この記事をまとめると
■パワーウェイトレシオは車両重量を最高出力で割ったクルマの性能を示す一つの指標■パワーウェイトレシオが優れている方が動力性能も優れているとは限らない
■トルクウェイトレシオに優れるEVだが総合的な運動性能面ではガソリン車には敵わない
F1マシンのパワーウェイトレシオは1kg/馬力を下まわっている
クルマの性能を示すひとつの指標として「パワーウェイトレシオ」がある。そのクルマの車重を最高出力で割った値(車重÷馬力)で示され、例えば車重1000kgのクルマに100馬力のエンジンが搭載されていたら、パワーウェイトレシオは10kg/馬力となる。同じ車重のまま馬力が200馬力に高まれば、同値は5kg/馬力となり、また同じ馬力のまま車重が1500kgに増えれば同値は15kg/馬力となる。
それはとくに動力性能面で有利に作用する。ゼロ発進加速性能などを検証する場合、パワーウェイトレシオが小さいほうが、加速性に優れると判断できるからだ。
このことからパワーウェイトレシオを好数値にするにはふたつの手段があることがわかる。車重を軽くするか、馬力を高めるかだ。その両方が果たせれば数値は劇的に向上する。
たとえばランボルギーニ・アヴェンタドールの場合、最高出力は740馬力、車両重量も高価なカーボン素材の多用による軽量化によって市販状態で1575kgほどとなっている。そこからパワーウェイトレシオ値を求めれば1575kg÷740馬力=2.1kg/馬力となる。

さらに世界最速のF1マシンをみれば、車両重量650kgに最高1000馬力のパワーユニットを搭載している。そのパワーウェイトレシオ値は単純計算で0.65kg/馬力となり、1kgを下まわっている。いかに強力な動力性能を誇っているかを知るには十分な指標になっているといえるだろう。

パワーウェイトレシオに優れるから動力性能も優れるとは限らない
だがパワーウェイトレシオは計算値であり計測値ではない。
2012年に0-100km/h発進加速で2.8秒を計測し、世界最短タイムを誇った日産GT-Rは、当時の仕様で最高出力が550馬力、車両重量は1700kgほどだったから、パワーウェイトレシオは3.1kg/馬力。前述ランボルギーニ・アヴェンタドールの2.1kg/馬力より劣る数値だが、アヴェンタドールの0-100km/h発進加速タイムの公表値は2.9秒で、実際に計測される動力性能としてはGT-Rが上まわっているのである。

このようにパワーウェイトレシオは性能を表す指標にはなっても、実際の走りが優れているとはいえないのである。
たとえば雪道など路面ミューの低い場所を走れば、パワーウェイトレシオ値の如何より、雪道に適したタイヤを装着しているかどうか、のほうが大きく走行性能に影響する。いくら軽くて馬力の大きなエンジンを搭載しても、それを路面にうまく伝えられるグリップの優れたタイヤや、駆動力をうまく引き出せる電子制御がなければ、駆動輪はただむなしく空転するだけで軽さもパワーも意味を持たなくなってしまう。

コーナリング性能など運動性能に関していえば、車体の軽さはアジリティを高め有効に作用する。だがハイパワーエンジンはランボルギーニのV12気筒エンジンのように重く、その搭載位置によっては車体の重量バランスを崩し運動性能に悪影響を与える。軽量コンパクトなパワーユニットから大きな出力を絞りだすにはターボ過給器の装着が効率よく、F1マシンも含め現代のスポーツカーの多くがターボチャージャーを装着している。

またブレーキ性能面では重さは致命的となり、いくらパワーウェイトレシオが優れていても、絶対重量が大きければ減速時にブレーキに過大な負荷がかかることを忘れてはいけない。
一方、トルクウェイトレシオという値もあり、これは車両重量をパワーユニットの最大トルクで割った値となり、低速域から最大トルクを幅広い回転幅で発揮できるEVモーター搭載車などは好数値になる。
テスラは電気モーターの特性を利してトルクウェイトレシオの優れたモデルSで0-100km/h発進加速タイム2.1秒という日産GT-Rを凌駕する発進加速性を計測することに成功し公表しているが、軽くて高効率なバッテリーが開発されないかぎり、総合的な運動性能面では軽量かつハイパワーなガソリン車を上まわることはできていない。
