この記事をまとめると
■乗客を希望の場所まで連れていくのがタクシー運転手の仕事■道を間違いや遠回りはクレームに繋がる
■タクシー運転手はどのように道を覚えているのかについて解説する
知ったかぶりは大きなクレームにつながる
都内で手を挙げてタクシーが停まって車内に乗り込み行き先を告げると、「どのコースで行きましょうか」といったことを運転士が聞いてくるはず。じつは、乗客が行き先を告げた時には必ず、“経路確認”を行うことになっているので、けっして道を知らないというわけでもないのである。
タクシーは目的地まで最短ルートと、安全・安心に送り届けるのが最大のサービス。
東京都心部を走るタクシーは、東京23区と、三鷹、武蔵野市が営業区域となるし、いまはコロナ禍で激減しているが、深夜を中心に神奈川、埼玉、千葉といった東京隣接県まで利用する、“ロング客”も多いので、運転士はすべての道路を網羅しているのが当たり前というわけではない。
そのため、新人運転士のころに行き先を告げられてわからない時は、素直に「教えてください」とするのが基本だが、「すいません、いま乗せてきたお客さんに連れてこられたのですが、ここら辺はあまり走らないので」など“応用技”をきかせてルートを聞くのもひとつの手と指導されることもある。これが、知ったかぶりして発車したのはいいが、遠回りでもしようものなら、即乗客からのクレームへと発展していくので、とにかくわからない時は正直にお客に聞くこととなっている。
東京(23区内と、三鷹・武蔵野市)や神奈川県、大阪府の一部営業区域などでは、タクシー運転士になるためには、各地区のタクシーセンターで行っている“地理試験”に合格しなければならない。とはいっても、すべての道路を覚えなければ合格できないというものでもないので、試験に合格したから知らない道がないということでもない。
実戦の場で身につけていくことが多い
それではどのように道を覚えていくのかと言うと、まずは“お客さんに教えてもらう”、つまり実戦で覚えていくことがメインと言ってもいいだろう。「運転士になったばかりなので、教えてください」など、ある程度平身低頭でお願いすれば、たいていは不機嫌にもならずに教えてもらえる。あとは新人研修でよく聞かされる話だが、公休日にドライブがてら、地図片手に道を覚える運転士もいるそうである。
いまは、PCからプリントアウトした地図を渡して、「ここに行ってください」とする乗客も多いが、行き先の住所だけを渡された場合は、カーナビ(法人タクシーの場合は、タクシー専用であることが多い)に入力してルート案内してもらうことも多いようだ。ただ、カーナビを安易に使うと、「プロのくせに」と絡んでくる乗客もいるので、「カーナビを使ってもいいですか」と聞いてから入力する運転士もいるようだ。
駅前のロータリーにある、タクシー乗り場で着け待ちしている車両を多く見かけるだろうが、少なくともその駅周辺の地理に詳しくないと、お客は当然道を知っているからここにいるのだろうと思っているので、トラブルになりやすい。そのため、道に詳しくない運転士は、駅での着け待ちはあまりしないようにと指導されることもあるようだ。

また、いまはコロナ禍で厳しいが、銀座の一定区域内では深夜の一定時間は指定したタクシー乗り場からでしかタクシーに乗れないことになっている。そして、最寄りの首都高速入口の関係もあるのか、乗り場ごとにだいたいの行き先(方面)が決まっているとのこと。そして、銀座で飲むようなひとはタクシーに乗り慣れてもいるので、行き先を告げてマゴマゴしていると、たちまち大きなトラブルになるので、ベテラン以外は深夜の銀座は近寄らないようになっているとも聞いたことがある。トラブルにならないまでも、目的地につくまで延々と“お説教”というパターンもあるだろう。
アメリカの大都市には、通りや地番に誰でもわかる規則性が与えられているため、目的地は地番だけでも十分に目的地まで連れて行ってもらえる。そのため、規則性を覚えればなんとかなるし、もともと都市部では地図はいらないとの声が多く、カーナビが普及しだしたころは、それも不要とさえいわれていた。しかし、東京は世界でも有数の大都市であるが、地番に規則性はほとんどない。もともと地理に明るいとか、自助努力で覚えるというのもあるが、結局は実戦で積み上げていくことが多いようである。