販売台数は1カ月平均で300台以下まで落ち込んでいる

日本では全長を4m前後に抑えた運転のしやすいコンパクトカーの人気が高い。最近ではSUVの売れ行きも伸びてきた。



この相乗効果により、今の国内市場では、コンパクトサイズのSUVが注目されている。

2020年1月には、トヨタ・ライズが国内の小型/普通車で販売ナンバーワンになった。ホンダ・ヴェゼルやトヨタC-HRもコンパクトなSUVで、堅調に売れている。



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そしてこのタイプの主力車種として、日産ジュークも忘れられない存在だ。フロントマスクを個性的なデザインに仕上げ、運転感覚も含めてスポーティな雰囲気を感じる。2010年に発売され、2011~2012年には、1か月平均で3000台近くを登録した。



ところがこの後はあまり改良を受けず、2019年の登録台数は、1カ月平均で300台以下まで落ち込んでいる。発売当初の10%前後だ。しかも2019年9月に、ジュークは欧州でフルモデルチェンジを行ったが、日本ではこの後も従来型(欧州では旧型)を売り続けている。



【ジュークもあるのになぜキックスなのか】日産が欧州で販売している「新型ジューク」を日本に導入しないワケ



そこで2020年2月下旬、日産の販売店でジュークの近況を尋ねると、以下のような返答であった。「ジュークの生産は今では終了しています。在庫車を売っている状態です。欧州では新型ジュークが登場しましたが、日本で売る話は聞いておりません。

ジュークの代わりに、新たにコンパクトSUVのキックスを導入します。ただしキックスの国内発売時期は、現時点では分かりません。早くても2020年5月以降でしょう。人気の高かったコンパクトカーのキューブも終了しており、今の日産では、売れる車種が限られています」と言う。



なぜ日本ではジュークのフルモデルチェンジを見送り、キックスを発売するのか。この点について日産の関係者に尋ねた。



キックスのほうが国内のニーズに合うという判断を下した!

「新型ジュークでは、エンジンやトランスミッションが従来型から大幅に変更され、日本国内のニーズに合わなくなりました。そこで国内で売るコンパクトSUVをキックスに変更するのです」とのことだ。



欧州で売られる新型ジュークのエンジンは、直列3気筒1リッターターボで、トランスミッションは6速MTと7速ATになる。後者は2組のクラッチを使う有段式ATだ。



これに比べるとキックスは、同じコンパクトサイズのSUVでありながら、北米仕様には直列4気筒1.6リッターNAエンジンを搭載している。トランスミッションもCVT(無段変速AT)を選べる。

日本のユーザーには、直列3気筒1リッターターボに2組のクラッチを備えた有段ATを組み合わせるジュークより、キックスのほうが馴染みやすいと判断された。



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つまり国内で売りやすいとされるコンパクトSUVも、メーカーの商品開発は海外優先だ。そのために新型ジュークも、欧州指向を強めて日本を離れ、国内ではキックスを扱うことになった。海外向けに開発された商品のなかから、その都度、日本でも売れそうな車種を割り当てている。



状況はほかのメーカーも同様だ。たとえば新型ホンダ・アコードは、日本では2020年2月21日に発売されたが、北米では2017年7月にフルモデルチェンジされていた。北米では2年半も前に導入されたのだから、日本で発売しても、もはや新型車とは呼べないだろう。



スバル・レガシィも、北米では2019年7月に新型へフルモデルチェンジしながら、日本では今でも旧型を売っている。



【ジュークもあるのになぜキックスなのか】日産が欧州で販売している「新型ジューク」を日本に導入しないワケ



今はどの車種でも、新型になると、衝突安全性や安全装備が進化する。従って日本で従来型を売り続ければ、日本のユーザーには、海外よりも危険な商品を提供することになってしまう。そこを各メーカーともに、気にしていない様子だ。ジューク、アコード、レガシィには、日本車メーカーの日本のユーザーに対する姿勢が、とてもわかりやすく表現されている。

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