この記事をまとめると
■収納式や手を差し入れるタイプなど、最近のクルマのドアハンドル形状が変化している



■なるべくなフラット形状とすることで空気抵抗を減らすのが目的だ



■少しでも空気抵抗を減らして燃費・電費を稼ぐために些細なことも見逃せない時代になっている



フラットな形状のドアハンドルで空気抵抗低減

電気自動車(EV)の米国テスラは、ひとつの造形の象徴としてドアハンドルが収納式であり、開閉の際に手前へハンドルが出る仕組みになっている。韓国のヒョンデ(現代)アイオニック5も、同様のドアハンドルだ。



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収納式とは異なるが、ドイツBMWの最新EVであるiXは、ドアハンドルの出っ張りを嫌い、手を差し入れる形式として、車体表面へのドアハンドルの出っ張りをなくしている。

ドイツ車は、1990年代から、万一の衝突事故の際にドアを確実に開け、車内の人を救助できるようにという安全第一でドアハンドルをグリップ式にした経緯があり、様変わりの印象がある。



フラットな「ドアハンドル」がクルマの未来を作る!? いまや自動車はわずかな空気抵抗まで追求するステージに入っていた



ドアハンドルの形状が変わった最大の理由は、空気抵抗の低減だろう。



しかし、レーシングカーや最高速度記録挑戦車などと違う市販車で、そこまでの効果が得られるのかという疑問があるかもしれない。同時にまた、それほど空気抵抗の削減に神経質にならざるを得ないほど、燃費低減のためなら何でも採り入れる時代となったといえる。



いまや些細な突起物も見逃せない時代

そもそも空気抵抗は、速度の2乗で増加していく。走行速度が2倍になれば、空気抵抗は4倍になる。時速40kmに比べ、80km/hになれば空気抵抗は4倍になる。



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日本でも、一部高速道路で最高速度が時速120kmとなっているので、その時の空気抵抗の影響は、時速60kmで走っているときの4倍にもなってしまうのだ。そうなると、ドアハンドルの出っ張りも影響してきそうだ。



同様のことは、CCDカメラを使うドアミラーの代替技術にもいえるだろう。鏡を使った大柄なドアミラーに比べ、CCDカメラは明らかに小さい。後方視界のための出っ張り(ドアミラー)が起こす空気の乱流が減るだけでなく、カメラを覆うカバーの形状を工夫すれば、鏡という広い面積を必要とする部品に比べ、空気抵抗を減らす形にもしやすいだろう。



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些細なことも見逃さず空気抵抗を減らす理由は、エンジン車なら燃費、EVなら一充電走行距離を改善するうえで、動力の制御だけでは足りない時代になったからだ。いまや、自然災害による被害の甚大化は世界の誰にとっても身近な出来事になり、森林火災や干ばつによる水不足、あるいは集中豪雨による川の氾濫も現実のものとなっている。このままでは、クルマが走ることさえ許されない事態にもなりかねない。一方で、移動や物流は、暮らしに欠かせない要件だ。



クルマにまつわる損失の低減は、考えられる方策を総動員する時代となったのである。

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