アイドリングストップ車はセルモーターの消費電力が大きい
排出ガスに含まれる二酸化炭素の削減が、いまや世界中の自動車メーカーの大命題となっている。こうした二酸化炭素削減策のひとつとして広く普及したのが「アイドリングストップ」のシステムだ。車両が停止するたびエンジンの運転(アイドリング)を止めれば、その間の排出ガスをゼロにでき、当然ながら二酸化炭素もゼロにできるという考え方だ。
しかし、アイドリングストップ車は、車両が止まるたびにエンジンを再始動させなければならない。これがけっこうやっかいな問題で、エンジンを始動させるセルモーターの消費電力が相当に大きいのだ。
一般的な例となるが、セルモーターを回す電流量は、平均で120A程度、瞬間最大時には300A前後が要求されるからだ。たとえばエアコンのブロワファンやヘッドライトなど、他の電装品がおしなべて10Aに満たない電流量であることを考えれば、セルモーターの消費電流がケタ外れで大きいことが分かる。
問題となるのは、セルモーターを回す電力源だ。現在の自動車は、鉛と希硫酸の化学反応による鉛酸電池、つまりバッテリー(乗用車は12V規格がほとんど)を電力源として使っているが、頻繁な大電力の取り出し、つまりセルモーターの多数回使用は、バッテリーに対して大きな負荷を与えることになる。
アイドリングストップ車のバッテリーの価格は通常の約2倍
アイドリングストップ車のバッテリーが、専用設定となっているのはこのためで、瞬間的な大電流の取り出しとその回復力(充電効率、クイックチャージ性能)に対策が施された強化型が使われている。エンジン始動でバッテリーから大きな電力を取り出しても、短時間で元の状態に回復できる性能が与えられている。
ただし、その分だけ高価な設定となり、従来型バッテリーの約2倍の価格で流通しているようだ。
では、このアイドリングストップ車に通常のバッテリーを使ったらどうなるだろうか。頻繁なセルモーターの使用に対し、バッテリーの充電能力が追い付かず、いわゆるバッテリー上がりの状態に陥ることになる。アイドリングストップを繰り返すうち、セルモーターを回せなくなってしまうのだ。

ちなみにバッテリーに関して言えば、ハイブリッド車は動力用モーターの電源として大容量のリチウムイオン電池やニッケル水素電池(駆動用バッテリー)が使われているが、ハイブリッドシステムを起動するため、やはり従来通りの鉛酸電池(補機バッテリー)も使われている。