指定工場は認証工場の上位に当たる
あなたは愛車のメンテナンスを、どのようにしているだろうか。懇意にしている整備工場、部品量販店のメンテナンス部門、クルマを購入した自動車ディーラー、はたまたDIYで行なっているという強者もいるだろう。
DIYは別として、自動車の分解整備をするには、地方運輸局長の「認証」を受けなければならないことが、道路運送車両法によって定められている。
ちなみに、道路運送車両法第49条第2項(同施行規則第3条)によると、「分解整備」とはいうのは、『原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、連結装置を取り外して行う自動車の整備又は改造』のことを指す。オイル交換程度であれば認証を受けていない工場でも作業可能だが、車検整備レベルになると最低でも認証工場である必要がある。
そんな認証工場のなかで、設備、技術、管理組織等について一定の基準に適合している工場に対して、申請により地方運輸局長が指定自動車整備事業の指定をする。この「指定」を受けた工場が「指定工場」と呼ばれている。指定工場になるには認証工場である必要があり、つまりは上位的な工場といえる。

できる作業については変わらないが、もっとも大きな違いは車検の対応だ。認証工場で整備した場合、車検は自動車検査登録事務所などの車検場に持ち込んで検査を受ける必要がある。しかし、指定工場であれば同工場の設備を使って保安基準を満たしているかを確認して「保安基準適合証」を交付することができる。つまり、車検場への持ち込みを省くことができるのだ。そうした特徴から、指定工場のことを「民間車検場」や「民間車検工場」と呼ぶこともある。

では、ユーザーはメンテナンスや車検整備において、認証工場と指定工場のどちらを選ぶといいのだろうか?
車検ステッカーの交付タイミング以外に大きな差はない
結論からいえば、基本的にはどちらでも変わらない。
あえて両者の違いを挙げるならば、車検を通したときに認証工場では車検場に持ち込んでいるのですぐに新しい車検ステッカー(検査標章)が貼られているが、指定工場の場合は「保安基準適合標章」といって車検シールが届くまでのつなぎとなる小さな紙を貼っているくらいだろう。

つまり、ユーザーとしては作業内容の説明がわかりやすいだとか、窓口の人が親切といった印象や、納得のできる整備料金を提示してくれる工場を選べばいい。認証工場だからといって整備能力が劣っているというわけではない。いずれにしても分解整備を業務として請け負うのではれば認証工場の必要がある。
余談だが、認証工場や指定工場には屋内作業場が必須で、その間口や奥行にも基準がある。たとえば、間口3.5m・奥行き5mでは軽自動車に限定される。一方で大型自動車の認証工場になろうとすると間口5m以上・奥行き13m以上が必要だったりするのだ。

ちなみに、冒頭DIYでメンテナンスを行なう場合という話を書いたが、自分のクルマを自分で整備するのであれば、どんな内容の整備であっても違法ではない。他人のクルマを分解整備するには認証を受けていないと違法になるが、DIYであればエンジンを載せ帰るほどの重整備であっても問題ないのだ。
ただし、素人がイジり壊した状態で整備工場に泣きついても当然ながらいい顔はされない。