この記事をまとめると
■バンというクルマのジャンルについて解説する■日本では荷物を運ぶ箱形の商用車を指すことが一般的
■ミニバンのバンとは語源が異なる
わかりそうでわからないバンの定義
日本でバンといえば運搬業務とを主とする商用車のこと。箱型の貨物自動車をそう呼びます。
形状が似ているステーションワゴンとバン、また軽ハイトワゴンと軽バンとの違いは人を乗せるスペースより荷物を積む空間を広く取っていること。
世界的にバンとは箱型の貨物自動車を意味しますが、ただアメリカではトレーラーなどもバンと呼ばれ、オーストラリアでは主に乗用のミニバンを指すなどやや曖昧なワードでもあります。
■バンとは? その定義について
・ナンバー
乗用車が5ナンバーや3ナンバーであることに対して、商用車は1ナンバーや4ナンバーが割り当てられます。ナンバープレートの登録区分としては、1ナンバーが「普通貨物車」、4ナンバーは「小型貨物車・軽貨物車」となっており、多くの商用車が割り当てられる4ナンバーは長さ4.70m、幅1.70m、高さ2.00m、排気量2000cc以下。1ナンバーは長さが4.70m、幅1.70m、排気量2000ccを超えることが条件となるため軽自動車には割り当てられません。

・車検
1ナンバーや4ナンバー車は新車登録後、初回は2年後、その後は1年ごとと定められています。ビジネスシーンで長距離を走ることが多いため、安全性を考慮し車検が1年に1回と規定されました。

・税金
商用車は乗用車とくらべて自動車税が安く抑えられています。乗用車と違い最大積載量によって自動車税が決まりますが、1t以下なら8000円、1t超2t以下11500円、軽自動車(自家用)なら5000円とリーズナブルなことが特徴です。
・商用車の規定
商用車は乗用車とちがい荷室フロア面積が1㎡(軽商用車は0.6㎡以上)、後席使用時は後席スペースより荷室面積が大きいこと、さらに(後席)定員重量より荷室に積載できる重量のほうが大きいこと、などが規定で求められます。

■バンの種類について
・軽バン
軽バンとはワンボックスタイプの軽自動車を指します。スズキ・エブリイ、ダイハツ・ハイゼットカーゴ、ホンダ・N-VANがそれにあたり最大積載量は350kgです。

・ライトバン
ライトバンは屋根がある小型貨物車両全般を意味し、ワンボックスタイプから2ボックス、ハッチバックなど登録車の商用車について指します。

・ミニバン
バンと聞いてまず思い浮かべるのはミニバンではないでしょうか。
「商用車ではないのになぜミニバンなんだろう?」と疑問を感じてしまいますが、ミニバンの"バン"とはアメリカでキャンピングトレーラーを指す「キャラバン(CARAVAN)」を短縮したもの。全長5m以上のフルサイズ(キャラ)バンに対して、ひと回り以上コンパクトに仕立てた車両が1980年代に登場し普及していったことで「フルサイズバンより小さい(ミニ)バン」という新たなセグメントが誕生したわけです。

ただし、商用車の「VAN」もそもそもは屋根付き貨物車を意味していた「CARAVAN」が語源。これは「バン=商用車」と認識されている日本とは違い、アメリカでは「バン=箱型の車両」と商用、乗用問わずに区分されていることが要因です。
バンで生活するバンライフもいま流行!
■バンの様々な用途について
荷物の運搬を目的にしているバンですが、ビジネスシーンだけで用いられているわけではありません。乗用車と比べて税金が安いことや広い荷室スペースを生かしたカスタムなど、多彩なニーズで楽しむユーザーも少なくありません。
また近年、「バンライフ」なる商用バンを改装しアウトドアを楽しむムーブメントが欧米を中心に広がりはじめました。
「バンライフ」とは商用バンをカスタムし「動く家」化することで時間や場所にとらわれず全国を旅するライフスタイルのことで、日本でも静かなブームが巻き起こっています。

■今人気のバンランキング TOP5
●トヨタ・ハイエース(5代目)
車両価格:236.35~412.9万円
ボディサイズ:全長4695mm×全幅1695mm×全高1980mm(標準ボディ/標準ルーフ)
パワーユニット:2リッターガソリン、2.7リッターガソリン、2.8リッターディーゼル

現行ハイエースが登場したのは2004年。200系と呼ばれる第5世代のモデルとなります。すでにデビューから15年を経過していますが4代目からの移行も15年。いまだに世界中で人気を誇っているロングライフモデルです。
商用バンとしての機能性や積載性、また信頼性や耐久性が高いことが人気の理由ですが、結果、2007年から7年連続で盗難被害ワースト1位を獲得することに……。
現行モデルは4ナンバーと1ナンバーのロングボディ、1ナンバーのスーパーロングを備え、ワイドボディ、ミドルルーフ、ハイルーフと多彩なボディバリエーションを用意。
パワーユニットも多数用意されており2リッター直4&2.7リッター直4ガソリンエンジンと2.8リッター直4ディーゼルエンジンをラインアップしています。また、組み合わされるトランスミッションは、デビュー時に選ぶことができた5速MTは廃止され、現在は6速ATのみが用意されています。
デビューから長い時間が経っていることで走行性能や安全装備も拡充。2017年の一部改良で衝突回避支援パッケージ"Toyota Safety Sense"を標準装備しました。単眼カメラとミリ波レーダーで周囲の物体や対向車、歩行者を検知。高い安全性能を備えました。
いまだに高い商品力を保持している現行型ですが、どうやら6代目へのモデルチェンジが近づいているようです。次期モデルはハイブリッド仕様も用意されるとの噂もありますが、どのような進化を遂げるかが楽しみです。
●スズキ・エブリイ(6代目)
車両価格:97.13~154.0万円
ボディサイズ:全長3395mm×全幅1475mm×全高1895mm
パワーユニット:660cc直3ガソリン

