この記事をまとめると
■ビュイックのミニバン「GL8」のマイナーチェンジが発表された■「GL8」は中国市場で高いステータスを誇る
■アルファード以上の人気を誇る
GMブランド内で中国市場にウケが良いビュイック
現在アメリカ国内では、フォードにはフォードブランドのほかにリンカーン、ステランティス傘下のクライスラーではクライスラー以外にジープ、ダッジ、ラムといったブランドがラインアップされている。以前フォードにはマーキュリーが、クライスラーにはプリマスなどもあったのだが、時代とともに淘汰されていった。GM(ゼネラルモーターズ)ではシボレー、キャデラック、GMC、ビュイックがラインアップされている。
ビュイックブランドは、最近では一部アメリカ車好きのなかでは“中国臭が強い”などといわれている。中国でもシボレーやキャデラック、そしてビュイックブランドなどをラインアップしているが、中国市場ではビュイックがアメリカ以上に高い支持を受けている。そのため前述したように“中国臭”という話が出てくるようだ。
ビュイックと聞くと古い世代の人は大きなラグジュアリーモデルを連想する人も多いかもしれないが、中国では早くからコンパクトセダンなど中国限定モデルを積極的にラインアップしてきた。いまではBEV(バッテリー電気自動車)も多くラインアップし、GMのなかでは看板ブランドといっていい状況となっている。そうして中国にてビュイックブランドのステイタスを高めているのが、フルサイズミニバンとなる“GL8”である。

GL8の初代モデルの中国デビューは1999年。当時中国はまだ“一人っ子政策”を続けていたこともあり、「多人数乗車が可能なミニバンは市場で受けない」といわれていた。しかし、中国ではGL8が“高級商務車”として、官公庁や企業が所有し幹部社員などの移動というニーズで使われるようになった。
中国でビュイックが存在感を増していった理由
中国市場の特徴としては“ファーストペンギン”が重用される傾向がある。中国政府が外資の自動車メーカーを積極的に誘致し、中国メーカーと合弁会社を設立し、中国現地生産を進めていこうとしたときに、真っ先に積極的な姿勢を見せたのがVW(フォルクスワーゲン)であり、以降はサンタナが主要都市のタクシーとして長く使われ続けた。
その後香港でアルファード&ヴェルファイアが大ブレイクし、香港の人がビジネスなどで中国本土に自分のアルファードを乗ってくることで、「あのクルマはなんだ」と中国の人の興味を惹いた。しかし、中国国内で正規販売され人気が高まっても、GL8のステイタスにアルファードが及ぶことはなかった(GL8は現地生産車なのに対しアルファードは日本からの完成輸入モデルなので、そもそもガチンコのライバルとはならない)。

筆者の経験では、空港に到着してタクシー乗り場へ行く途中に“貸切タクシー”のような勧誘を受けたときや、モーターショー会場からの帰りにやむなく白タクを利用しようとしたときも、「GL8だから高いよ」という説明を受けている。市中でアルファードやヴェルファイアの人気が高まろうと、それはまだ“俗世間”的な人気の高さであり、絶対的なステイタスはまだGL8のほうが上と考えている。このビュイックGL8の絶対的なステイタスの高さが中国でのビュイックブランドの高さを支えているのは間違いないといえるだろう。
少し前だが、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大するなか、国際機関が発生源は中国・武漢市かどうか調査にきたというニュースがあった。その時流れたニュース映像には、一団がGL8で移動している様子が映っていた。
そのビュイックGL8が2022年8月にモデルチェンジを行った。それまではキープコンセプトで世代交代が進み、それほど押しの強くない、古き良きビュイック車の雰囲気を残しながら質感を高めていったが、最新モデルはアルファードに近い押しの強い顔つきを採用している。

アルファードあたりの客層を狙っているとしても、アルファードとは600万円近い差がある。アルファードというよりは、中国メーカーが最近続々高級商務車(こちらはかなりアルファードを意識してきている)を続々投入してきているので、それを意識して商品力のアップとバリエーションを増やしているものと考えられる。