R32スカイラインGT-Rのパネルを再生産!
日産が2019年10月に発表したのが、「対向式ダイレス成形」というボディパネルの生産方法。金型が不要で少量生産が可能というのが特徴で、旧車のボディパネル向きとされる技術だ。今回の技術でR32のGT-Rのパネルを再生産するとして、一部マニアから大きな注目を浴びた。
発表時はその製法に注目した記事が多かったが、いま改めて旧車業界の事情とともにポイントを整理してみた。まず旧車におけるボディパネルだが、これは製造中止になるのが早いパーツだ。保管に手間と場所がかかるというのが大きな理由で、金型は会社の財産として税金がかかるという事情もある。それゆえ、ボディパネルは内装パーツやゴム類とともに、旧車維持に困るパーツのひとつだ。あっても、オークションなどで高額取引されていたりする。
また、職人さんが叩いて作ればいいのではという声もあるが、いまや叩ける板金職人は絶滅寸前。もしいたとしても、時間がかかり、それは費用に跳ね返ってくる。プレミアムなビンテージカーならそれでもいいだろうが、いわゆる旧車趣味の車種だとかなりきつい。
対向式ダイレス成形はふたつの機械で鉄板を押して形を作る
次にもし金型を作って生産するとなるとどうか。型代だけで数千万円だし、それを打ち抜くプレス機の使用料や材料代もかかる。金型を用意できれば何千枚もパネルが作れるが、欲しいのは数枚というだけに、話が大きすぎて意味がない。
という状況を踏まえると、日産の金型不要の「対向式ダイレス成形」というのは画期的。

費用としては、データ製作代(ない場合は現物スキャン可能)や治具で最大で100万円。あとは材料費とマシンの使用料となる。生産能力はゆっくりと押して作るので、生産するのにかなり時間がかかり、月産100枚程度というが、これも旧車なら問題ないだろう。もちろん生産能力の低さは価格に反映されるが、100枚作ったとしても、1枚数万円で販売もできそうな感じだ。