この記事をまとめると
■ミズノがドライビングシューズをリリース■昨年マツダとコラボしたドライビングシューズの技術を流用している
■普段履きもできるほど歩き心地にこだわった仕立てとなっている
運転が上手くなるドライビングシューズ第2弾が登場!
世界的に著名なスポーツ選手を多く輩出する日本。野球のメジャーリーグでは「オオタニサン」でお馴染みの大谷翔平選手を始め、スキージャンプでは高梨沙羅選手、クルマならF1ドライバーの角田裕毅選手と言ったように、挙げたらキリがないほどのスポーツ選手を有する日本はまさにスーパーマン大国なのだ。
そんなスポーツ選手たちをサポートするのがスポーツ用品メーカーの道具。
そして今回、世界のスポーツ市場で活躍する日本を代表するスポーツブランド「ミズノ」が、我々クルマ好きにぴったりのアイテムを”再び”市場に投入してきた。あえて”再び”と言ったのには理由がある。1年ほど記憶を巻き戻せば、勘のいい人であればあるアイテムの存在を思い出すはずだ。
そう。昨年ミズノは、マツダとのコラボアイテムとして突如として発表した「ドライビングシューズ」を世に放っているのだ(詳細はこちらのリポート記事よりご確認頂きたい)。
このシューズは当時、クラウドファンディングを通して約4万円ほど支払った支援者のみに販売するという限定アイテムであった。なかなかに高価だったのにも関わらず、なんと2日ほどで用意した1000足を完売したほどの大盛況だったのだ。

当時のインタビューで筆者は、「今後の展開は?」と開発者に聞いたことがある。その際の返答は「考えてないわけではないですが、時期、商品内容ともに未定です」とのことだった。なんとなく「ドライビンググローブだったり?」なんて勝手に予想した記憶がある。
そんなミズノより、1年以上経った今年の夏に1本の電話がきた。それが「新商品を発表するので試着に来てください」との内容。「ついに何かやったのか!」と、期待を込めて、指定された日時に、業界ではすっかりお馴染みの神奈川県にある「マツダR&Dセンター」へと向かった。
ここで関係者にひと足早くお披露目されたのが、まったく新しい新製品であるミズノ製ドライビングシューズ、その名も「ベアクラッチ」だ。

「素足感覚」でペダルを操れるうえに歩き心地も上質
今回発表された「ベアクラッチ」を早速見てみると、昨年マツダとコラボしたシューズとは形が大きく異なっており、俗に言うスニーカースタイルとなっている。開発者たちに話を伺ったところ、「生活に馴染むスタイルを目指した」という。日常生活はもちろん、ビジネスユースでも違和感なく履けるよう、どこにでもあるようなスタイルを目指したとのこと。

実際、当日の試乗会のスタッフは全員履いていたが、まったく違和感なく履きこなしていた。スーツでもオフィスカジュアルのような格好でもまったく問題ない。

次に開発した経緯を聞いたところ、「せっかくマツダさんと一緒に突き詰めた技術なので、あれで終わりではなく一般ユーザーが使える価格帯でもっと普及させたい」という想いがあったとのこと。たしかに、昨年マツダとコラボしたシューズは、さまざまな要素を考えれば決して高い価格ではなかったが、4万円近いともなればおいそれと手が出せないのもわかる。かくいう私もそのひとりだからだ。なので、今回のこの「ベアクラッチ」は、なんと実売価格で1万2100円(公式通販価格)! なんと普通の靴と同じような価格でリリースしている。ドライビングシューズを名乗る大手メーカーの製品としては破格だ。

以上のような前情報をもとに、早速試着させて頂いた。今回履いたのは筆者の普段履く靴と同じ25.5cm、カラーはホワイトだ。よくメーカーによって靴のサイズが「小さめ」「大きめ」とあるが、この靴は日本人の足を徹底して研究しているので表記通りのサイズでほぼ問題ないとのこと。試乗車はお馴染みのマツダ・ロードスター。ミッションは6速MTとなる。
先ず、社屋で履いてクルマに向かうまでの間でその「軽快さ」に驚かされた。

クルマに乗り込み、クラッチを繋いで発進する際も、この柔らかさと適度な剛性感は足の動きにベストマッチ。足首のサポートこそないが、昨年試着したマツダのドライビングシューズをもう1度履いたかのように錯覚した。また、踵の剛性とラバー(ラウンドソール)が上の方まで伸びている(ここ重要)ので、ペダルを踏み込む際の動きが極めて安定している。この踵のラバーは、ドライビングシューズを名乗る靴では必須の構造なのだ。このシューズも類に漏れず同じような作りとなっている。

