この記事をまとめると
■軽自動車の主流となるトール軽の歴史を振り返る■ボディの形はバリエーションに富んでいたが大きな成功はしなかった
■軽自動車が成功するための鍵は車内空間の広さにある
そもそもナゼ軽自動車はトール系の道を歩み始めたか
2021年に国内で販売された新車の37%が軽自動車であった。さらに軽乗用車の50%以上は、全高が1700mmを上まわるスライドドアを備えたスーパーハイトワゴンになる。軽自動車の販売ランキングで1位になったN-BOX、2位のスペーシア、3位のタント、5位のルークスも、すべてスーパーハイトワゴンに属する。
今に繋がるスーパーハイトワゴンの出発点は、2003年に発売された初代ダイハツ・タントだ。この時点では、全高は1700mmを超えるもののスライドドアは装着されていなかったが、2007年に発売された2代目には採用されている。左後部にはピラー(柱)を内蔵したスライドドアが備わり、右側は一般的な横開き式ドアであった。

2008年の初頭には、スズキからパレットも発売され、両側に一般的なスライドドアを装着した。2011年には初代N-BOXも登場して、軽自動車ではスーパーハイトワゴンの売れ行きが急増した。

ユニークな見た目は良かったが、使い勝手で言うと詰めが甘かった
しかし、全高が1700mm前後の軽乗用車はそれ以前から存在していた。印象に強く残っているのはミニカトッポだろう。初代モデルは1990年に発売され、全高はQ2などのベーシックグレードが1695mm、Q2-4は1745mmと高い。今のスーパーハイトワゴンに近い数値だった。

1991年にはアルトハッスルも登場した。全高を1660~1685mmまで高めて、主にボディ後部の室内空間を広げた。

これらの背の高い軽自動車は一時的に注目され、ミニカトッポは2代目にフルモデルチェンジされた後、トッポBJに発展している。

居住性や空間効率を向上させるには、天井だけ高く設定してもあまり意味はない。頭上の空間が広がって開放感は得られるが、足もと空間は拡大しないからだ。

天井を高くしたなら、シートの着座位置も持ち上げて、床と座面の間隔を広げる必要がある。そうすれば乗員の足が前方へ投げ出されず、手前に引き寄せられるから、軽自動車の限られた室内長でも足もとが広く感じられるのだ。
その点でミニカトッポやアルトハッスルは、ウインドウの広い外観には独特の個性が伴って車内も明るく開放的だったが、着座位置はあまり変わらないから居住性も向上していない。つまり情緒以外の実用的な価値が弱かった。
その一方で、1993年には初代ワゴンRが登場した。外観と車内のレイアウトは、ミニカトッポやアルトハッスルとは大きく異なる。売れ筋グレードの全高は現行型と同程度の1680mmで、着座位置も天井に合わせて高められた。

そのために初代ワゴンRの乗車感覚はミニバン風で、着座位置も高めだから、乗員の足が前方へ伸びず、足もと空間が広く感じられた。

それ以来、着座位置の高い設計が軽自動車の主力になり、タントやN-BOXといった今のスーパーハイトワゴンに繋がっている。背の高い軽自動車が生き残れるか否かの境目は、シートの着座位置と主に後席に座る乗員の快適性にあった。
