衝突安全と視界の確保の両立が重要
ピラーとは、支柱のことだ。クルマを外から見たときには窓枠のように見えるが、ピラーの役目の基は屋根を支えるもので、車体の構造としてドアの取り付けにも使われている。
車体の前から、Aピラー、Bピラー、Cピラーとアルファベット順にならび、ステーションワゴンやミニバンなどでは、リヤゲートの両脇に位置するDピラーもある。
いまのクルマはほとんどがモノコックボディと呼ばれる車体構造を持ち、ピラーもそうした構造部位としての役目を果たす。そして、屋根や窓を支え、ドアを取り付ける役目のほかに、ピラーには衝突安全の役目もある。
Aピラーは、前面衝突でフロントバンパーに受けた衝撃を、床下だけでなく屋根側へも逃がす役目を担っている。強い衝撃を多方向へ逃がすことにより、客室の空間を確保し、人命を守っているのだ。したがって、次第にAピラーを太くする傾向となった。
一方、それにより運転者の前方視界が悪化し、Aピラーの形状を工夫するようになった。それでも衝突安全基準が年を追うごとに高まり、前方視界との両立が難しくなっている。ホンダの新型フィットは、フロントウィンドウを保持する支柱を専用に設け、衝撃を分散するAピラーと機能を分けて、衝突安全と前方視界の確保を両立させた。

Bピラーとスライドドアの前端部を兼用するクルマも!
Bピラーは、前側のドアの開閉の鍵と、後ろのドアのヒンジを取り付ける役目がある。同時にまた、側面衝突に対して衝撃を分散させることを、Aピラーと同じように求められている。これにより、Bピラーはドアの取り付けが主な役目だった時代に比べ、かなり太く頑丈になった。
またBピラーは、車体の中央に位置するため、モノコックボディ全体の剛性を確保する要でもある。オープンカーでは、Bピラーがドアの鍵や取り付けだけで、屋根を支える役目がないため、車体剛性は低くなりがちになり、操縦安定性に劣る場合がある。そこでロールバーのようにBピラーだけを残し、その上から幌を掛けるようにあいたオープンカーもあった。初代や3代目のVWゴルフのカブリオなどがその一例だ。

ダイハツの軽自動車であるタントは、ミラクルオープンドア(前後ドアを開けると大きな開口部になる)を実現するため、後ろのスライドドアの前端部を、Bピラーと兼用する車体構造を採用している。

CピラーやDピラーは、リヤウィンドウやリヤハッチバックなどにつながる支柱だ。この部分は、Bピラーと同様に車体剛性の確保にも関係し、強さが求められる。たとえば、CピラーやDピラーの面を大きくすれば、それだけ剛性は高まるが、一方で、斜め後ろの視界が悪化する。駐車などで後退する際の安全確認に支障を生じる場合もあるので、単純に面積を大きくすることはできない。
またCピラーやDピラーの大きさは、車外を目視できるかできないかだけでなく、斜め後方の後続車などに対する気配にも影響を与えると考えられる。たとえばマツダ3のハッチバック車は、リヤウィンドウがCピラー側へ回り込まない造形で、Cピラーが大きな面積を持つ。

Cピラーは、外観の造形の美しさや、後席に座った人に安心をもたらす室内空間を生む役目も果たすが、運転者にとって不安なく、安全に走らせられる造形であることが重要だ。