この記事をまとめると
■ガソリン価格は日々、着々と上昇している■しかし、政府は元売事業者に「ガソリン価格抑制補助金」を支給している
■それでも小売価格が上がり続けている理由について解説する
政府は元売事業者に「ガソリン価格抑制補助金」を支給している
ガソリン価格の高騰が止まらない。店頭現金小売価格調査による2022年2月14日の全国平均価格は171.4円/L(レギュラーガソリン)となっている。1月17日の同平均が168.4円/Lだったことを考えると、着々と上昇しているのは間違いない。
しかし、これでもガソリン価格の高騰は本来より抑えられたという。ご存じのように、政府が「コロナ下における燃料油価格激変緩和対策事業」、通称「ガソリン価格抑制補助金」を支給しつづけているからだ。
この補助金の仕組みは複雑だが、給付先は元売事業者(エネオスや出光など)であって、給付を前提に卸価格を抑え、結果として小売価格が抑制されるというスキームになっている。
資源エネルギー庁の計算例をあげると、小売価格(全国平均)が170.2円で、原油価格は翌週3.2円上昇すると見込まれる場合、173.4円と170円の差額である3.4円が支給額となる。支給自体はすぐというわけではないが、元売各社は支給を前提に卸価格に反映させることで、小売り価格の上昇が抑制されというわけだ。
そして、ガソリンだけが対象ではなく軽油・灯油・重油についても、同額が支給されることになっている。
補助金の限度額はリッター当たり5円ということだが、すでに支給額は上限に張り付いている。それでも、レギュラーガソリンの小売価格が上がり続けているというのは、どういうことだろうか。
原油価格の高騰にはウクライナ情勢も影響
資源エネルギー庁の試算を信用するならば、2月14日のガソリン平均価格は171.4円/Lだったが、補助金がなかったら175.2円/Lに上昇していたはずだという。さらにいえば、その翌週は177.0円/Lまで上昇すると見込まれているのだ。
その背景には、世界的な原油価格の高騰がある。
2021年の最終週では52.7円/Lだったことを考えると、25%以上も高くなっている。残念ながら、リッター当たり5円の補助金では、高騰を抑えることはできない状況になっている。
原油価格の高騰には、ロシアによるウクライナ侵攻も大きく影響している。ロシアが動いた2月24日にはドバイ原油価格が1バレル100ドルに届かんとしたことがニュースとなった。
かつては「有事の円買い」といわれ、こうした状況では円高傾向になって円建てでの輸入品価格は抑制されたものだが、もはや日本円にそれだけの価値やパワーはなくなっている。いまや「有事の円売り」という言葉さえ使われるほどで、円安傾向は続いている。
つまり円建てでの原油価格が下がる要素は見当たらず、このままではガソリン価格抑制補助金が焼け石に水となってしまう。国内向けに補助金を出すと同時に、円高に誘導するような政策がなければ、この情勢下においてガソリン価格を抑えることは難しいだろう。