タイヤのグリップが限界に近づいていることを示す音
コーナーに対して「ちょっと速いかな」と思える速度で旋回中に、「キー、キー」とタイヤが悲鳴をあげた経験をお持ちの方も少なからずいることだろう。この、旋回中にタイヤがあげる悲鳴のことをスキール音という。まさにタイヤがあげる悲鳴で、グリップ限界に近づいていることを示す音だ。
タイヤは、一見すると全体がゴム製で、空気を封入する円形の物体としか見えないが、ビード、インナーライナー、カーカス、ベルト、トレッドと内部は受け持つ役割に応じて部位が分けられている。このうち、路面と接する部分がトレッドで、タイヤの基本性能である駆動力、制動力、横力の発生を受け持ち、この部分は複合ゴムが使われていることから、構成材料はトレッドコンパウンドと呼ばれている。このトレッド部は、ベースとなる天然ゴム(NR=ナチュラル・ラバー)や化学合成ゴム(SBR=スチレイン・ブタジエン・ラバー、BR=ポリブタジエン・ラバー)に補強材(カーボンブラック、シリカなど)、硫黄、その他添加剤を加えて作られている。
路面に接するトレッド部は、いわゆるタイヤ性能を左右する大きな要素のひとつで、一般に柔らかい(ソフト)コンパウンドほど路面密着性、追従性は高くなり、ハイグリップタイヤ(スポーツタイヤ)の性格を強めることになる。逆に、温度依存性や耐摩耗性、耐久性を重視すると硬い(ハード)コンパウンドが使われ、グリップ力はある程度のレベルに抑えられ、いわゆるエコタイヤと呼ばれるカテゴリーのタイヤとなる。
スキール音はトレッドコンパウンドの質によって異なる
旋回中、グリップ限界付近になると発生するスキール音は、厳密に言うとトレッドコンパウンドの質によって異なり、発生速度にも違いが生じる特徴がある。当然、ハイグリップタイプのタイヤのほうが発生速度は高く、エコタイヤのほうが発生速度は低いという傾向がある。
ちなみに、スキール音以外にタイヤにかかわる発生音としては、ロードノイズ(路面状態によって発生するノイズ)、パターンノイズ(トレッドパターンが圧縮する空気によって生じる音)、空洞共鳴音(タイヤは気体を密封する筐体であるため太鼓のような反響音が生じる)、ステアリング操作時に発生する高速転舵音(高周波音)などがあり、これらを総合して静粛性に優れるか否か、という評価のしかたがある。

スキール音は、一般公道走行でこれが発生するのは、旋回速度が速いという意味もあるが、それより車両(タイヤ)のグリップ限界付近(不安定な状態)に達していることに注意したい。スキール音が発生したらアクセルの踏みすぎ。アクセルを少しだけ戻してあげよう。