クルマを進め、首都高速に入る。ここでは加速減速と同時にヒール&トゥを試すなど、細かいペダルワークをテストできるので、ドライビングシューズのテストには最適な場所。

「何を大袈裟な。ただ踏むだけでしょ?」と思うかもしれないが、ペダルはクルマを操作するうえで欠かせない部分で、ハンドルを握っている手に次いで、第2の手と言っても過言ではないほどその操作は重要だ。性質は違うが、踏み間違い事故だって、ペダルに起因するものだし、クルマの加減速もペダルを介して行われる。それに、デートの際に女の子を乗せているときにペダル操作が安定しなければ、首はガックンガックン振られるし、クルマ酔いだって起きかねない。

そのように、極めて重要なペダル操作をサポートしてくれるこの「ベアクラッチ」は、昨年のマツダとのコラボシューズに次ぐ「モテるシューズ第2弾」と言っても過言ではないだろう。それほどまでに、このシューズはスムーズな運転を実現してくれる。あまり運転が得意ではない人にはお助けアイテムに、運転が得意な人にはさらにもう1ランクスキルを上げる武器になるはず。是非、世の中のクルマ好き男子諸君には、履き物にも気を配って頂きたい。
1時間ほどの試着で、このシューズをたった1年ほどで仕上げてきたミズノはさすがスポーツ用品メーカーの老舗だと、身をもって実感した。
では、このデメリットが見つからないお手軽ドライビングシューズ「ベアクラッチ」。どこがそんなに他のドライビングシューズと違うのか、比較してみたい。
ドライビングシューズ同士で徹底比較してみた
さて、今回紹介している「ベアクラッチ」は真ん中の白いシューズ。今回の主役だ。紺色のシューズは大手スポーツメーカーが展開するドライビングシューズ。

先ず形状だが、これはレーシングシューズを除いて大きく変わらない。レーシングシューズがハイカットなのは、機能面ももちろんだが、耐火性などを重視しているので、FIAのレギュレーションに従うとこのような形になるのが一般的。あとのふたつは一般的なスニーカーとほとんど変わらない。

つま先のデザインも大きく変わらない。メーカーによって幅が違ったり素材が違ったりするが、これは価格や用途によるので今回はあまり関係ない。ただ、ミズノの「ベアクラッチ」に関しては日本人の足を徹底研究しているほか、一般人からスポーツ選手までの膨大な足に関するデータがあるので、日本人に多く見られる幅の広い足に最適化された靴の幅になっているのが大きな特徴だ。紺色のシューズは大手海外メーカーの物だが、確かにかなりタイトな印象がある。もちろん履けるし、足も痛くならないのだが、窮屈なことに変わりない。レーシングシューズはタイトである方がいいのでこれはこういった物として扱う。

踵はどのシューズも踵全体をサポートする形状となっている。これはドライビングシューズを名乗るシューズ最大の特徴で、フロアに置いた足がしっかり固定され、滑らないようになっている。もちろん踏みつけている側にある部分なので剛性もある。ここは筆者的にはどれもそんなに印象は変わらない。

続いて、歩いたり踏んだりと、各種動作をする上で1番大事なところであるソールまわり。ここがミズノ「ベアクラッチ」最大の武器だ。表は一般的なラバーソールだが、インソールは何度も文中で登場しているマツダとコラボしたドライビングシューズに採用されている「ミズノコブ」と言われる独自開発の専用インソールが採用されており、ここに関しては4万円ほどしたシューズとまったく同じ物が採用されているとのこと。

これにより、極めて良好なペダルフィーリングを実現しつつ、歩く際も最適なクッション製を維持しており、ウォーキングも容易にできるようになっている。なので、普段履きの靴として歩きつつ、ドライビングシューズにもなってしまうというワガママを叶えた仕組みとなっている。ミズノの技術の結晶だ。ちなみに、このシューズを履いて本社がある大阪から新幹線でこちらの会場に来たというスタッフが実際にいたらしいが、履き心地は一般的なスニーカーよりいいくらいだったとか(写真はシューズの内部)。それでいて、中敷は今回「素足感覚」を生かすために設定されていないのもポイント。「ミズノコブ」を装備したインソールに直接生地が貼ってあるだけなのだ。可能な限り足裏からペダルの感覚がわかるよう、薄さにもこだわっている。

