この記事をまとめると
■大きめの石をアスファルトでつなぐ排水性舗装が高速道路の9割近くに採用されている■排水性舗装を施すことで路面に雨水が溜まらず水しぶきが上がらなくなった
■排水正舗装はタイヤが路面を叩いた音も舗装路面の下へ吸収され流ため通過騒音が低くなる
排水性舗装の登場で雨の日の視界が開けた
自動車先進国であり、クルマの大衆化の点で先を行く米国は、数十年前から道路整備が必ずしも十分でないという事態に陥ってきた。そして今日、日本も舗装を含め、道路という社会基盤整備や保守が後手になっていると感じることが増えてきた。我々が新車試乗を各地で行ってみても、同じ道筋で舗装路面の粗さや段差が異なるといった状況を目にする機会が増えている。
広く整備されているアスファルト舗装は、基本的には、砂と小石を、アスファルト(石油を精製してできる重質油)でつなぎとめた構造だ。永年この手法で実施されてきたが、現在高速道路の9割近くに採用されているのが、細かい砂などを使わず、大きめの石をアスファルトでつなぎとめる構造の排水性舗装である。
従来のアスファルト舗装では、路面の痛みや、重量の重いトラックなどが走行することでできる轍などに雨水が溜まり、水しぶきがあがって視界を遮る危険性があった。しかし、排水性舗装を施すことにより、路面に轍やうねりなどができても雨水が溜まらず、舗装の下へ流れるため、水たまりができなくなって水しぶきも上がらなくなった。雨天でも、前方視界を確保やすく、またタイヤが水膜の上へ浮き上がるハイドロプレーニングも起き難くなり、高速走行安全性が高まった。

高機能舗装と呼ばれた排水性舗装は、1990年代の末にまず東北自動車道で採用されはじめた。
細かな砂や小石を使わなくても、粒の大きな石を固定できるのは、アスファルトにゴム質の材料を混ぜることで実現している。高分子素材をアスファルトにまんべんなく均等に混ぜるには高度な技術が必要とされるが、それが日本の技術のひとつとなっている。
雨水だけでなく走行音も低減する排水性舗装
この排水性舗装は、路面から数センチの深さに水を排出する仕組みだったが、近年ではより深くまで水を浸透させられるようになり、街路樹などへ排水を導き、水やりの手間を省けるようになっているという。
アスファルトに混ぜる石の粒を大きくすることで排水性がよくなることは、その隙間を通じてタイヤ騒音も舗装の下へ消えていくことになる。目の詰まった舗装に比べ、タイヤ接地面が叩く舗装面積が減るのに加え、タイヤが路面を叩いた音も舗装表面で反射するのではなく、舗装路面の下へ吸収されるようになる。これによって、タイヤの通過騒音が低くなるので、高速道路だけでなく、一般道においても、幹線道路を中心に排水性舗装が用いられるようになっている。

今日、一般道においても、クルマの通過騒音はエンジン音よりタイヤ騒音が目立つようになっている。電気自動車(EV)が静かだといわれるが、エンジン車も一部を除いて一定速度で走行しているときは、エンジン排気音を轟かせているわけではない。

排水性舗装や高機能舗装と呼ばれるアスファルト舗装が普及することで、騒音対策という住環境の改善にも役立つのである。