この記事をまとめると
■スバルの新型SUV「クロストレック」を試乗■XVの後継車種という位置付けとなっている
■AWDモデルのほかにFFモデルも設定される
話題の新型SUVを悪条件のなかクローズドコースで試乗
新型になるたびにボディが拡大する傾向は全世界の流れ。しかし、スバルXVの後継、クロストレックは新世代のシャシーやボディ構造と安全装備を強化、充実しながらも、必要最小限の拡大に抑えた。
今回の試乗は、ほぼ量産型だが、ナンバープレートは未装着のため、プロトタイプとして乗る。
まずは先代モデルというべきXVを基準モデルとして走行する。コースインした直後に凹凸の突起の乗り越えがあり、振動吸収を確認せよ。ということだが、ただし装着タイヤはクロストレックがオールシーズンなのに対してXVはサマータイヤである。XVで突起を通過したときは、ブルブルとステアリングまで振動が伝わりダンダンと硬い衝撃は伝わるが、「こんなものかな」と思った。

ウエットとは言え、川が流れる状況ではない程度の濡れた路面だ。もちろん滑りやすく、スバルが得意とする悪条件下の試乗ではある。そこでのXVの走破性はじつにいい。ステア操作に対して応答性も前輪のグリップ感も路面を確実に捉えているので、これがクロストレックでどう進化するのか、興味は増す。
クロストレックに乗り換える。まず骨盤を立てて座らせるシート形状がいい。

XVと同様AWDが主力だが、今回は新たにFWDも誕生した。試乗では最初に乗った従来のXVからの乗り換えでAWDから試乗をスタート。コースイン時の突起の乗り越え。XVの印象に比較し、クロストレックは振動が足まわりで吸収されて、ステアリングへの振動も、ボディへの振動はXVのほうがルーフ部分で震えていた感があったと、違いがわかる。クロストレックはルーフの振動の波長が短く収まりも早い。

ただし、ココは重要。サマータイヤとオールシーズンタイヤという決定的な違いが関係する。明らかにタイヤの縦方向の撓みが柔らかいオールシーズンのほうが突起の入力、衝撃を吸収する特性に優れているからだ。
雨は止む気配はなく、路面温度も低温でタイヤ的にグリップ力は希薄になるが、が、排水性も優れているのだろう、この状況下で車速は90km/hに達した。一般公道では危険度MAXの走り。クローズドコースだからあえて試したのだが、XVの印象がけして悪くない理由はサマータイヤの剛性の高さと、ウエット性能も優れているタイヤ特性の高性能さも手伝う。
それらを踏まえたうえでのクロストレックAWDの走行で得られる感触は路面を良く捉えて、不穏な挙動変化を起こさないと言うこと。とくにリヤからの駆動力による安定した押し出し効果がいい。

ウエットにも関わらずタイヤからはスキール音が発生してグリップ限界の高さを知らせてくる。タイヤが横方向に撓む感触はオールシーズンゆえ。音の発生は舵角を与えたフロントからで、限界付近では弱アンダーステア方向に逃げる。そこでアクセルを急に戻しても挙動変化はない。その変化の少なさがスバルの持ち味で、一定して変わらない操縦特性が嬉しい。
FFモデルの完成度が想像以上に高かった!
今日は長い下り坂で速度が乗り過ぎることを抑える意味か、ストレートが短いショートカットを使用。そこから本コースに合流する部分がじつは大きな山なりで、言えば速度が高いとジャンピングスポットになる。もちろんそういう場は挙動含めてクルマの特性を探る材料になるので、手前から猛ダッシュする性格。で、次に乗るFWDは飛んだ際にフロントが、ダンッとサスが伸び切りリバンウドストッパーに当たる、その音が機械機械し過ぎ。そこは長いサスストロークを持ちながら残念に思う部分。

FWD版もこのウエットで無理難題を突き付けても、何の挙動変化も起こさない。もちろん旋回中のアクセル急激OFFでもタックインの兆候すら示さない点は驚き。ならばこれでいいではないか!
エンジンとトランスミッション(CVT)との相性は、フル加速時に空転感は多少あるAWDと、比較的ダイレクトと言えるFWD。いいのはパドルによる減速操作をした際に、FWDが各車輪速の情報が2輪分で済むため、4輪の状況を確認しつつダウンシフト制御に入るAWDよりもレスポンスに優れている。なので、パドル操作で小気味良く加減速が効くFWDが、じつはドライバビリティに優れている。

全天候型をウリにする、あるいはユーザーもそここそスバルだと考えると少し違うが、FWDのクルマとしてのデキはじつにいい。通常走行では何の不都合もない。言えば、新雪が深い状況でスタックした場合はAWDには敵わないが、思わぬ伏兵!? の誕生にクロストレックは新たなスバルユーザーを得るための1台になる、と思った。

