頭文字Dのハチロクにも書かれていた!

コミック、アニメ、ゲームと幅広く支持されている「頭文字D」では、主役機たるAE86・スプリンタートレノのドアには「藤原とうふ店(自家用)」という文字が書かれていた。藤原とうふ店は、店の名前だとしてはたして『自家用』とは何なのか。今となっては、その由来を知る人も少なくなっている。



ご存じのように自動車には「自家用」と「事業用」の2種類がある。これはクルマの種類で決まるのではなく、登録時に分かれるものでナンバープレートの色で識別できるのだが、かつては「自家用」と明記することが法律で決まっていた。頭文字Dでの表記というのは、その時代感を示す、ひとつの表現といえる。



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ちなみに、自家用表示を義務付けている法律は昭和26年(1951年)に制定された『道路運送法』。その第六十五条において、“自家用自動車にあつては、「自家用」”(原文まま)と自動車の外側に表示しなければならないと、じつは今もその条文は残っている。



ところで自家用と事業用は何が異なるのかご存知だろうか?



自家用という言葉が示すのは、自家用車という言葉もあるように個人所有でパーソナルユースのクルマと思いがちだが、バスやトラックでも自家用は存在する。自家用というのは、有料で旅客や貨物を乗せない(載せない)クルマのことを指している。



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つまり乗用車であっても、タクシーは事業用であるし、バスやトラックであっても企業が自社の業務でしか使わない場合は自家用となるのだ。



そして、同じ乗用車であっても事業用のタクシーは車検が毎年になり、法定点検のサイクルも短くなる一方で、自動車(この場合は営業用として分類される)は自家用よりも低額となるという違いがある。



軽や定員10人以下の乗用車などの表示義務はなくなった

自家用と事業用を一目で区別するのがナンバープレートの色だ。たとえば登録車であれば、自家用は白地に緑文字、逆に事業用は緑地に白文字と、色が反転している。軽自動車の場合は自家用が黄色地に黒文字、事業用は黒地に黄文字となる。



巷では、車体外部への「自家用」表示が義務付けられていたのは、こうしたナンバープレートによる識別が生まれる以前という話もあるようだが、それは事実ではない。



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ナンバープレートによる自家用と事業用の識別は昭和27年(1952年)に始まっている。ちなみに、当初は事業用のナンバープレートは黄色地に黒文字となっていた。それが緑地に白文字となったのは昭和37年(1962年)だ。



※参考:ナンバープレートの歴史(https://www.mlit.go.jp/common/000169006.pdf)



余談だが、軽自動車のナンバープレートが現在の黄色地に黒文字・黒字に黄文字となったのは昭和50年(1975年)である。



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さて、道路運送法においては、いま現在も「自家用」と表示することが義務付けられていると書いたが、自家用という文字を入れているクルマを見ることはほとんどない。



なぜなら、軽自動車たる自家用自動車、乗車定員十人以下の乗用の自家用自動車、特殊自動車たる自家用自動車、そして自家用貨物自動車は「自家用」と表示する対象から除かれているからだ。



上記の条件に外れるのは乗車定員11人以上の自家用自動車くらいだ。つまり企業などが社員向けに走らせていたり、通園・通学用のバスが数少ない表示対象ということで、そうしたクルマをよく見れば、ボディ側面に「自家用」という懐かしい文字が書かれているはずだ。

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