エブリイは初代が1964年にデビューしたスズキの軽商用バンです。現行モデルは6代目となり、乗用モデルのエブリイワゴンも用意。また、日産、三菱、マツダにOEM供給されています。
商用バンとしての実用性も十分で、荷室長1910mm、荷室幅1385mm、荷室長1240mmの荷室サイズを備えており、ビールケースを40ケース、みかん箱なら69箱の積載数を誇ります。
また、スズキの先進支援安全装備“SUZUKI Safety Support”を装備。デュアルカメラブレーキサポートや後退時ブレーキサポートをはじめ、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能などいまどきのクルマに備わっていてほしい先進装備を装備しました。
パワーユニットは最高出力64馬力の660cc直3インタークーラー付きターボと、最高出力46馬力のNAエンジンを用意。トランスミッションは5速MT、4速ATに加えMTをベースにクラッチ&シフト操作を自動で行う5速AGSをラインアップしています。
●ダイハツ・ハイゼットカーゴ(10代目)
車両価格:95.15~156.2万円
ボディサイズ:全長3395mm×全幅1475mm×全高1764mm(標準ルーフ)
パワーユニット:660cc直3ガソリン

2004年にデビューしたハイゼットカーゴ。エブリイ同様、トヨタやスバルにOEM供給するトラック仕様のハイゼットとともにダイハツの軽商用車として人気のブランドです。
商用車として重要な荷室スペースは荷室長1860mm、荷室幅1375mm、荷室高1235mm(ハイルーフ)。数値的にはエブリイに劣りますが、ビールケース36ケース、みかん箱65個を積載する能力を備えています。
デビュー時はハイブリッド仕様も用意されていましたが、現在はターボ&NAの660cc直3ガソリンエンジンを搭載。5速MTもしくは4速ATが組み合わされます。
エブリイ同様、ダイハツの先進安全支援システム“スマートアシストⅢ”を2017年の一部改良で装備。
●ホンダ・N-VAN
車両価格:127.6~187.2万円
ボディサイズ:全長3395mm×全幅1475mm×全高1945mm(FF)
パワーユニット:660cc直3ガソリン

アクティの後継モデルとして登場したN-VANはN-BOXをベースにした軽商用バン。駆動方式は当然、FF(4WD仕様も用意)を採用しています。
スーパーハイトワゴンをベースにしていたため、荷室長は1510mm、荷室幅1390mmと商用車専用設計としてエブリイやハイゼットに比べると劣りますが、ホンダ自慢のセンタータンクレイアウトを採用したことで荷室高1365mmを実現しました。また、後席のみならず助手席まで格納できるようにし運転席以外はフラットな空間を用意しています。
もうひとつエブリイやハイゼットカーゴより優れているのがビジネス以外での利便性。走行安定性が良く、スライドドアに内蔵したセンターピラーのおかげで広い開口幅を確保したことで長い荷物を積む際、側面からも出し入れしやすい構造を実現するなどレジャーを楽しむための空間としての使いやすさを備えています。
両車には装備されていない車間距離を自動制御するクルーズコントロールを備えるなど日常ユースでの使い勝手に優れています。
●日産NV350キャラバン&キャラバン
車両価格:(NV350キャラバン)278.41~411.18万円/(キャラバン)241.23~321.53万円
ボディサイズ:全長4695mm×全幅1695mm×全高1990mm(NV350キャラバン標準ボディ)
パワーユニット:2.5リッター直4ディーゼル(NV350キャラバン)

ハイエースのライバルといえばこのクルマ! 2012年に登場した現行モデルはキャラバンシリーズとしては5世代目となります。2021年10月に行われたマイナーチェンジにより、ガソリン仕様が「キャラバン」へと名称変更されました。
日産のデザインテーマ「Vモーション」を強調したフロントグリルが目を引く外観が特徴のボディは、ロングボディ、スーパーロングボディを用意。ハイエース同様、ワイドボディやハイルーフも用意されています。
パワーユニットはNV350キャラバンには2.5リッター直4ディーゼル、キャラバンには2リッター直4&2.5リッター直4ガソリンエンジンを搭載。ディーゼルには5速MTと5速AT、ガソリンには7速ATが組み合わされます。
先進安全装備も日産自慢の上空から見下ろしているかのような自車の映像を確認できる「インテリジェント・アラウンドビューモニター」や衝突回避をサポートする「エマージェンシーブレーキ」を装備。
ラゲッジルームは広さと使い勝手を両立した空間に仕上げています。
■まとめ:乗用車とは違うバンの魅力を発見するかも
街中で見ることが多いバン。ビジネスシーンで多くの人に役立っているクルマですが身近な分、その実態を知ろうとしなかったのではないでしょうか。バンとミニバンの違いなど、正しい実態を認識したことで、一般的な乗用車とは違う魅力を感じるようになるかもしれません。