スーパーフォーミュラを「F1に近い」と語るドライバーも
2013年に国内最高峰フォーミュラとして誕生したスーパーフォーミュラにおいて、これまでの歴代チャンピオンのなかに、F1へステップアップしたものはいない。
一方で2021年にF1デビューを果たした日本人ドライバーの角田裕毅がそうであるように、FIA-F2参戦ドライバーの多くが、タイトルを獲得せずとも数レースで優勝し、ランキング上位につけたことでF1参戦のチャンスを掴んでいることから、レースに不案内な人のなかには「日本のレースはレベルが低い」という声もあるが、その指摘は間違いだ。
筆者からすれば、スーパーフォーミュラはFIA-F2に匹敵するカテゴリーで、F1に次ぐレベルにあると思う。
確かにF1直下に位置するFIA-F2はスーパーライセンスの獲得ポイントが多く、レース内容もハイレベルだが、なかにはその技量において首を傾げたくなるドライバーがいることも事実である。対して、スーパーフォーミュラの上位争いのレベルは世界屈指の領域で、F1経験者でさえ、なかなか勝てないのが現状である。
FIA-F2がメカクローム製3400ccV型6気筒ターボエンジンにピレリタイヤ、スーパーフォーミュラがホンダ製もしくはトヨタ製の2000cc直列4気筒ターボにヨコハマタイヤと搭載エンジンおよび使用タイヤは異なるものの、シャシーはともにダラーラ製のワンメイクで、マシンのパフォーマンス的はほぼ同じレベルにあると言われている。実際、FIA-F2を経て、2020年よりスーパーフォーミュラに参戦しているタチアナ・カルデロンは過去にF1のテスト走行を経験しているが、スーパーフォーミュラについて「ダウンフォースが印象的でF1に近い」と語るほどだ。
日本のレースシーンは他の国と比べてもハイレベル
さらに、ドライバーの顔ぶれについても、世界各国のミドルフォーミュラで活躍してきた若手ドライバーを中心に構成されるFIA-F2に対して、スーパーフォーミュラはミドルフォーミュラで活躍してきた若手ドライバーに加えて、前述のとおり、F1やスーパーフォーミュラなど上級フォーミュラの経験の豊富なベテランが集結している。新型コロナウイルスの影響により、外国人ドライバーの参戦が少なくなっているとはいえ、スーパーフォーミュラも充実したラインアップと言えるだろう。
それゆえに、日本人ドライバーとしては、スーパーフォーミュラからF1へステップアップした前例はないが、アンドレ・ロッテラーやストフェル・バンドーン、近年ではピエール・ガスリーやピエトロ・フィッティバルディなど、数多くの外国人ドライバーがスーパーフォーミュラを経てF1へ登り詰めたことも、スーパーフォーミュラのレベルの高さを証明するエピソードだと言っていい。
山本尚貴が初めてスーパーフォーミュラのタイトルを獲得した2013年はホンダがF1に参戦していなかった時期であり、2度目のタイトルを獲得した2018年は29歳とF1に参戦するには年齢を重ねすぎていた。

2015年および2017年と2度にわたってチャンピオン経験を持つ石浦宏明、2016年のチャンピオンである国本雄資にいたっても、彼をサポートしていたトヨタはすでにF1での活動を終えていた。もし、彼らが初めてタイトルを獲得した時期に、彼らをサポートしていたメーカーがF1に参戦していれば、彼ら日本人ドライバーたちもF1へ参戦するチャンスが少なからずあったに違いない。
このようにスーパーフォーミュラは世界的にもレベルの高い上級フォーミュラであり、ミドルフォーミュラのスーパーフォーミュラ・ライツもFIA-F3に引けをとらないシリーズになっている。
GTレースやツーリングカーレースに目を向けても、スーパーGTのように自動車メーカーやタイヤメーカーが競合するカテゴリーは、世界的にも珍しく、GT500クラスはまさに“世界最速のGTカーレース”であり、車種バリエーションの多彩なGT300クラスは“世界最大の激戦区”と言えるだろう。
つまり、日本のレースシーンは他の国と比べても十分にハイレベルで、それゆえに数多くの外国人ドライバーが来日しているのである。