この記事をまとめると
スバルの代表的な技術のひとつに「シンメトリカルAWD」がある



■グローバルで販売されているスバル車のじつに98%がAWD



■「スバル=AWD」のイメージが根付いた理由について解説する



グローバルでのAWD比率は98%!

スバルというブランドに、どんなイメージを持っているだろうか。



現在はSUBARUという社名だが、もともとは富士重工業というお堅い名前だったこともあって質実剛健という印象も強い。また、ルーツとなるのが戦前に「隼」や「疾風」といった軍用機を作っていた中島飛行機にあることから航空機との関係性を連想するファンも多いだろう。

実際、いまでもSUBARUは航空機産業に関わっている。



自動車のテクノロジーでいえば、先進運転支援システム、衝突被害軽減ブレーキの代名詞ともいえる「アイサイト」のイメージが強い。そのほか、コアテクノロジーとして「ボクサー」と呼ばれる水平対向エンジンもスバルの伝統といえる。そしてボクサーエンジンと切っても切れない関係にあるのが左右対称のパワートレイン「シンメトリカルAWD」である。



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なにしろ、スバルのクルマはAWD(全輪駆動)比率が非常に高い。同社の発表によれば、2018年~2020年までのグローバル販売実績ベースでデータをとると、なんとスバル車の98%がAWDなのだという(OEM販売車を除く)。



FRしか設定のないスポーツクーペ「BRZ」がなければ、スバルのAWD比率は限りなく100%に近づくことは確実だ。実際、日本で買えるスバルのFF車というのはインプレッサに用意されているくらいで、フォレスターやレヴォーグはAWDしか設定されていない。



さて、スバルが4WD(四輪駆動)ではなく、AWDと表現しているのはカッコつけているわけではなく、技術的な意思が込められている。



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あらためて乗用車における4WDシステムを分類してみよう。もっともベーシックといえるのが、スズキ・ジムニーなどに採用されているマニュアル操作によって切り替えるパートタイム式である。コンパクトカーやミニバンなどで多いのが、普段は2WDでスリッピーなシチュエーションだけ自動的に4WDになるもので、スタンバイ式などと呼ばれている。



こうしたシステムには、タフネスや燃費などのメリットもあるが、スバルは常に四輪を駆動させることで走りにおけるスバルらしさを表現している。そのこだわりとして常時四輪駆動はマストであり、「AWD」という表記は常時全輪駆動となっていることを示しているのだ。



初めはパートタイム式4WDだった

もっとも、スバルにおける最初の四輪駆動はパートタイム式だった。



それが1972年9月にローンチされた「レオーネ4WDエステートバン」である。バン(商用車)なので、厳密には乗用車とはいえないが、レオーネワゴンのボディ形状であったことから日本初の乗用タイプの4WDといわれるエポックメーキングなモデルだ。



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この当時は、まだセンターデフや電子制御といったものはなく、トランスファーレバーでFFと4WDを切り換えるパートタイム式を採用していた。そもそも、当時のスバル車は水平対向エンジンを縦置きにしたFFアーキテクチャが基本となっていたのだ。



水平対向エンジンの後ろにトランスミッションを置くというスバル伝統のレイアウトから、トランスミッションにプロペラシャフトを生やしてリヤデファレンシャルに駆動力を送れば4WDにできるという発想が生まれ。それがレオーネ4WDにつながったのは、スバリストと呼ばれる熱心なファンでなくともよく知られている話だろう。なお、最初のレオーネ4WDではリヤデファレンシャルの一部を日産ブルーバード(当時はFRだった)から流用していたというのも有名なエピソードだ。



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そうしてスバル独自のパワートレインが4WDと相性が良かったことで、徐々に4WD比率は高まっていったというわけだ。レガシィGTやインプレッサWRXといった2.0リッターターボモデルと4WDの組み合わせは、スバル・ブランドにオンロードで気持ちよく走れるスポーツ4WDというカテゴリーでのパフォーマンスイメージを与えるようになっていった。



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こうして4WDが欠かせないものになっていく流れにおいて、前述したように常時全輪駆動がスバル4WDのアイデンティティとなり、左右対称でバランスのよいレイアウトも含めて、シンメトリカルAWDいうコアテクノロジーにつながった。



さらに世界的なクロスオーバーSUVムーブメントによって、レガシィアウトバック、フォレスター、XVといったSUVラインアップの存在感が増していった。こうした背景が結果としてスバルのAWD比率を高めていったのだ。

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