同じ排気量なら4気筒よりもトルクを出しやすく燃費も良い!

読者のなかには、3気筒エンジンに抵抗がある人も少なくないと思う。なにしろ、日本では軽自動車のパワーユニットというイメージが根付いているからだ。



しかし、いまや世界的に1.5リッター以下のダウンサイジングパワーユニットに3気筒エンジンがターボの力を借りるなどして使われることが多くなっている。



たとえば、フォルクスワーゲンのポロやT-CROSS、アウディのQ2、欧州カー・オブ・ザ・イヤー2020、2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーのインポート・カー・オブ・ザ・イヤー受賞のプジョー208もそうだし、日本車でもトヨタ・ライズ、ダイハツ・ロッキー、トヨタ・ヤリスクロスなどの超人気車にも採用されているのである。



3気筒が音も振動も「安っぽい」のは昔の話! 乗れば感動できる...の画像はこちら >>



クルマにあまり詳しくない人なら、上記のクルマが3気筒であることなど知らずに、感じずに乗り続けているだろうし、クルマやエンジンに詳しい人でも、乗ってみれば、3気筒感などほとんど感じず、いや、これはいいエンジンだと思うかもしれない。



そもそも3気筒エンジンは、コンパクトさ(による軽量化)や経済性、そして気筒数が少なければトルクが豊かになるといったメリットの持ち主なのである。もちろん、気筒数が少なければエネルギーロスが低減でき、燃費もよくなる理屈だ。理論上、同じ排気量なら4気筒よりも3気筒のほうがトルクを出しやすく、燃費もいいというわけである。



ただし、ちょっと前の軽自動車の3気筒エンジンのように、振動、振動音が気になるケースもあるにはあるが、そこは最新の自動車技術が見事に克服していたりする(クルマよる)。



というわけで、ある意味、時代のニーズに合致し、経済的で燃費にも優れる3気筒エンジン搭載車のなかでも、アンチ3気筒エンジン派にも薦められる、いい方は悪いが、3気筒感のない3気筒エンジン搭載車を紹介したい。



1)プジョー208

まずは、くどいようですが、欧州カー・オブ・ザ・イヤー2020、2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーのインポート・カー・オブ・ザ・イヤー受賞のプジョー208。エンジンはピュアテックと呼ばれる1.2リッターターボ。プジョーならではの足まわりのしなやかさもさることながら、3気筒を感じさせないスムースさと低中回転域の排気量を感じさせないトルクの豊かさが素晴らしい。



3気筒が音も振動も「安っぽい」のは昔の話! 乗れば感動できる「直3」エンジン車4選+α



結果、飛ばしても気持ちいいし、日常域の走行でもじつに走りやすいのである。しかも、静粛性という意味では、エンジンが静かすぎて、かえってロードノイズが目立ってしまう!! というぐらいに、3気筒でも静かに回るから文句なしである。いま、最良の輸入コンパクトカーといっても過言ではないだろう。



2)フォルクスワーゲンT-CROSS

コンパクトなクロスオーバーモデルを狙っていて、しかし3気筒エンジンに抵抗がある人でも納得できる1台が、フォルクスワーゲンのT-CROSSだろう。ゴルフなどに積まれる1.2~1.4リッター級の4気筒ターボエンジンほどの豊かすぎるトルクはもたないものの、パワー的には想像以上にパワフルで、ほとんどの走行シーンを2500rpm以下でこなしてくれる実力だ。そして静か。



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弱点としては、ほとんどのユーザーがめったに使わない高回転域で3気筒感あるノイズが顔を出し、回してもそれほどのパンチが望めないことぐらいだが、ゆっくりとアクセルを踏むことで低い回転数で発揮されるフォルクスワーゲンユニットらしいトルクが得られるし、登坂路でパワー不足を感じたら、パドルシフトを使えばいいだけのこと。洗練されたエクステリアデザイン、オシャレなインテリアデザインも若々しくて魅力的と思える。



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国産車のなかにも質の良い3気筒エンジンが存在!

