一般的にはひとつかふたつだがトリプルターボエンジンもある

日本には導入されていないが、過給機のターボチャージャーをひとつのエンジンに3つ装備する例は、BMWの直列6気筒ディーゼルエンジンにあるようだが、一般的にはひとつからふたつまでとなるのが大半だ。



BMWの3つのターボチャージャーは、そのうちふたつが小型のタービンを用いて低~中回転域で使う。3つ目はより大きなタービンを備え高回転域で使う。

これにより、ターボエンジンで懸念されるターボラグを抑え、低回転から高回転までの全域でトルクを増大することで、大馬力と運転のしやすさを両立するというわけだ。



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ターボラグとは、運転者がアクセルペダルを踏み込んでもすぐに応答せず、遅れて出力が高まり加速を促す様子をいう。



ターボラグが生じる理由は、ターボチャージャーを機能させるには排出ガスの勢いが必要なためだ。運転者がアクセルペダルを踏み込んだあと、燃料が供給されてエンジンがそれに応じた燃焼をし、排出ガスが増えることではじめてタービンが勢いを増すため、その工程時間の遅れがターボラグとなる。



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これを解消するためには、タービンを小型化すればわずかな排出ガスですぐ効果を発揮しだすわけだが、その一方でエンジン回転数が高くなると排出ガスの量が増え、その増大した排出ガス量にタービンの寸法が応じきれなくなる。要はタービンでこなしきれない排出ガスが生じてしまうのだ。



そこで、大出力を狙うには大きなタービンが必要になる。ところが大きなタービンでは、それが効果を発揮するまでターボラグを生じることになるというわけだ。



ターボ+スーパーチャージャーでターボラグを解消!

運転者がアクセルペダルを操作した際のターボラグの解消法として、タービンに排出ガスを導入するところに弁を設け、これを可動式とすることにより、低回転では排出ガスの通り道を狭くして少ない量でも勢いを速め、回転が高くなっていくに従い弁を開けて、排出ガスの通路を広くすることができる。あるいは、タービンへの排出ガスの通り道をふたつに分け、低回転では片方だけを使い、高回転になったらふたつの通路を両方とも利用する考え方もある。



それ以外に、低回転には機械式のスーパーチャージャーを用い、高回転ではターボチャージャーへ転換する考えもある。スーパーチャージャーは、排出ガスの影響を受けず、エンジン回転数の上下に応じて過給できるからだ。

メルセデス・ベンツの直列6気筒エンジンでは、この発想でスーパーチャージャーとターボチャージャーの両方を備え、数はそれぞれひとつずつだ。さらに、これにモーターを加え、運転者がアクセルペダルを踏みだした瞬間からモーターを働かせ、次いで低~中回転まではスーパーチャージャーを用い、高回転でターボチャージャーへ切り替えるやり方をしている。



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スーパーチャージャーとターボチャージャーの両方を装備する手法は、1981年の日産マーチでも採用され、スーパーターボと呼ばれて販売されたことがある。



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ターボチャージャーには、ターボラグという課題が常に付きまとうため、多気筒エンジンではふたつ利用することが普及した。つまり、半分の気筒数(排気量)に見合ったターボチャージャーの大きさとすることで、少ない排出ガスから高回転での効果までを補い、ターボラグを抑えようというのだ。



また、ターボチャージャーの数を増やせば、エンジンルーム内の置き場も見つけにくくなるので、ふたつが妥当な数といえる。ことにV型エンジンでは、吸排気が左右に分かれるので、偶数での装着が理にかなってくる。



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当然ながら、ターボチャージャーのような補器の数を増やせば原価も高くなる。また、ターボチャージャーを効率よく使うには、インタークーラーも必要になり、エンジンルーム内の場所の確保や原価との兼ね合いを含め、性能向上のために数を増やせばいいということだけでは済まなくなっていくのである。

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