この記事をまとめると
■軍用車両にはコンバットタイヤと呼ばれるタイヤが装着されている■ランフラットタイヤのようにパンクしても走行できるよう特別な構造が採用されている
■安全に走行し続けられるクルマ社会実現にはタイヤの重要性を検証しておく必要がある
パンクで任務遂行ができないなんてあってはならない!
軍用車両は、どのような場面でも機動力を発揮できなければ意味をなさない。走りを支える基本となるタイヤも同様だ。パンクしたから身動きできないというのでは、役立たずになる。
ランフラットタイヤ構造を採用していれば、パンクしても走り続けることができ、機動力を維持できる。そのうえで、基地に戻ったり安全地帯に行き着いたりした段階で、タイヤ交換することになるだろう。

ランフラットタイヤの主流は、タイヤ側面のゴムを厚くすることで、空気が抜けてもそのゴムで車両を支える方式だ。ニッサンGT-Rなどの高性能車や、これまでBMWの多くの市販車で採用されてきた。ただし、高速走行を長くできるわけではなく、時速80km以下でタイヤ交換できる場所まで80kmまでの移動と考えるのがよい。

もうひとつのランフラット構造は、中子方式といって、タイヤの内側にもうひとつのタイヤが設けられている構造だ。ただし、この方式は実用化されていないのではないか。タイヤ側面のゴムを厚くする方法に比べ、構成要素が増え、原価が上がってしまうからだ。
安全快適なクルマ社会の実現にはタイヤも重要な要素だ
タイヤ側面のゴムを厚くする方式のランフラットタイヤは、その分、ゴムが硬く弾力が失われがちになる傾向のため、乗り心地が硬くなる。そこで、GT-RやBMWなどでは、ランフラットタイヤ専用のバネやダンパーの設定が必要になる。タイヤ側面の硬さを前提に、乗り心地を悪化させないサスペンション設計をするのだ。

タイヤの硬さをいなすことのできないサスペンションでは、タイヤが路面の影響で弾みやすくなり、その分、接地性が悪化することにもなるので、単に乗り心地という快適性だけでなく、操縦安定性や加減速でのグリップ保持にも影響が及ぶことになる。したがって、ランフラットタイヤ専用のサスペンション設計が、ランフラットタイヤを使ううえで要となる。
一般的なランフラットタイヤのほかに、ラリー競技ではムースタイヤと呼ばれるものも使われた。タイヤの内側にスポンジ状のムースが注入されており、空気が抜けてもムースでタイヤ形状を維持する考えだ。
ランフラットタイヤは、専用のサスペンション設計を求めたり、まだ世の中に普及しきれていないため価格が高かったりなどの課題があるのは事実だ。しかし、すでにタイヤ交換をできない運転者も存在し、さらには自動運転が実用化すれば、タイヤがパンクして1台でも走行できなくなってしまうと、交通が滞りかねない。
つまり、コンバットタイヤと同様に、走り続けられることの重要性が高まるのである。

燃費向上の名目で、タイヤが重くなりがちなランフラットタイヤでない方がいいのではないかとの考え方もあるだろうが、交通の停滞を防ぎ、常に安全に走行し続けられるクルマ社会の実現へ向け、ランフラットタイヤの重要性を改めてきちんと検証しておく必要があるだろう。