残価設定ローンでノアヴォクとほぼ同じ支払額で乗れる
アルファードの爆売れがとまらない。自販連(日本自動車販売協会連合会)の統計をもとに、2020年9月から2021年2月までの直近半年における累計販売台数は、5万8718となり、月販平均台数は約9786台となった。2021年1月と2月の登録車のみでの単月通称名(車名別)販売ランキングでアルファードより売れているのが、ヤリスシリーズ(ヤリスクロス含む)とルーミーだけというのは、ある意味異常事態といってもいい。
なぜここまで売れるのか? ということについては、筆者もたびたび考察してきたが、「なぜここまで売りたいのか?」については、高収益車種でありディーラーやセールスマン個々にとっては台当たり利益がハンバではないというところはわかる。だが業界事情通は、「もっと奥深いものがありそうだ」と、次のように語ってくれた。
アルファードは間もなく改良を行うが、ここ数カ月だけで見ても売れ筋は特別仕様車のS“TYPE GOLD”となっている。この特別仕様車の車両価格は424万円(税込み)。アルファードを購入するひとはローンを利用するケースが圧倒的に多いのだが、5年払いで残価設定ローンを組むと、残価相当分として支払い最終回分として据え置く金額は200万円、つまり5年後の残価率は約50%となっている。5年後の残価率が50%というのは、いまどきの日本車ではかなり高め、据え置き額が高いことにより、月々の支払い額は格下のヴォクシー並みになり、これが人気に拍車をかけている。
ここまでみると、ユーザーメリットばかりが高そうにも見える。しかし「支払い最終回分、つまり据え置いた200万円の精算は当該車の返却、トヨタの新車への乗り換えをすれば、現金での精算は必要ありません。ほかに現金での精算以外では再ローンを組んで乗り続けることもできます。ただ、再ローンは返済期間が2年のみなので、単純に据え置いた200万円を24回に分割すると、1回あたり約8万3000円となります、つまり、月あたりの返済額は8万円をオーバーするものとなるので現実的とはいえません」(前出事情通)。
つまり、支払い最終回の精算について現実的な方法は、車両返却かトヨタの新車へ乗り換えるという2者択一となってしまうのである。ただ、ここで「アルファードは中古車人気もかなり高いので、買い取り専業店へ売却すればいいのではないか」と考えるひともいるだろう。

これだけ販売台数が増えるとリセールバリューが下がるのは必至
これについては、現場のセールスマンが興味深い話をしてくれた。「確かに現状ではアルファードのリセールバリューはかなり高いものとなっております。ただ、2020年9月以降から爆売れ状況が続いています。私の店舗のある地域の道路ではアルファードがN-BOX並みに溢れています。ここまで売れてしまうとリセールバリューのダウンは避けられないですね。3代目プリウスも似たような道を辿りましたが、そのデジャブをいま見ているようです」と語ってくれた。

つまり、現状売れ筋のS“TYPE GOLD”あたりではとくに、5年後の残価率50%は、一般的な中古車市場では今後維持できないだろうと、このセールスマンは語ってくれた。とはいっても、トヨタの残価設定ローンは残価保証型となるので、内外装の状況や走行距離などによる減点での追加払いがあっても、仮に中古車市場の相場が下がったとしても、設定残価は維持されることになる。
ここまで売れると、いままでのリセールバリューを維持するのは難しくなる可能性はかなり高い。そのため、買い取り店への売却で残債整理をすると、足が出るリスクが高まっているともいえる。つまり、乗り換え車種がアルファードとは限らないが、次の乗り換えもトヨタ車へとセールスマンが導きやすい環境が整っているともいえるのである。

市場自体の縮小傾向に歯止めがかからないいまの日本市場では、新たにライバルメーカー車に乗るひとに、自社の新車を買ってもらうことも当然大事だが、現状で抱えている自社客を可能な限り他メーカー車に流れないように囲い込むことのほうが優先度合いは高まってきている。
トヨタがどこまで戦略的にアルファードの爆売れを仕掛けたのかは定かではない。ただ、深読みすると、かなり計画的に進められているのではないかとも考えることができる。