いまだにワンメーター乗車で機嫌を損ねるドライバーがいる!?
“ワンメーター”という言葉は、タクシー業界関係者だけでなく、利用者サイドでも広く知られている“業界用語”のひとつ。そして、「ワンメーターとなる近い場所への移動のための利用だったので、運転士に舌打ちされたり、嫌味を言われた」というのもよく聞く話。
筆者は海外出張先から夜遅く羽田空港に到着する便で帰国した時がある。
羽田空港で客待ちをするタクシーは、事業者によって異なるだろうが、地方から東京に来たひとが利用することも多いので、都内だけでなく隣接県の道路にも明るいベテランだけが客待ちを許されることが多い。羽田空港からなら、都心へ向かうだけでもかなりの料金となる。羽田空港で客待ちする運転士はロング狙いも多いのはわかっていたので筆者は前述したように「短くてすいません」といったのだが、これが運転士の気持ちを逆なでしたようだ。
短い距離でも一度客を乗せてしまうと、羽田空港に戻ってきても再び長い客待ちの列に並ばなければならないのだが、航空会社や空港関係者などが、空港近く(すぐそば)の施設へ行くときには、秘密の暗号があるようで、これをタクシー乗り場に立っている係のひとに告げると、戻ってきても長時間並ばずにお客を乗せることができるようなことを話し、「これからは暗号を使え」と指示された。
ホテルまではワンメータープラスアルファ程度だったのだが、非常に感じが悪かったので、それ以降は原則ホテルのシャトルバスを待つようにして、シャトルバスが運行していない時間帯やあまりに長時間待つようならば、大きなスーツケースを抱えていても、空港まで乗り入れている京浜急行(電車)でホテル最寄り駅まで行き、そこから徒歩でホテルに向かうことにした。
コロナ禍の影響で従来の営業方法が通用しなくなってきた
タクシー運転士ならば、誰でもワンメーターを嫌がるかと思えば、そうでもない。筆者が体験したように、ロングが期待できるタクシー乗り場で客待ちしている運転士は、ワンメーターで嫌味を言ったりすることが多いといえよう。利用する側としては、そのようなことは関係ないので、理不尽な話ともいえるが、嫌な思いをしたくなければワンメーターぐらいの短い利用ならば、道路を流している“流し”のタクシーに乗ったほうが、嫌な思いをする確率はグーンと減るだろう。

街なかを丹念に流す運転士は、利用距離ではなく“利用客のつながり”を重視する傾向がある。お客を降ろした、その瞬間、その場で新しいお客が乗り込んでもらえると、空車で流すことがないので、効率的で理想的な営業と捉えている。
東京23区及び武三地域では、初乗り距離を短くし、初乗り運賃(ワンメーター)を下げて、短い距離でも手軽に利用してもらえるようにしている。近距離移動客を増やすというよりは、ワンメーター以上の利用では、事実上の“値上げ”のようなことにもなりかねないので、導入当初は「お客さん、いままではここまでいくらできていましたが?」と、旧料金から上がっているかどうかを確認する運転士が多かった。
ワンメーター利用客に嫌味を言ったりするのはもちろん許されるべきものではない。ただ、運転士個々で営業スタイルは異なり、運転士すべてがワンメーター利用を嫌がっているわけでもない。「いまは深夜でも1000円程度の利用ばかりが続きます(しかも利用者は減少傾向)。新型コロナウイルス感染拡大以降は、接待は多くの企業などで禁止されていますし、ロングはまず期待できません。深夜にロング客を乗せて最終的に売り上げをよくするというスタイルは通用しなくなってきています。そのような状況を見ると、ワンメーター利用で嫌な顔をされるといったことは、より減少傾向になっていくのではないでしょうか」とは、業界事情通の話だ。