この記事をまとめると
■タクシーはLPGという液化天然ガスを燃料として使っている■LPGはガソリンより価格が安価だったが最近では価格差がほぼなくなっている
■LPGが再度注目されない限りLPGスタンドは減少の一途を辿る可能性がある
タクシーの燃料はガソリンではない
タクシーといえば、乗車したときの独特の匂いが印象深いという方もいるのではないでしょうか。このタクシーならではの匂いの正体は、液化石油ガス(LPG)です。今回は、LPGのタクシーが多いものの、ガススタンドが減少している理由について考察します。
LPGとは? 普及した理由とスタンド減少の原因
そもそもLPGとは、液化石油ガスのことで、タクシーやトラックなどに使われている燃料です。このLPGは、ガソリンよりも価格が安い(ガソリンの半額程度の単価の時代もあった)ことに加え、環境に優しく、安定的な供給ができるという点がメリットの燃料となっています。そのため、1日中走るタクシーを中心に急速に普及しました。
しかし、近年では、LPGとガソリンの価格差が縮まり、クルマそのものの燃費も良くなるなど、さまざまな影響によりLPGスタンドが減少傾向にあります。
そのため、従来のメリットを感じられなくなってきたことからLPG車およびLPGスタンドが減ってきていると考えられます。
現在多く走っているJPN TAXIはLPGハイブリッド車
かつてクラウンコンフォートがメインだったタクシーは、クラウンコンフォートの生産終了とともにその台数が減少し、次世代のタクシー車両JPN TAXIに入れ替わっています。

このJPN TAXIは、LPG車であると同時にハイブリッド車でもあります。一般的なトヨタのハイブリッド車の使用燃料はレギュラーガソリンですが、JPN TAXIの使用燃料はLPGです。
スペックは、1.5リッター直列4気筒で、燃費はWLTCモードで16.8km/Lとなっています。同じクラスのシエンタは、1.5リッター直列3気筒ガソリンハイブリッドで、WLTCモード燃費が28.2~28.8km/Lです。

燃費性能を比較すると、ガソリンハイブリッド車のほうがLPGハイブリッド車よりも約1.7倍程度燃費がよいことがわかります。また、ガソリン単価が170円、LPG単価が100円とした場合、1000km走行するのにかかる燃料代は、ガソリンハイブリッド車が6028円、LPGハイブリッド車が5952円、差額はわずか76円です。
このことからも、燃費性能がよいガソリンハイブリッド車とLPGハイブリッド車では、走行した際にかかるコストに大きな差はないといえるでしょう。このようなクルマそのものの技術の進歩や走行時のコストの差が縮まってきていることもLPGスタンド減少に拍車をかけているといえるでしょう。
LPGへの注目が集まるかどうかが鍵
今後はLPG以外の燃料や動力機にシフトする可能性が高いかも
自動車業界が大きく変化している現代では、ハイブリッド車、ガソリン車、ディーゼル車、電気自動車、燃料電池車など、さまざまな動力機があり、それぞれのメリットやデメリットが話題となります。しかし、LPG車やLPGハイブリッド車の話題はほとんどありません。

このようなことから、タクシー業界でもLPG以外の燃料や原動機が今後の主力になる可能性が高いといえるでしょう。LPGにはLPGならではのメリットがあったのの、いまではそのメリットをほとんど感じられなくなり、そのほかの燃料や原動機がシェアを拡大していることも相まって、今後LPGが注目を浴びない限り、LPG車およびLPGスタンドの減少は続き、タクシーの燃料や原動機が新たなものに入れ替わってしまうことがあるかもしれません。