では、紺色のドライビングシューズだがこれはたしかに運転する際は非常にフィーリングがいい。実際に長距離ドライブをする際によく利用する。しかし、ドライビングシューズというだけにソールがかなり薄い。もちろん歩けるが、これを履いて街を散策したりするのは結構苦痛なのだ。なので、履き替えすることが多く、結果として面倒になるだけでなく、荷物も増える。なかなか普段履きとして使用するには覚悟がいる。耐久性的な意味も含めてなら尚更だ。
レーシングシューズに関してはペダルのフィーリングが第一なので歩き心地なんていう概念は皆無。1時間から2時間ほど立っているだけで足の裏が痛くなってくるほどなので、これで町中を歩くのなんて論外。歩くことは考えられていないので耐久性も全然ない。レーシングシューズは酷使するとよく足のソールが剥がれてくることからも、その耐久性はおわかりいただけるだろう。実際、レーシングギアを扱う店に行くとピットを歩く用の靴なんてのも売ってるほど。もし、これを普段から履いている方がいたらかなりの猛者。まわりが認めなくても私が認める。

簡単な比較だが、以上のような違いがある。価格は、紺のドライビングシューズがおおよそ1万5000円(定価)ほど、レーシングシューズは安価な物なので2万5000円(定価)ほど。でもって、今回試着した「ベアクラッチ」は先ほど述べたようにおおよそ1万2100円(公式通販価格)だ。
それぞれのシューズに用途があるのはもちろんだが、「普段履きで使えるドライビングシューズが欲しい!」なんていうクルマ好きあるあるの視点からすれば、どれが一番オススメかは火を見るより明らかだろう。今回紹介するこの「ベアクラッチ」はコスパ最強な1足と言っても差し支えない。

一方で、褒めてばかりではリポートではないと思っているので、ダメなところを挙げてみたいと思ったのだが、正直に言うとこれと言って見当たらない完成度。デザインや色に関しては個人の好みなどがあるので触れないが、個人的にはどんな服装でも合うこのくらいのデザインのほうがいいと考える。仮に、側面にデカデカとランバード(ミズノのロゴ)が入っていたらスパイクのようだし、蛍光色を使ったド派手な色ではなかなか普段の服装に合わせづらいだろう。後述するが、強いて言うなれば女性向けにもう少し小さい側のサイズ展開があったほうが良いかなと感じた。と、言うのも女性はサンダルやヒールなどと、運転時のシューズを分ける人が多いので、そういったユーザーにもこの製品を体感してもらえたら、普段のドライブをもっと楽しく感じられるようになるのではないかと思う。

ミズノは最近、製造業や運搬業などなど、スポーツとは関係ない仕事の分野での製品展開、いわゆるワークビジネスに力を入れているというが、そのビジネススタイルの一環として考えるのであれば、今回の「ベアクラッチ」はタクシードライバーやトラックドライバー、バス運転手といった仕事でクルマを運転するユーザーには文句なしでオススメしたいシューズであることのほか、クルマ好きな老若男女にもすすめられる一足に仕上がっていると、今回の試着で実感した。何より、あのミズノが関わっていながらも価格が非常に安い。一般的なドライビングシューズはこのシューズの倍ほどの価格で売っているのもザラだからだ。それでいて、それら製品の歩き心地が良いかといえば難しいところ。
製品の展開だが、「ベアクラッチ」のカラーは「黒」「ネイビー」「ホワイト」となっており、普段の私服でもフォーマルな場でも問題ないカラーとデザインとなっている。サイズは24.5cmから28cmまで、0.5cm刻みで設定されており、販売はすでにスタートしている。1年で6000足ほど売りたいというのがミズノの目標だ。

最後に、ミズノはシューズのほかに「ドライビングソックス」と「ドライビングサポーター」も今回同時にリリースしてる。このベアクラッチと一緒に使うのはもちろん、単体でも足の動きをミズノの技術でサポートしてくれる。また、リーズナブルということもあるのでお試しで使ってみるのもオススメだ。

日本を代表する大手スポーツ用品メーカーであるミズノが、ドライビングシューズというあまりにもニッチな世界に足を踏み入れたことは、クルマ業界に携わる人間として敬意を表したい。靴1足と思うかもしれないが、クルマ好きのみならず、運転に自信がない人も是非このドライビングシューズを、ちょっとした自分への投資として履いてみてはいかがだろうか。きっと普段のドライブがより一層楽しくなるだろう。