この記事をまとめると
■ひと昔前の自動車ディーラーでは新車購入時に大幅な値引きが頻繁に行われていた■いまどきの新車は1台当たりの粗利が以前よりも少なく大幅値引きは難しい
■車種の選択に迷っているときは両車の見積りを取って値引きや下取り車の査定額を比較すると良い
新車の値引きが渋くなっているのにはワケがある
2000年以前は、決算期などでは多額の値引きを引き出せた。たとえば2000年頃に販売されていたマツダ・カペラ(マツダ6の前身)などは、2リッターエンジンを積んだ売れ筋グレードの価格が220万円前後なのに、値引きは35万円くらいに達していた。車両価格の16%も値引きしていた。
このような値引きを引き出すときは、ライバル車との競争も行った。カペラであれば、当時の日産ブルーバードや三菱ギャランを相手に競わせた。エルグランドなら、トヨタ・グランビア(アルファードの前身)や三菱デリカ・スペースギアという具合だ。
当時はクルマを1台売ったときに販売会社の受け取る粗利もいまよりも多く、値引き額を捻出しやすかった。決算期などには、メーカーから販売会社に販売報償金が拠出され、これを原資に値引き額をさらに上乗せできた。
ところがいまは状況が違う。クルマの価格は2000年当時の1.2~1.4倍に高まり、販売会社も儲かりそうだが、販売店では否定する。「車両価格が値上げされても、1台当たりの粗利は以前に比べてむしろ少ない。車両販売以外のサービスで稼ぐ必要が生じている」という。

また、いまは新車として売られるクルマの35%以上が軽自動車で、これに続く人気のカテゴリーはコンパクトカーだ。SUVも売れ行きを増やすが、ヤリスクロスを始めとするコンパクトな車種が中心。

高価格車は全般的に売れていないため、ますます多額の値引き販売は難しくなっている。
いまどきは駆け引きよりも正直な交渉が好まれる
それでも交渉の余地はある。車種の選択に迷っているときは、素直に両車の見積りを取り、値引きや下取り車の査定額を比較すると良い。
注意したいのは、ライバル車を無理に立てることだ。たとえばセレナが欲しい場合、ライバル車だからといって値引きの競争相手にノア&ヴォクシーやステップワゴンを無理に持ち出しても、セールススタッフに見透かされる。

仮にライバル車を挙げるなら、その車種の魅力を自分なりに考えておくことが大切だ。「セレナに比べて、ステップワゴンのどこが気に入ったのか」ということ。実際に試乗して、自分なりに気に入ったデザインや機能を見つけておく。ウェブサイトや雑誌の情報では、自分の意見にはならず、セールススタッフにも見抜かれる。

販売店からは「同じカテゴリーの車種同士で迷うお客さまは意外に少ない」という話も聞かれる。「車内が広くてスライドを備えたセレナが第一候補だが、じつはSUVのハリアーもカッコ良くて好き」と考えているユーザーも多いわけだ。販売店では「ご自分の迷いを素直に商談にもち出したほうが、現実味も強まる」という。

販売店のスタッフを尊重しつつ、正直に商談を進めるといい。そして、値引き商談を終了するタイミングも見極めたい。「どうしても1台売りたいときは、ギリギリまで値引きを要求してくるお客さまの希望に応えることもあるが、大体売りっぱなしになってしまう。嫌な客については、車検や点検で車両の引き取りや納車に応じるなどの便宜も図ろうとは思わない」とのことだ。
スマートな大人の商談を心がけたい。