この先味わえなくなる可能性大の珠玉のユニットたち

欧州からは2035年にガソリンエンジン搭載車の新車販売禁止という政策も聞こえてくる今日この頃。内燃機関ファンにとってエンジン車を味わえる時間は思っているよりずっと短いかもしれない。日本でも政府が2050年カーボンニュートラルを目指すなど、エンジンへの逆風が吹いているのは同様で、急激に電動化へ舵を切った欧州の状況は対岸の火事ではない。



過激なまでに出力を上げたエンジンは存在していることが悪といったムードにもなりつつある。ハイパワーエンジンを味わうならば「今しかない」のだ。というわけで、ここでは気筒数・エンジン形式ごに世界最高レベルのユニットを見てみよう。



■3気筒エンジン

まずは3気筒エンジンから。このエンジン形式では直列レイアウトのみとなり、その多くは環境系ユニットとなっている。日本では軽自動車用エンジンのすべてが3気筒であり、欧州でもダウンサイジングターボとして生まれているエンジンが多い。そうした状況の中で、唯一のハイパフォーマンス3気筒といえるのがトヨタGRヤリスの「G16E-GTS」型エンジンだ。



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排気量1.6リッターの直噴ターボで、最高出力は272馬力(200kW)というのは圧倒的で、6速MT&フルタイム4WDだけの設定というのもスパルタンだ。



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■4気筒エンジン

同様にフルタイム4WD専用に生まれたのが最強の2リッターエンジンとして名高いメルセデスA45 AMGなどに搭載されている「M139」型の4気筒ターボである。



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かつて2リッターターボといえば日本車のお家芸でもあったが、Aクラス系の横置きプラットフォーム用に開発されたAMG専用エンジンの最高出力は421馬力(310kW)、最大トルクは500N・mとなる。たしかに、このスペックをFFで受け止めるのはかなりの難題であり、4WD専用に設定されているというのも納得だ。



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■5気筒エンジン

つづいて5気筒エンジンの世界一を見ていこう。といっても、いま量産モデルに5気筒エンジンを載せているのはフォルクスワーゲン・グループのアウディだけという状況。そのなかでもっともハイパフォーマンスなのはアウディRS3に搭載される「DAZ」型2.5リッター5気筒ターボとなる。



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そのスペックは最高出力400馬力(292kW)というもの。

ある意味オンリーワンの存在といえるが、ハイパワーターボながら圧縮比は10.0と高く、熱効率に優れているのは他のエンジンと比べてもアピールできるポイントだ。



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これからのハイパフォーマンスエンジンは6気筒が主流!

■6気筒エンジン

6気筒エンジンについては、3つのタイプ別に世界最高レベルのエンジンを紹介しよう。



まずは、5気筒エンジンにつづいて世界唯一といえる水平対向レイアウトを採用しているのがポルシェで、911と718系に搭載している。そのなかでもっともハイスペックなのが、911ターボSに搭載されている3.8リッターターボ仕様で、最高出力は650馬力(478kW)、最大トルクは800N・mを発生する。



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さて、直列6気筒エンジンといえば“シルキーシックス”と呼ばれることもあるBMWのストレート6が思い浮かぶ人も多いだろう。そして、現在の市販直列6気筒エンジンとして最強といえるのは、M3コンペティションとM4コンペティションが搭載する「S58B30A」型エンジンだ。3リッターターボエンジンの最高出力は510馬力(375kW)、最大トルクは650N・mだ。



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このようにハイパフォーマンスエンジンというと欧州系の独壇場という昨今だが、純粋なV型6気筒エンジンの最高峰といえるのは日産GT-Rニスモの「VR38DETT」で、3.8リッターツインターボの、このエンジンは最高出力600馬力(441kW)、最大トルク652N・mを誇る。



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とはいえ、V6エンジンについては、F1直系の1.6リッターV6ターボを積むというAMG ONEは1000馬力以上とも噂されているし、トヨタがWECマシンのストリート版として開発中のGRスーパースポーツにも2.4リッターV6ターボが搭載されるとアナウンスされている。



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最後のハイパフォーマンスエンジンとして鎬が削られるのが、V6というカテゴリーなのである。



■8気筒エンジン

そして、現時点で激しいトップ争いが繰り広げられれているのがV型8気筒というカテゴリーだ。量産車という意味ではフェラーリF8トリブートの3.9リッターV8ツインターボが発生する720馬力(530kW)がトップといえるが、メルセデスのスペシャルモデルであるAMG GTブラックシリーズが積む4リッターV8ツインターボの「M178」型エンジンは最高出力730馬力を発揮。



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さらにマクラーレンの限定車765LTの4リッターV8ツインターボは名前の通り765馬力(563kW)を発生、最大トルクは800N・mというV8カテゴリー随一のスペックを誇る。



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■10気筒エンジン

自動車用エンジンは多気筒になるとV型レイアウト一択で(航空機であれば星形もあり得るが)、当然ながら偶数で気筒数が増えていくことになる。つまりV8のつぎはV型10気筒エンジンとなる。

ここでトップとなるのはランボルギーニ・ウラカンEVOの5.2リッターV10エンジン。今回紹介するエンジンで唯一の自然吸気だ。その最高出力は640馬力(470kW)で発生回転が8000rpmというも、ランボルギーニらしい非日常なスペックだ。



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とはいえ市販V10エンジンとして遡ると、2017年まで生産されていたダッジ・バイパーの8.4リッターV10エンジンも忘れることはできない。そのスペックはハイパワー仕様で654馬力(481kW)と排気量にものを言わせた、いかにもアメリカンマッスルカーらしいものだった。



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■12気筒エンジン

V型12気筒においても量産車のトップランナーといえるのはランボルギーニだ。アヴェンタドールの搭載する6.5リッターV12自然吸気エンジンは、カタログモデルで770馬力(566kW)、350台限定のLP 780-4 Ultimaeでは780馬力(574kW)を発生する。



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ただし、これを超えてくるのがイタリアンスーパースポーツの「パガーニ」。AMG由来の6.0リッターV12自然吸気エンジンを積んだパガーニ・ウアイラRは850馬力(625kW)を発生するのだ。



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■16気筒エンジン

このあたりになると車両価格も億単位となり庶民には想像できない世界になってくるが、超高価格なスーパースポーツといえば「ブガッティ」の名前を思い出す人も多いだろう。フォルクスワーゲン・グループに属するブガッティにおける最強モデル「シロン・スーパースポーツ」が積む8リッターW型16気筒ターボエンジンの最高出力は1600馬力、最大トルクも1600N・mと発表されている。



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ちなみに、W16というエンジンはフォルクスワーゲン・グループだけが量産しているもので、各バンクにオフセットして8個のシリンダーを配置したもので、V型エンジンを短くしたようなレイアウトになっている。そして、バンクあたり2個のターボチャージャーを置いたクワッドターボ仕様というのも、まるでゲームの世界のようで、庶民には想像できない世界のエンジンなのである。



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