クルマの品質としては高かったが人気が出なかった悲しいモデルも

誕生するクルマがあれば、消えゆくクルマもある。EJ20エンジンを搭載したスバルWRX STIはファイナルエディションという限定車を最後に発売し、倍率23倍強の超大人気を博すなど、多くのクルマ好きから惜しまれて退役したが、それは極めて稀なケースと言える。販売が終了するのは不人気が原因なので、あまり惜しまれることもなく、ひっそりと消えていくクルマの方がはるかに多いものだ。

プロ野球選手でも、派手な引退試合をしてもらえるのはごく限られた選手のみで、大半の選手はコアなファン以外からはほとんど注目されることなく引退する。



ここでは、比較的最近になってひっそりと消えていった悲しいクルマを8台ピックアップ。惜しむべき魅力や個性を思い出しながら、その存在を偲んでみたい。



1)トヨタiQ

欧州市場のAセグメント車として入魂開発されただけあって、ボディ剛性の高さは日本メーカーのコンパクトカーの基準を超えたレベルに高められたなど、かなりの入魂設計だった。2008年デビューのマイクロカーながらMTは6速で、その操作フィールは欧州のコンパクトカー並みかそれ以上に秀逸。



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運動性能や衝突安全性も当時の国産小型車としては群を抜いており、自動車評論家のこもだきよしさんが娘さん用に購入するなど、玄人筋からの評価は高かった。残念ながら日本の小型車市場は背高トール系が全盛時代を迎え、実質ふたり乗りのiQは受け入れられなかったが、欧州市場では地味に売れ続け、日本でも意外と延命して2016年まで販売された。



2)日産キューブ

2代目モデルからコンセプトを変更し、大胆で個性的な内外装デザインを採用したり、室内の装備は若者ユーザーの利便性を徹底追求して開発するなど、旧来の日本のコンパクトカーにはなかった遊び心が満載で、踏み込んだ商品性の高さを誇った。トールワゴン全盛時代の波にも乗り、2代目モデルのキープコンセプト版として誕生した3代目も一定以上の人気を博し続ける。



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2008年のデビュー以来、内外装のリファインを繰り返すだけで12年もの長きに渡り販売されたが、最後まで古臭さをあまり感じさせることがなかったなど、デザイン性の高さは再評価に値する。元AUTECHレースクイーンとして知られる人気モデル、美波千夏さんも長らく愛車として乗り続けたなど、女性からの支持も高かった。



3)日産ジューク

エッジの効いた先鋭的なデザインや、軽快で硬質な走りでデビュー当初は高い人気を博したSUV。いわゆるゆとり世代の、さらに次世代にあたる「ゆとり第二世代」と呼ばれた90年代生まれの若者からも注目されるなど、若者のクルマ離れを多少なりとも食い止める功績を残したと言える。



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物心ついたときからミニバンに慣れ親しんで育った若者層からも不満の出ない居住性や、高すぎず、低すぎない車高による絶妙な乗降性の良さなど、地味な美点は枚挙にいとまがない。SUVとコンパクトカーの中間的な車格で、高性能版のニスモバージョンはクルマ好き層からも高い評価を受けた。

デビューから10年も経ったとは思えないほど、今見てもデザイン性は秀逸。2020年夏に販売が終了したが、海外ではキープコンセプトの2代目モデルが販売されている。



4)ホンダ・グレイス

フィットベースの小型セダンで、内外装の質感や実用性、走りや燃費性能など、フィットの美点を受け継ぐことから総合力の高さが魅力。小型セダンとしてはスタイリッシュなフォルムを与えられ、地味ながら細部のデザインには作り手の強いこだわりが見られた。



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中高年ユーザーを中心に小型セダン好きから静かに注目されていたが、日本人のセダン離れに争うことはできず、今年の夏に販売終了。グレイスの消滅により、現行型国産車の5ナンバーボディのセダンはトヨタのプレミオ/アリオンのみとなった。これもかなりの長寿モデルで次期型の話は聞こえてこないことから、国産5ナンバーセダンは絶滅寸前となっている。



魅力や個性を押し出せずにひっそりと消えてしまったモデルも存在

5)ホンダ・ジェイド

ホンダが昔から得意とするロールーフの小型ワゴンも、ついに系譜が途絶えた。ストリームや昔のオデッセイほどのインパクトの強さはなかったものの、走りの質の高さでは玄人筋からの評価が高かった小型ワゴンで、ハイブリッドや運転支援システムのHonda SENSINGといった今の時代に求められる装備や性能もしっかり備えるなど、地味ながら総合力の高い力作と言えたが、突出した個性には乏しく完全に埋没。ホンダのラインアップ内でも、より小型のフィットやN-BOX、SUVのヴェゼルなどにはない魅力や個性を押し出せなかった。



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6)マツダ・ベリーサ

2代目デミオをベースに外装デザインの個性を強め、内装の上質化をはかったスペシャリティ要素の高いコンパクトカー。モデルチェンジを繰り返すデミオを横目に内外装のリファインのみで延命をはかったが、意外に一定以上の販売台数をキープ。気がつけば12年もの長きに渡り販売され続けたロングセラー車となった。軽くてシンプルなメカを搭載するという、旧世代のコンパクトカーならではの魅力は時代を経てもあまり色褪せず、外装デザインに力を入れて開発したこともあって、時を経るごとにより個性を強めた結果、思わぬご長寿モデルとなった。



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7)スズキ・バレーノ

インドでトップシェアを誇るスズキのインド製世界グローバルモデル。プラットフォームやパワートレインはスズキの最先端技術が盛り込まれており、総合的な性能は意外とハイレベルだった。品質面でインド生産車特有のネガがあったわけでもない。世界グローバル販売車ということでボディの全幅がやや広く、日本のコンパクトカーとしては比較的ワイドなトレッド幅がもたらすコーナリング性能の高さなど、同門のスイフトにはない魅力も備えていた。



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残念ながら日本市場ではスイフトを差し置いてまでバレーノを選ぶユーザーはほとんどいなかったため販売を終了したが、「キザシ」と並ぶレアな存在として、一部のクルマ好きは街で見かけると強く反応する。



8)スバル・ディアスワゴン

名車の誉れが高い旧サンバー時代に生まれたSUBARUのワンボックス軽自動車の上質モデル。SUBARUが軽自動車の自社開発・自社生産をやめてからはダイハツ・アトレーワゴンのOEM車として車名は存続したが、ダイハツ・タントのOEM車であるシフォンがあればラインアップ的にはこと足りるため、世間がコロナ危機に見舞われた今年3月にひっそりと消滅。SUBARU製の旧サンバーと異なり、SUBARUファンからあまり愛されることなく役目を終えるという、じつに寂しい幕切れであった。



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