この記事をまとめると
■クルマのカスタマイズにおいて「インチアップ」という手法がある



■「インチアップ」は本来スポーツカーのブレーキサイズアップのために用いられていた



■「インチダウン」することでタイヤの扁平を厚くできるので乗り心地向上が見込める



足もとのカスタムはインチアップが定番

クルマのカスタマイズやドレスアップといえば足もとの“インチアップ”が定番といえる。



あらためてインチアップを説明すれば、タイヤが組み込まれ、一体となっているパーツ「ホイール径」を大きくすること。慣習的にホイール(=タイヤ内径)のサイズ表記の単位にはインチが使われていることで、インチアップ=ホイールのサイズアップを意味している。

そして量産車において、ホイールをサイズアップするということは本来、ブレーキシステムを大きくして性能アップさせるためだった。とくにスポーツカーにおいて、大きなブレーキローターやブレーキキャリパーを収めるためにホイールがサイズアップしていったという経緯がある。



「カスタム=インチアップ」って思い込んでない? あえて16イ...の画像はこちら >>



そうした進化の流れを受け、大きなホイールはスポーティに見えるというトレンドになっていき、ブレーキ性能にかかわらず、インチアップはカスタマイズだけでなく新車のデザイン的な視点からも定番の手法となっていった。



ただし、車体側に手を加えない限り、タイヤの外径は標準装着のサイズと同程度とする必要がある。



「カスタム=インチアップ」って思い込んでない? あえて16インチを選択したヴェゼルのHuNTに乗って感じた「インチダウン」のメリットとは
ホイールカスタムのイメージ



そのため、インチアップした場合には、タイヤの厚みを変えて(薄く)してつじつまを合わせる。たとえば215/60-16サイズのタイヤを18インチにインチアップする場合は225/50-18サイズにするわけだ。それぞれのサイズ表記にある60や50という数字は偏平率と呼ばれ、タイヤ幅に対する厚みの比率を%で示したときの大まかな数字となっている。



つまり、インチアップ≒低偏平率になるということだ。低偏平の薄いタイヤがもつ物理的な特徴として多くのドライバーが感じられるのは、タイヤのしっかり感が高いことだろう。シチュエーションでいえば、ハンドルを切ってコーナリングしようとする際に、思いどおりのラインを描きやすいというメリットがある。



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ホンダ・シビックRS



また、上記の例でも示したように、インチアップとタイヤのワイド化は同時に行われることが多い。これもコーナリング性能アップに効いてくる。



インチダウンもさまざまな効果あり!

さて、前置きが長くなってしまったが、ここからが本題だ。2024年上半期におけるSUVのベストセラーモデルであり、4月にマイナーチェンジで進化したホンダ・ヴェゼルのトップグレードは18インチタイヤを履いている。そのトップグレードにはPLaYパッケージと呼ばれる都会的なコーディネートが設定されている。これはマイナーチェンジ前のPLaYグレードを進化させたものといえる。



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ホンダ・ヴェゼルPLaY



さらに、新しくなったヴェゼルではエントリーグレードにも「HuNTパッケージ」というアウトドア志向のアクティブテイストのパッケージが用意された。ここで注目したいのは、ヴェゼルのエントリーグレードは16インチタイヤを履いており、HuNTパッケージ仕様としたときもタイヤサイズは変わらないという点だ。ドレスアップを狙った仕様であればインチアップを伴うのはなかば常識とも思えるが、あえて16インチのままとしている。



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ホンダ・ヴェゼルHuNT



たしかにオフロード走行を想定したタイヤ選びにおいては、タイヤが変形して路面をとらえるようにするため高偏平タイヤを選ぶことが多く、むしろインチアップは走破性を下げてしまうという見方もあるが、ヴェゼルHuNTパッケージが想定しているようなアウトドアシーンはそこまでハードな走行性能を求めてはいないだろう。



しかしながら、新型ヴェゼルの18インチ仕様と16インチ仕様を乗り比べた筆者には、HuNTパッケージをあえて16インチタイヤとしていることが正解だと感じられた。ちなみに前述したタイヤサイズはヴェゼルのそれで、あらためて記せば、225/50-18と215/60-16となっている。



「カスタム=インチアップ」って思い込んでない? あえて16インチを選択したヴェゼルのHuNTに乗って感じた「インチダウン」のメリットとは
ホンダ・ヴェゼルHuNT



18インチタイヤを履いたヴェゼルは、50偏平ということもあってたしかにコーナリングはシャープで、SUVに期待する以上のスポーティなテイストを実現している。しかしながら、市街地を走っているときには、とくにFFにおいてコツコツとしたタイヤの硬さを感じることもあった。



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ホンダ・ヴェゼルPLaY



一方、60偏平の16インチタイヤを履いているヴェゼルでは、そうした硬さは感じられない。適度な柔らかさがシャシーとの好バランスにつながっており、けっしてハンドリングがダルくはないが、いい意味でのユルさがあった。アウトドアテイストのHuNTパッケージには、このタイヤのほうがキャラに合っているといえそうだ。



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ホンダ・ヴェゼルHuNT



クロスオーバーSUVであっても、ホイールサイズが大きい、インチアップしたほうがエライといった考え方もあるだろうが、あえて高偏平のインチダウンサイズを選ぶことのメリットをヴェゼルHuNTパッケージに試乗して再確認することができた。



これはヴェゼルだけにいえることではないだろう。SUVであればホイールサイズが小さいほうのグレードを選ぶのもいいだろうし、上級グレードのオーナーがあえてインチダウンを検討するというのもアリかもしれない。



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ホイールカスタムのイメージ



ただし、冒頭でも記したように、ホイールサイズの選定はブレーキシステムを収めることも考慮されているので、インチダウンするときにはブレーキとホイールが干渉しないことを確認する必要がある。純正で設定されている範囲でのインチダウンや、ホイールを試着できるショップを利用するなど、注意してインチダウンカスタマイズを楽しんでほしい。

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