高速道路への合流エリアなどで役立つ指標となる

欧州車のカタログを見ていると0~100km/h加速タイムなる数値が記載されていることが多い。これは停止状態からフル加速して時速100kmに到達するまでにかかる時間を表している。つまり、このゼロ発進加速タイムが小さいほど強力な発進加速性能を持たされているということになる。

日本ではゼロヨン(0~400mまでの通過タイム)加速タイムがよく使われたが、カタログにそれがうたわれることはほとんどなく、我々メディアが独自にテストして計測することのほうが多かった。



スーパーカーが記載する0-100km/h加速タイム! 2〜3...の画像はこちら >>



だが実際には400mもの長い区間を全開で加速し続けるようなケースは公道にはなく、サーキットで計測するにしても場所は限られる。かつては谷田部自動車試験場の総合試験路がステージとして活用されたが、今はその場所もない。ゼロヨンはアメリカで盛んなドラッグレースがSS1/4マイルの発進加速で競われていることが起源と考えられるが、国内ではドラッグレースも限定的にしか行われなくなっている。



そこでより実用性の高い性能指標として0~100km/h加速が用いられるようになってきていると言えるのだ。0~100km/h加速性能が良ければ、高速道路への合流エリアなどで余裕をもった加速ができる。加速エリアの短い場所でも役立つ性能と言える。



スーパーカーが記載する0-100km/h加速タイム! 2〜3秒台ってどのぐらい「凄い世界」か体験から語る



その計測方法はプロドライバーが発進操作を行い、動き始めから100km/h到達までの時間を計測器で計測する。3ペダルのマニュアルトランスミッション車だと運転テクニックで差がでやすいが、2ペダル車ならブレーキからアクセルに踏み替えて全開にするだけ。素人でも引き出しやすい。



近年、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)搭載車などのスポーツカーにはローンチコントロールシステム(最適発進制御)を装備しているものもあり、ブレーキを強く踏み込みながらアクセル全開でエンジン回転を最適値に高め、ブレーキをリリースすると自動でクラッチミートもシフトアップもしてくれる機能を備えたものも増えた。誰でもカタログ値の最高パフォーマンスが発揮でき、クラッチに与えるダメージを最小減にすることができるのはありがたい。



一般的には5~6秒の加速タイムで相当な速さだと言える

このローンチコントロールを備え、0~100km/hで驚異的なタイムを引き出してカタログでアピールしたのは日産R35GT-Rだった。2012年当時、すでにローンチコントロール使用で0~100km/h加速を2.8秒と発表していた。一般的には5~6秒の加速タイムなら相当な速さ。2.8秒というのは驚異的なタイムといえる。



スーパーカーが記載する0-100km/h加速タイム! 2〜3秒台ってどのぐらい「凄い世界」か体験から語る



実際に菅生サーキットで行われた試乗会においてローンチコントロールを作動させて試してみたのだが、まるで後ろから蹴飛ばされたような衝撃を受け、身構えていても身体が後方にのけ反った。うっかりしていたらステアリングから手を離してしまいそうなほどの衝撃だった。とても一般道でそれを試そうという気になれなかったが、後にテスラ・モデルSはこのGT-Rを上回る0~100km/h加速タイム2.5秒をカタログでうたっている。EVセダンで2ペダル。だれでも、どこでもアクセルを踏み込むだけでこの加速が引き出せてしまうのだ。



スーパーカーが記載する0-100km/h加速タイム! 2〜3秒台ってどのぐらい「凄い世界」か体験から語る



ちなみに計算してみると0~100km/hを2.5秒で加速できると、その加速Gは1.13Gで1Gを超える。走行距離はわずか34.7mほどだ。バッテリー搭載でタイヤに掛かる荷重が大きく、4輪駆動のトラクション性能があるので引き出せるのだろう。



いくら馬力を上げても、パワーを伝えるタイヤが空転してしまったらタイムは引き出せない。そういう意味ではトラクションコントロールが機能して出力をうまく制御できている証でもある。加速Gをモニターし常に細かくフィードバックして制御することが重要なのだ。1000馬力を誇るブガッティ・ヴェイロンでも2.5秒を破れていないことでもわかるだろう。



ダウンフォースやタイヤの粘着力など特別なグリップが得られないと1G以上のGは引き出せないのが物理の法則だ。

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