなかできなくなっている。



そのなかでも、東京など大都市を除けば、通勤手段など日常生活の移動手段としてはクルマに頼るしかない地域が多いのだが、「新社会人になったからおめでたい」と、ポンと親側さんの間でもクルマを買ってあげる余裕がなくなってきているケースも目立っている。



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地方の幹線道路の様子



過去には「ボーナスフェア」と銘打っていたが、「ボーナスをもらえない人もいる」との意見もあり、いまは使われなくなっている。「フレッシャーズフェア」もまったくなくなったわけではないが、目立って販売促進ツールとして積極展開することもなかなかできなくなってきているのがいまの日本の現状だ。



消極的ともいえる日本社会の変化が、新車の販売促進活動にも大きな変化をもたらせているのである。