3)アウディQ2

同じくコンパクトな輸入クロスオーバーモデルで、3気筒エンジンを積んでいながら、上質さを極めた走行性能を発揮してくれるのが、アウディQ2だろう。なんと、エンジンはあのプレミアムブランドのアウディにして1リッターターボ。116馬力、20.4kg-mというスペックを見ても分かるように、トルクはNAエンジンの2リッターに匹敵。



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走らせても、7速のデュアルクラッチトランスミッションのSトロニックが素晴らしい仕事をしてくれて、ほかのアウディ4気筒モデルに遜色ない、滑らかで静かなエンジンフィールを堪能できるのだ。もちろん、乗り心地や静粛性に関しても、プレミアムブランドのアウディ基準。2WDしか選べないのは、T-CROSS同様だ。女性ユーザーにもぴったりな、都会で魅力を発散するファッショナブルでもある1台といっていい。



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4)トヨタ・ヤリスクロス

では、国産車はどうだろう。まずは売れに売れているヤリスシリーズのクロスオーバーモデルであるヤリスクロスだ。ヤリスが機械式パーキングブレーキのままなのに対して、こちらは電子パーキングブレーキを採用し、オートブレーキホールド機能やACCの停止保持機能まで備わるから、断然便利。



パワーユニットは、ヤリス同様、3気筒の1.5リッターガソリンエンジン(120馬力、14.8kg-m、WLTCモード最高燃費20.2km/L)、およびEVモード付の1.5リッターエンジン+2モーターのHV(91馬力、12.2kg-m+フロントモーター80馬力、14.4kg-m、リヤモーター5.3馬力、5.3kg-m、WLTCモード最高燃費30.8km/L)の2タイプ+CVT。ヴェゼルHVのWLTCモード最高燃費が21.0km/Lだから、燃費性能では圧勝といっていいだろう。



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ただし、3気筒エンジンを搭載するヤリスクロスで3気筒感を感じにくいグレードは、HVの2WDに尽きる。であれば、出足のEV走行によるスムースさはもちろん、モーターアシストによるトルキーな動力性能の余裕、大径18インチタイヤを履きながら、HVの4WDとは重量増がもたらすガソリン車とは別格の角が丸められた快適な乗り心地こそ同質ながら、2WDになるといきなりより静かでHV感が強くなり、意外なことに、ガソリン車やHVの4WDとは違って、エンジンを高回転まで回しても、それほどうるささと3気筒らしさを感じにくくなるのである。約120km/hまで可能だというEV走行にしても、首都高速での80km/h巡航でさえねばり強いEV=モーター走行を確認。市街地ではさらにEV走行の機会が増えるのだから、いかにもHVに乗っている感覚が強まるというわけだ。



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5)軽自動車

最後に、軽自動車についても触れたい。最新の3気筒エンジンを積む軽自動車は、エンジン本体のつくり込み、吸音、遮音性能の追求、各種制御によって、出来のいいエンジンは、低中回転域においては、3気筒感をかなりのレベルで消し去ることができている。街乗りレベルでは、もはや軽自動車らしからぬ上質な走行フィールを味わせてくれるクルマもあるほどだ(とくにホンダスズキの最新モデル)。



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が、最近、感動したのが、タイムレスなホンダの新型N-ONE  RSに新設定された、待望のターボエンジン×6速MTモデル。とにかく、CVT車と変わらないエンジンのはずなのに(こっそり何かやっているのかもしれない)、電動ウェイストゲートバルブ採用でカミソリ的なレスポンスを示し、一気に高回転までスムースに吹き上がるレーシーなエンジンフィールがたまらない。3気筒、4気筒……という以前に、気持ちよすぎる(3気筒)スポーツユニットなのである。



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クルマの性能、エンジンフィールの感じ方は人それぞれだと思うけれど、1.5リッター以下のクルマで、「3気筒エンジンなど絶対に嫌」なんていっていたら、時代に取り残されるかもしれない。3気筒食わず嫌いなら、ぜひ、上記のクルマ(ヤリスクロスのみHVの2WD限定/個人の感想ですけど)を試乗してみてほしい。いまの3気筒エンジンって、こんなにいいの!! と思えるはずである。

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