この記事をまとめると
■需要は意外にもあるのにメーカーの熱意が薄いことが売れないひとつの原因



■価格が競合と比べても中途半端で売れないケースがあるので価格設定も考え直すべき



■限定車は生産台数を決めるのではなく、受注生産制でオーダーを受けるべきだった



「スポーツカーが売れない」のではなく、売り方に問題あり

1)ホンダNSX

最近はスポーツモデルの売れ行きが低調で、この背景には若年層のクルマ離れもあるとされるが、メーカーが国内での販売を諦めている面も多い。それを明確に示したのが、先ごろ生産終了を発表した現行NSXだ。
NSXの生産計画は、2016年の発売時点で「1年間に1500台、日本の割り当てはこの内の100台」と説明された。

その通りであれば5年後の2021年において、生産累計は7500台、日本国内の登録台数は500台になっているはずだ。



「買う人がいない」んじゃなく「売り方」に問題あり! 「売れな...の画像はこちら >>



ところが実際は、生産累計が2558台、日本国内の登録台数は464台だ。生産累計は計画台数の34%に留まるが、日本国内の登録台数は計画台数の93%に達する。発売当初は、日本の販売規模を全体の7%と見込んだが、実際は18%に達していた。



メーカーは「北米ではNSXの2000万円を超える価格とホンダのブランドイメージが折り合わず、販売が低迷した」という。それなら日本の割り当てを増やせば良かった。販売を担当したNSXパフォーマンスディーラーでは「NSXは購入希望のお客様が多いのに、正確な納期を伝えられず、諦めることも多かった」と説明していた。要はいつ買えるのかわからない。そのためにNSXの情報は、メーカーのホームページには掲載されていたが、販売会社では省くこともあった。理由を尋ねると「常に購入できるクルマではないから」と返答された。



「買う人がいない」んじゃなく「売り方」に問題あり! 「売れない」国産スポーツカー3台の抱える問題点



そしてNSXが海外よりも日本で売りやすいことがわかったのに、最終型となるNSXタイプSの生産台数は350台で、日本の割り当てはこの内の30台だ。相変わらず9%と少ない。

しかもNSXパフォーマンスディーラーなのに、扱えない店舗も多い。



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「タイプSを販売できる店舗はメーカーが決める。最後のNSXとあって購入を希望するお客様は多いが、弊社は扱えないのでお断わりしている」という。メーカーが「スポーツカーは日本では売れない」と決め付けて、国内の需要にまったく応えられていない。



価格の高さと需要の見極めの悪さが仇となった

2)トヨタ・スープラ

スープラはトヨタの中心的なスポーツカーで、1986年に登場した初代モデル(海外では3代目)は販売も好調で人気車となった。1993年の2代目は売れ行きが下がったが、それでも1994年には1か月平均で600~700台は販売された。



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それに比べると現行型は1カ月平均で約100台だ。メカニズムやプラットフォームの基本部分は、BMW Z4と共通化され、直列6気筒3リッターターボのRZは価格が731万3000円に達する。新型GR86 RZ(351万2000円/6速AT)の2倍以上だ。しかも生産はBMW Z4と併せてマグナシュタイヤー社に委託され、販売店によると「納期は4カ月から7カ月を要する」という。



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ちなみにBMW Z4のM40iは、スープラRZと同じエンジンを搭載して、電動開閉式のソフトトップも加えて価格は866万円だ。2リッターターボのSドライブ20iなら691万円に収まる。日本のトヨタ車なのに割安感が乏しいことも、スープラの売れ行きが伸び悩む理由だ。



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3)ホンダS660

S660は2022年3月に生産を終えると発表されたが、販売は前年の2021年3月に打ち切られた。なぜならS660は生産規模が小さく、生産終了が伝えられると、半月ほどの間に翌年3月までの生産枠が埋まったからだ。



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発売時点における1カ月の販売計画は800台だったが、2019年の1カ月平均は237台、2020年は229台であった。それでも「いつかはS660を買いたい」と考えているユーザーは多く、生産が終わるとなれば注文が多く入った。S660は2シーターのスポーツカーで荷室も狭く、実用性はモーターサイクルに近い。それでもほかのクルマでは得られないダイレクトな運転感覚が魅力だった。



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このようなクルマは、実用的なN-BOXやフィットとは異なり、放っておくと売れ行きが下がる。その一方で潜在的な需要は根強いため、定期的に情報を発信すべきだった。



そしてNSXにも当てはまることだが、欲しくても買えないユーザーが生じてはならない。最終型も期限を決めて受注を行い、一定の予約金を振り込んだユーザーには漏れなく販売すべきだった。そうすれば中古車価格の高騰といった市場の混乱もある程度は防げる。



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