パワーバックドア付きのミニバンは数少ない
世界的にクルマの電動化(HV、PHV、EV)が急速に進んでいるが、それ以前に電動化が推し進められてきたのが、ドア部分の電動化である。
ミニバンのスライドドアはもちろん、高級輸入ステーションワゴンやSUVのバックドアも、スイッチひとつで開閉できるようになっている。リモコン操作や足をセンサーにかざす操作でも全自動開閉が可能で、傘をさしていたり、両手に荷物を持っていたり、子供を抱いている際には便利この上なし。
ただ、ミニバンのパワースライドドア、ステーションワゴンやSUVのパワーバックドア機能が普及しているのに、なぜ、ほとんどのミニバンのバックドアにパワーバックドア機能が付いていないのか? という疑問が残る。パワーバックドアが標準、またはオプションで用意されている国産ミニバンは、トヨタ・アルファード&ヴェルファイア、日産エルグランド、三菱デリカD:5ぐらいなのである。

その理由は、大きく分けて四つありそうだ。ひとつ目は、ステーションワゴンやSUVのバックドアに比べ、ミニバン、とくにボックスタイプのバックドアは巨大で重く、モーターの負担が大きすぎ、また、全自動化するにはそもそも重い車重が、パワー化のための補器によってさらに、さらに重くなってしまうからだ。結果、多くのミニバンは、代わりにダンパーを用いることで、操作力を軽減させ、対応しているというわけだ。

パワーバックドアのコストやバッテリーの負担も問題だ
二つ目は、これもまたボックス型ミニバンにかかわることだが、バックドアを全開にすると、車体後方に1m前後のスペースが必要なぐらい、大きく張り出してしまう(ステップワゴンのわくわくゲートのサブドアを除く)。万一、車体後方にスペースがない場所でうっかりスイッチ/リモコン操作をすると、壁や他車にぶつかってしまう可能性があるわけだ(ステーションワゴンやSUVのバックドアは全開にしても車体後部の張り出し量はそこまで大きくない)。センサーで障害物、挟み込みを検知、作動ストップ……という制御もあるが、Mクラス以下のファミリーユースのミニバンでは、コスト面で現実的ではないだろう。

三つ目はやはりパワーバックドアそのもののコスト。アルファード&ヴェルファイアやエルグランドのクラスになれば、そもそも車両価格はそれなりに高価。パワーバックドアを付けても、それほど気にならない価格アップで済む。

そして、運転席側ドア、リヤスライドドアに比べ、バックドアを開け閉めする機会が圧倒的に少ない”使用頻度”の大小も、採用されにくい理由として挙げられるだろう(パワーバックドアは、たしかにあれば開閉操作が楽になり便利だが、ミニバンの場合、ステーションワゴンやSUVと違い、大開口の両側スライドドアからでも、大小の荷物を出し入れしやすい??)。さらに、パワーバックドアが故障すれば、多くの場合、モーター交換となるのだが、内張をはがすなど、工賃がけっこうかさむと聞いているから、その点でも、各自動車メーカーの高級・高額フラッグシップミニバンでない限り、装備しにくい理由だと推測できる。

最後の四つ目は、両側スライドドア+バックドアの両方をパワー化すると、エンジンオフでも作動してしまうため、バッテリーの負担が大きくなりすぎる心配もありそうだ(ハイエンドな高級・高額ミニバンは、そのあたりもコストをかけて、しっかり対策済みのはず)……。