この記事をまとめると
■かつてヒュンダイは2001~2010年に日本でも乗用車を販売していた



■日本での知名度はイマイチだが、ヒュンダイは2020年の世界販売台数では第5位



■現在のヒュンダイや起亜はかなりアグレッシブなデザインで現代的



日本ではマイナーな韓国車がグローバルでは躍進している

「韓国車」と聞いて、日本でピンとくる人は相当の自動車通といえるだろう。韓国ブランドで乗用車を生産しているのは、最大手の現代(ヒュンダイ、現在はヒョンデに改称)、そして子会社となる起亜(キア)、さらにルノーサムスン、GMコリア、双竜(サンヨン)があるが、グローバル市場でメジャーといえるのは、ヒュンダイと起亜(以下韓国車)といっていいだろう。



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テレビのニュース映像を見ていると、韓国車は新興国や紛争地域では乗用車として多数映りこんでいる。

その営業姿勢は「ドブ板営業」と呼ばれるほどエネルギッシュであり、特徴としてはタクシーなどのフリートセールスから入り込み、販売シェアを増やすといった傾向を筆者は強く感じている。とにかく日系ブランドメーカーより腰が軽いのは間違いないものと思っている。



ヒュンダイブランドの乗用車は、かつて2001年から日本市場に参入しているが、2010年に日本市場での乗用車販売を正式に終了し、いまは大型観光バスのユニバースのみを日本国内で正規輸入販売している。



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しかし、2020年の世界市場でのブランド別年間販売台数では第5位に入っている。新車販売台数世界1位の中国や2位のアメリカでも存在感を見せており、日本車が苦手とする欧州市場では日本車以上の存在感を示している。ただ、ここ数年は、中国市場において韓国車の販売は苦戦している。その理由としては、韓国国内へのTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備による中国国内での韓国製品の不買運動が大きいとのことだが、車種ラインアップの問題など、複合的なものが合わさったものともいわれている。



その韓国車だが、ここのところ「日本市場再参入へ」といった報道が出ては消えといった状況が続いている。日本にある韓国大使館では、使用するクルマの大半を燃料電池車「ヒュンダイ・ネクソ」に入れ換えたとの情報もあり、このネクソを専門家に試乗してもらったり、メディア露出を図っていたりしており、内燃機関車での日本車との真っ向勝負を避け、燃料電池車で再参入してくるのではないかとの話も聞く。日本でも整備はまだまだこれから本格化していく水素ステーションだが、それでも韓国国内の水素ステーションの数よりは、現状もかなり日本国内のステーション数は多く、そこに着目したようだとの話もある。



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日本と韓国というと、メディアではどうしても政治的な関係悪化状態がクローズアップされてしまう。韓国ではたびたび日本製品の不買運動が起こるし、日本でも韓国に良い印象を持たない人がいることは否定できない。

そのなかでも、何らかの形で日本市場での乗用車販売を展開したいとするのは、世界市場では日本車並みの存在感があるのに、世界3位の自動車市場で乗用車をいっさい販売していないことは、世界市場での販売戦略上「目の上のコブ」のようなトピックになっているようだ。



日本で販売される輸入車は、全体でもその販売シェアは少なめだし、そのなかでも一部ドイツ系高級ブランドに偏っているのが現状。しかし、日本市場に参入するあるブランドでは、少数販売台数であっても世界でもっとも品質にうるさい日本の消費者の反応を、自動車開発に役立てたいという研究目的もかねて市場参入しているところもあるようだ。



アグレッシブでスタイリッシュないまの韓国車

ある事情通は「韓国側も一度撤退しているので、今度は失敗が許されないという慎重な姿勢も目立ちます」と語る。しかし、「知人に個人輸入された韓国車に乗っている人がいます。あるとき高速道路のサービスエリアに停めてトイレに行き、クルマへ戻ろうとすると、自分のクルマのまわりに若者(日本人)が集まりスマホで撮影していたとのことです。そこで若者たちに理由を聞くと、『韓国ドラマのなかでよく街を走っているクルマですよね』としてSNSにアップさせてほしいのだと理由を話してくれたそうです。いまの若い世代は韓流ドラマだけではなく、食べ物や音楽など、オジさん世代とは異なり、なんの抵抗もなく韓国文化を受け入れて楽しんでいます。そのため、よく視聴する韓流ドラマに出てくる韓国車のほうが、日本車より格好良く見え、さらに親しみを感じているようなのです」と話してくれた。



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それならば、思い切って、若者が好みそうなカジュアルなコンパクトSUVやハッチバック車を輸入しても期待できるのではないかとも思えるが、「まだそこまで踏み切るのは時時期尚早かもしれない」とは前出事情通。



韓国車の過去の日本参入は、「冬のソナタ」が全国的に人気となり火がついた第一次韓流ブーム(2003年から2004年とされている)のさなかであったが、少しブームが落ち着いた時期に首都圏のヒュンダイディーラーへ行くと、「いまでもヨン様ファンの方が、何かグッズがないかといらっしゃることがあります。ただ、肝心ともいえるソナタの国内発売は2005年で、しかもドラマに出ていたモデルの次のモデルでしたのでブームには乗れませんでした。

なんかもったいないことしたなと思いましたよ」と悔しがっていた。



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韓流ドラマはいまでも劇中でクルマの絡むシーンが多く、明らかに自動車メーカーとタイアップしているように見えるケースが目立つ。多くはドイツ車などの輸入車となっているのだが、その周辺には韓国車がタクシーやパトカーなどとしても風景として多数映りこんでいる。これは、アメリカで「日本のアニメに出ているようなクルマ」として、当時アメリカではあまり売れないトランクのない(ハッチバック系)初代bBが沿岸部を中心にバカ売れし、また日本のアニメでよく出てくる食べ物が世界各地でブレイクするような消費行動によく似ているものと考えられる。



あくまで主観となってしまうが、確かにヒュンダイや起亜はかなりアグレッシブなデザインで、「格好いいなあ」という印象を受ける。ソウル市内を走る現行モデルのヒュンダイ・ソナタのタクシーやパトカーを見ると、ソウルが東京より洗練されているような印象も受ける。



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かつて北米市場あたりでは「安売りブランド」ともいわれていた起亜も、モデル全体でイメージアップを行い、いまではFRのスティンガーというモデルをラインアップし、ブランドステイタスを一気にあげている。



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また、ヒュンダイは北米や中国において、トヨタにおけるレクサスのような上級ブランドとなるジェネシスを展開し、北米ではじわじわとブランドステイタスをあげている。



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クルマに興味がないとされる若者が、サービスエリアに停まっている韓国車に集まるその風景を想像すると、かつて韓国車が参入したころの日本とは市場環境の変化というものを感じてしまい、ここへきて日本市場再参入という話が出るのも理解できてしまう。

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